「世の中には3つの嘘がある。嘘、大嘘、そして統計である」。
これは「トム・ソーヤーの冒険」で知られるアメリカの文学者マーク・トウェインが、19世紀のイギリスの首相・ディズレーリの言葉(Lies, damned lies, and statistics)として紹介したものです。
「正しさを装っている」ことが、ディズレーリの統計に対する嫌悪感の根っこにあるのだと思います。しかも、数字を使っていかにも客観的であるかのように見せている点が許せないのでしょう。
特定の意見や考え方を「正しい」と思わせるためにしばしば統計が使われることを皮肉った言葉ですが、それにしても「大嘘」の次に位置しているとは、統計とはなんとひどい奴なのでしょう。
私も学生時代に「統計でウソをつく法」(ダレル・ハフ 著、講談社ブルーバックス)の中にあった次の話を読んだとき「統計には気をつけよう」としみじみ思ったものです。
「米西戦争の間、海軍の死亡率は千人につき9人だった。一方、同期間のニューヨーク市の死亡率は千人につき16人だった。海軍はこの数字を使って海軍に入ったほうが安全だと宣伝した。」・・・確かに死亡率は海軍の方が低いようです。しかし、海軍は壮健な若者だけで構成されていますが、ニューヨーク市民には老人や乳幼児も多数含まれています。
他にも「統計数字を疑う」(門倉貴史 著、光文社新書)、「ウソを見破る統計学」(神永正博 著、講談社ブルーバックス)など多くの本があります。
こうした「悪名」の数々を聞くにつけ、新聞やテレビのニュースなどで示される統計数値を疑うようになってしまいそうです。しかし、それは危険なことです。
たとえば料理に使う包丁も、それを使って人を脅したり傷つけたりすれば凶器になります。統計手法そのものは、数学的な考え方に裏打ちされた単なる手順にすぎません。使う側の意図が正しくなければ「嘘」になりうるというだけの話です。
ですから、統計そのものよりも、それを使っている人や組織の考え方、立場、行動に注意を払わなければなりません。
同時に、データそのものを提供している側の人たちの属性についてもよく見ておく必要があります。最近、インターネットでYahoo!の意識調査(アンケート)をよく見るのですが、1万人以上の人が回答している調査も多く、世の中全体の風潮をなんとなく表しているようにも見えます。
しかし、その回答者の性別はいずれも男性が8割、女性が2割程度になっています。国民の半数は女性ですから、この調査の結果はほぼ「男性の意見」ということになります。
ちなみに、女性の回答が37.1%というかなり高い数値を示したYahoo!意識調査は「[16年冬ドラマ]一番満足したのは?」というものでした。また、「サッカー日本代表、シリア戦での戦いぶりは何点?」では女性の回答率は12.6%でした。
ここから「男性と女性とでは好むテレビ番組が異なっている」かどうかは、χ(カイ)2乗検定をしてみないと何とも言えないと思います。
ご興味のある方は調べみてください。
(人材育成社)