はじめに、ビジネスコーチングを生業としている方々に申し上げておきたいと思います。
「誤解しないで下さい」とか「極端なものの言い方です」といった弁解じみたことではなく、私(平野)は本当に「(ビジネス)コーチングって、多くの場合役に立たない」と思っています。
その理由を簡単に言うならば以下の2点に疑問を持っているからです。
(1)「過去と他人は変えられない、変えられるのは自分の未来だけ」とか言ってた人がある日コーチングを始めて他人を変えようとしているのを目撃した。
(2)「答えは相手(クライアント)の中にある」という無責任さ。
(1)については「コーチングではすでに起きた過去よりも、これから起こる未来 のことに焦点を当てるのです」と言う人もいますが、それは間接的にしろ他人の未来は自分が変えてあげますよと暗に言っているに過ぎません。もしも間接的にしろ「変えらない」ならば、コーチング料金を払う価値はありません。払っても払わなくても変わらないのですから。
(2)はクライアントの中にある「答えを引き出す」とか「気づき」を与えるという表現をします。私は特に「気づき」というものにいかがわしさを感じます。気づきとは、クライアントの「思い込み」や「先入観」を質問によって正すことで得られるそうです。私は「思い込み」や「先入観」は大切な個人の財産だと思います。正した方が良い場合とそうでない場合の比率はせいぜい半々でしょう。従ってコーチング料金は丁半バクチの掛け金と同じようなものです。
以上、批判的なことを書いてきましたが、コーチングがこれだけ普及したことについてはそれなりの理由があることも承知しています。端的に言えば「効果があったから」です。
効果があったのは職業的なアスリートやエグゼクティブがクライアントだった場合です。もともとそうした人たちは本当に「自分の中に答えを持っていた」からです。
普通の人々は空っぽとはいいませんが、「自分の中に持っているもの」はそう多くはありません。
まず自分の中味を詰め込むことが先決です。そのためには情報を収集する、本を読む、考えることと併せて、他者から教えてもらうこと、つまりティーチングを受けることです。
中味がある程度詰まればコーチングは有効に働きます。
そして、ティーチングを受けることの大きな効用のひとつは、「手法だけを身につけた空っぽコーチ」を見抜く力が身につくことです。
コーチング料金を無駄にしないために、まずティーチングを活用しましょう!
(人材育成社)