WHOテドロス氏VS台湾 「差別」めぐり場外戦 中国が“かく乱”
2020.4.14 産経新聞
https://special.sankei.com/a/international/article/20200414/0002.html
【台北=矢板明夫】世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスとの戦いで、陣頭指揮を
執っているはずの世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が突然、
「人種差別的な攻撃を受けた」と台湾を批判しはじめた。
これを受けて台湾の蔡英文総統は「私たちこそ差別されている」と反論し、
「差別問題」をめぐる場外戦に発展した。背景には、5月にも開かれるWHO総会の
台湾の参加資格をめぐる中国と台湾の激しい駆け引きがある。
テドロス氏は8日の記者会見で「3カ月前からインターネット上で、私は人種差別的な
中傷を受けている」と主張。「攻撃は台湾から来た。台湾当局は把握しているのに
何もしていない。むしろ一緒になって私を批判している」と付け加えた。
最近、テドロス氏をはじめWHOの関係者はさまざまな場面で記者に
「台湾の加盟問題」を聞かれるが、そのたびにかわしてきた。親中的なテドロス氏は
台湾の加盟に消極的とみられ、国際社会で台湾を支持する輪が広がっていることに
大きな圧力を感じていたようだ。
一方、テドロス氏の批判を受けた台湾のネットユーザーは「3カ月前は台湾の総統選挙
の真最中だ。われわれはあなたを差別するひまはなかった」などと反論した。
蔡氏は9日、自身のフェイスブックに「台湾は長年国際組織から排除され、誰よりも
差別と孤立の味を分かっている」とした上で「事務局長にはぜひ台湾に来てもらい、
差別を受けながらも国際社会に貢献しようと取り組んでいる姿を見てほしい」と
書き込んだ。
台湾の法務部(法務省)傘下の調査局は10日に記者会見を開き、「テドロス氏に
対する人種差別的な台湾発の書き込みを確認できなかった」との調査結果を発表した。
その上で、テドロス氏による台湾批判の後、ツイッターに「台湾人を代表して謝罪する」
などとする書き込みが100件以上投稿され、アカウントを分析した結果、中国からの
ユーザーによる書き込みであることが確認されたという。
台湾の捜査当局は、テドロス氏をめぐる一連の書き込みは中国が台湾の国際的な評判を
おとしめるため、意図的行為だと判断した。
WHOの総会は毎年5月、スイスのジュネーブで開催される。中国の圧力で台湾は
排除され、会議に参加できない。新型コロナが蔓延(まんえん)するなか、台湾の
蔡政権は「今年こそ参加したい」と国際社会に訴えており、日本、カナダ、米国などが
支持を表明した。