あすからは6月。紫陽花も色づきはじめました。
先日、アナ雪でも、テルマエでもなく、何の気なしに
「野のなななのか」という大林宣彦監督の映画を観ました。
舞台は北海道の芦別、かつては炭鉱で栄えたところ。
自然が豊かで、野の花が咲き、映像が美しい。
そこで、元医者で今は絵を描いているおじいさんが死ぬ。
そこから七つの七日、つまり四十九日までの、家族や周りの
人たちのそれぞれの思いや、人生や、過去や、繋がりや、
断絶や、生まれ変わりや、戦争も、東日本大震災も、原発も、
いろんなものが描かれていた。それらが、中原中也の詩や、
その他の文学と共に語られていく。どう受け取っていいのか、
戸惑いつつ、嫌いじゃないぞこんな映画も、と思った。
登場人物の一人、おじいちゃんの孫娘は北大生で名は「かさね」。
私はすぐにピンときた。芭蕉の「奥の細道」だ。那須野のくだりに
「かさね」という女の子が出てくるのです。「かさねとは八重撫子の
名なるべし」と同行二人で芭蕉と一緒に旅した曾良の句がありま
す。なでしこと言えば美しい日本女性、かさねは更に更に美しい
日本女性という意味になると思う。
いい名前だな、我が子はもう無理だけど、誰かに女の子が生まれ
たらお勧めしたい名だとずっと温めていたのです。
大林監督に先を越されてしまった。なんてね。この映画見て、私と
同じこと思う人、他にもいるだろうな。
それにしても約3時間の大作。私の勝手な推測では、撮っている
間に監督の頭の中で、何かがドンドン増殖していったのでは。
そして編集して編集して、研ぎ出されたように現れたのが、この
171分なのだろう。
大林ファンはもちろん、見てわかりやすい映画だけが映画ではな
い、と思っている人にはお勧めです。