「漁港の肉子ちゃん」 原作：西加奈子

「生きてる限り恥はかくんら」
　だから子供は失敗とか気にせず生きろと焼肉屋「うをがし」大将のサッサン。

　小学５年生の喜久子は北陸の小さな港町に係留されているグラスボートで、母親の見須子菊子（みすじきくこ）と暮らしている。
　娘の喜久子はやせっぽちでしっかり者だが、菊子は「肉子ちゃん」と呼ばれるくらい太っていて食いしん坊で脳天気で２人はぜんぜん似ていない。肉子ちゃんは男にだまされフラれるたびに住む場所を転々と変えながらもひたむきに生き抜き、この街にたどり着いたのだ。
　今は焼肉屋で陽気にバイトしている肉子ちゃんだが、クールな喜久子はそんな母親が少し恥ずかしい年頃だった……。

　港町に住む小５女子を主人公に、彼女がヘンな母親や奇妙なクラスメイトに心を悩ませながら自分の立ち位置を見つけていく物語。ヘンな人々を嫌いになれないのは、自分も多少ヘンだからだ。
　西加奈子の話だから文章で読むとすごく生々しくなったりするのだけれど、そこを明るいタッチのアニメーションにすることでソフトランディングしました。それでも小学生男子のバカさと小学生女子のイヤらしさはちゃんと伝わってきました。男子生徒の意味不明なあおりとか女子同士の対立とか、いたたたた……。
　公開直後に「すごくいいぞ！」とＳＮＳに流れてきたとおり映像はすごく綺麗で、それでいながら港町の雑然としてくたびれた様子とか、台所や冷蔵庫の中身のリアルさが伝わってきて、親子関係とか友人関係など人間関係のやりとりも含めて面白い邦画になってました。
　みすじステーキとか、フレンチトーストとか、食事シーンが美味しそうな映画は良い映画なのだ。

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