「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「あなたがやる気が出るのはどういうときですか?」
これは、階層に関係なく弊社が研修を担当させていただいた際に、演習の中で受講者に確認していただくことがある設問です。皆さんはこのように質問されたら、何と答えますか?
実際にこの演習に取り組んでいただくと、実に様々な答えが返ってきます。管理職であれば一般職から管理職に昇格したとき、また結婚をしたとき、さらにプロジェクトが上手くいったときなどを挙げる人が多いと感じます。一方、若手社員では周囲の人やお客様からほめられたとき、身に付けることが大変だった技術を習得できたときなどを挙げる人が多いように感じています。いずれも、過去の経験に基づく正直な感想だと思います。
しかし、階層に関係なく多くの人が共通して挙げるものが1つあるのです。それは、「あなたのおかげで上手くいった」、「あなたがいてくれたから助かった」という言葉です。確かに、私自身過去に何度かこの言葉をかけていただいた際に、何とも言えない面映ゆいような、嬉しいような、高揚した気持ちになった経験があります。と同時に、その言葉を発してくれた人に対して好感を持つきっかけにもなるようにも感じます。
しかし、最近は多くの人からこの言葉によってやる気につながった、嬉しかったという話を聴くたびに、実はこの言葉には少なからずリスクもあるのではないかと感じるようになりました。それはなぜなのか。
まず1点目は、自身の行為を他者評価に委ねてしまうという点です。自分がどのように考えるのか、どう判断するのかという自分の考えよりも、他者からの評価を優先させてしまうことです。もちろん、他者からの評価の結果で仕事が成立することも多々ありますから、他者から良い評価をもらうことは大切なことです。しかし、評価はあくまで結果であり、評価してもらうことが目的になってしまうことは本末転倒と言わざるを得ません。自分の行動の主体は自分自身であり、その結果をすべて引き受けるのも、あくまで自分自身であることを肝に銘じておく必要があると思うのです。
2点目は「あなたの役に立ちたい」と考えることは、利他の精神にもつながるものかもしれませんが、それは本当にあなたのためだけを思って行った行為なのでしょうか?たとえば、住宅会社のセールスパーソンがお客様から「あなたのおかげで良い家が建った」と言われた場合でも、セールスパーソンはお客のためだけでなく、同時に自分自身の営業成績のために販売した、つまりは他者のためと言いつつ、実は自分自身のためということもあるわけです。
そのように考えると、「あなたのおかげで上手くいった」という言葉は、多くの人を気持ちよくさせる魔法の言葉かもしれませんが、このフレーズを言われた際には、その言葉に酔っていないか、自分を冷静に見ることも同時に忘れてはいけないのではないかと思うのです。