一体、1日のうちにどれほどの時間、スマートフォンを操作しているのか?
以前から話題に上ることが多いテーマの一つです。昼夜問わずスマートフォンを使い続けた結果、本来優先しなければならないことが後回しになってしまったり、睡眠不足になったりと、スマートフォン依存症と表される様々な弊害が顕在化してきているようです。
さて、新年度が始まり、弊社でも先週から様々な企業に新入社員研修でお邪魔しています。
最近の傾向と同様に、今年の新入社員も少々大人しい人が多いように思いますが、同時に非常に真面目だとも感じています。
研修中はこちらが話す内容を一生懸命にメモしますし、グループ内で行う演習やディスカッションの時も、とても前向きな姿勢で取り組んでいます。さらに、自己紹介や全員の前で発表するなどのプレゼンテーションもとても上手ですから、非常に頼もしく感じます。
その一方で、とても気になることがあります。それは「休憩時間の過ごし方」です。
「これから10分間休憩です」とアナウンスをした瞬間に、ほとんどの受講者が鞄の中からそそくさとスマートフォンを取り出し、黙々と画面を動かし始めるのです。
他のメンバーと話すなどのコミュニケーションをとる人もいないわけではありませが、少数だと感じます。
スマートフォンが普及する前は、休憩時間になると受講者同士が大声で笑い合うなどとても賑やかになったり、煙草を吸いに行って戻ってくるのが遅れてしまったりする人もいました。戻りの時間に遅れてしまうのは論外ですが、最近はスマートフォンを使うためなのか、休憩時間にコミュニケーションをとる人が圧倒的に減っています。
しかし、本来休憩時間は他の人たちと自由なコミュニケーションをとれる絶好の機会なのです。公開型の研修であれば、受講者は様々な企業から派遣されてきていますから、初対面の人と話をする難しさはあるにしても、普段なかなか接点を持つことが難しい他社の人たちの話を聞くことができます。
また、自社内で行われる新入社員研修であれば、文系・理系の違いなどで配属後には一緒に仕事をする機会がほとんどない人もいますし、また遠隔地に配属されれば、簡単には会えない人もいるわけです。
そう考えると、研修の休憩時間は今ならではの貴重なコミュニケーションの機会なのにと思いますが、実態はそうではないようです。
休憩時間にスマートフォンに興じる傾向は、他の階層でも同様の傾向ですから、新入社員に限ったことではないのも事実です。電車の中の光景を見ればわかるように、老若男女画面を黙々と見ています。
しかし、それらを考慮しても、最近の研修中の休憩時間の過ごし方は、せっかくのコミュニケーションをとる絶好の機会なのに、何とももったいないような気がします。
少し前の話の話になりますが、岐阜県にある機械部品メーカー 岩田製作所の「脱スマホ手当」(正式名称はデジタルフリー奨励金)が話題になったことがありました。
スマートフォンから従来型の携帯電話に変更した社員に月5000円を支給するという制度です。同社の岩田社長が休憩時間や食堂で並んで座っている社員同士が会話もせずに、ずっとスマートフォンをいじっている光景を異常だと感じ、社員同士のコミュニケーションが無くなることに強い危機感を覚えたことがきっかけで、制度導入に至ったということです。
最近の状況は報道されていないので、結局のところ何人の社員がスマートフォンから従来型の携帯に変更したのかはわかりませんが、2年前の時点では社員の約半分がスマートフォンをやめ、その結果、明らかに社員同士のコミュニケーションが活発になり、さらには増収増益になったとの記録が残っています。
このように、コミュニケーションの大切さとその効果も示されているわけですが、磐田製作所のように行うことは簡単にはできないかもしれません。
簡単なところで、まず、研修中というせっかくの機会を生かし、休憩時間にはスマートフォンは使用しないというルールを導入してみたらどうかと思うのです。
弊社では明日以降もしばらくの間、新入社員研修で様々な企業にお邪魔することが続きます。
せっかくの機会ですので、コミュニケーションの大切さをお伝えするとともに、ためしに休憩時間にスマートフォンの使用はやめて、隣の人と話をしてみてはいかがでしょうかと提案をしてみようと考えています。