インド、343世帯入居の高級高層マンション爆破、環境規制違反で。
【1月16日 AFP】インド南部の港湾都市コチ(Kochi)で先週末、水辺に建設された高級高層
マンション4棟が環境規制に違反しているとして、住民らの見守る中で爆破解体された。
地元ケララ(Kerala)州当局は違法建築の取り締まりに力を入れており、異例の厳格な措置が取られた。
爆破解体されたのは、いずれも富裕層が住む市内マナドゥ(Maradu)地区に建てられた豪華な
高層マンションで、計343世帯が入居していた。
まず、地元名所の水郷地帯が見渡せる19階建ての複合ビルが11日に爆破され、計90戸がものの
数秒でがれきと化した。数分後、耳をつんざくごう音とともに、ツインタワーを擁する高層マンションも
崩れ落ちた。翌12日にはさらに2棟が爆破された。
インドは近年建設ブームに沸いているが、安全性をはじめとする各種規制を開発業者が無視する
ことが多く、地元当局も黙認しがちだ。民間建設業者によるマナドゥ地区への高層マンション建設は、
地元自治体が2006年に許可した。だが昨年、インド最高裁は、業者が環境的に影響を受けやすい
沿岸地域での建築規制に違反したと認定し、環境の「巨大な損失」だと非難した。
業者を信用して富裕層向け高層マンションを購入した住民らは、損害を取り戻すべく、これから
長期にわたる賠償請求裁判と向き合うこととなる。中には、老後の蓄えをつぎ込んでしまった住民もいる。
爆破解体されたマンションの一室を14万5000ドル(約1600万円)で購入した男性は、
「自分たちの夢が目の前で粉々になるのがあまりに辛くて」妻と子どもたちは解体の様子を見に
来なかったとAFPに語った。
ケララ州は、アラビア海(Arabian Sea)と並行して潟湖(ラグーン)や湖が広がる景観で有名だが、
環境破壊に弱い地域でもある。2018年には過去およそ100年間で最悪といわれる洪水で400人以上が
死亡した。この惨事について専門家は、沿岸部の建設計画に対する規制を軽視して住宅やホテル、
リゾート地開発に熱中した地元自治体の責任を指摘している。
インド南部ケララ州コチで、建築規制違反だとして爆破解体される高級高層マンション(2020年1月11日撮影)