房総半島沖にレアメタル含む岩石 東京23区の1.5倍の規模
6月5日 17時44分 NHKニュース
千葉県の房総半島からおよそ350キロの海底に、コバルトなどの希少な金属「レアメタル」を多く含んだ岩石の集まり
が、東京23区の面積のおよそ1.5倍の規模で広がっていることが、海洋研究開発機構などの調査でわかりました。機
構では、日本近海での海底資源開発の可能性について、引き続き調査を進めたいとしています。
海洋研究開発機構などの研究グループは、ことし4月23日から先月1日にかけて、千葉県の房総半島から東南東にお
よそ350キロの海底で、30年近く前に発見された「コバルトリッチクラスト」と呼ばれるコバルトなどの希少な金属、「レア
メタル」を多く含んだ岩石の集まりがどのくらいの範囲に広がっているのか、無人の深海探査機を使って詳しい調査を行
いました。
その結果、古い海底火山の水深1500メートル付近から5500メートル付近にかけて斜面全体が「コバルトリッチクラス
ト」で覆われ、その面積はおよそ950平方キロメートルと、東京23区の面積のおよそ1.5倍に匹敵する規模で広がって
いることがわかりました。
また、「コバルトリッチクラスト」の層の厚みは10センチ余りあり、世界のほかの海域で見つかっているものよりも2倍前
後、厚みがあることもわかったということです。
調査を行った海洋研究開発機構の鈴木勝彦ユニットリーダーは「本州から近い海域にこれほど大量に資源が存在して
いることがわかり、驚いている。ほかにも存在している可能性があり、日本近海での海底資源開発の可能性について技
術的に可能かどうかも含めて引き続き調査を進めたい」と話しています。
日本近海の現状は
「レアメタル」と呼ばれる希少な金属のコバルトやニッケルは、ハイブリッド車やスマートフォンのバッテリーに使われるな
ど最先端の工業製品に欠かせないものとなっていますが、日本はすべてを輸入に頼っています。
ただ、コバルトの世界1位の輸出国であるアフリカのコンゴ民主共和国は現地の政情が安定せず、取り引きが滞ること
があるほか、ニッケルを輸出しているインドネシアやフィリピンも輸出を禁止する措置を取ることがあり、原料の供給が安
定しないことが課題になっています。
こうした中、日本は2001年から小笠原の南鳥島周辺の太平洋で海底資源の調査を進め、2009年以降コバルトなど
のレアメタルを多く含んだ岩石の集まり「コバルトリッチクラスト」を相次いで発見しています。
また、「コバルトリッチクラスト」は南鳥島よりさらに南の公海にも存在していると見られることから、日本は3年前、南鳥島
近くの公海で独占的に探査する契約を国際機関と結び、こうした海域での海底資源開発の可能性について、技術面とコ
スト面の両面から調査を進めています。
今回、房総半島からおよそ350キロという本州の近海で「コバルトリッチクラスト」の大規模な広がりが確認されたこと
で、これまで調査を進めていた南鳥島の周辺の海域やそれより南の公海だけでなく、本州のすぐ近くの海域でも海底資
源を商業利用できる可能性があるのか、調査が進められることになります。
レアメタルの含有量は
「コバルトリッチクラスト」にはどのくらいのレアメタルが含まれているのか。海洋研究開発機構によりますと、コバルトと
ニッケルは、それぞれ0.1%から1%ほど含まれているということです。つまり、「コバルトリッチクラスト」1キログラム当
たり、コバルトとニッケルは、それぞれ1グラムから10グラムほど含まれているということです。
経済産業省によりますと一般的なスマートフォンには、1台当たりおよそ12グラムのコバルトがバッテリーの材料として
使用されています。
海洋研究開発機構によりますと、コバルトなどのレアメタルは、陸上ではあと20年ほどで枯渇するのではないかとも言
われているということで、今後、海底のレアメタルの活用に目が向けられる可能性があるということです。
「陸地に近い場所で大規模に存在 驚いている」
海洋研究開発機構によりますと、これまでレアメタルを含んだ「コバルトリッチクラスト」は、小笠原の南鳥島の周辺やそ
れより南の公海で大規模に広がっていることが確認されています。
一方、本州の近海では、房総半島沖から小笠原諸島にかけてのところどころで「コバルトリッチクラスト」の存在が確認さ
れていましたが、その規模はわかっていませんでした。また、本州の近海では陸地から流れ込む土砂の影響を受けて、
資源となる鉱物が海底に蓄積しづらいのではないかと考えられていたということです。
今回、本州の近海で「コバルトリッチクラスト」の大規模な広がりが確認されたことについて、海洋研究開発機構は「これ
まで大規模には存在していないと考えられてきた陸地に近い場所で大規模に存在していることがわかり、非常に驚いて
いる」としています。
そのうえで「これまで日本の海底資源をめぐる調査は、南鳥島周辺を中心に行ってきたが、今後は、現場に向かうのが
比較的容易な本州の近海を拠点に、調査を進めることができる可能性がある」としています。
「コバルトリッチクラスト」をめぐっては、商業掘削を行うための技術が世界でもまだ実用化していません。海洋研究開発
機構は「『コバルトリッチクラスト』を商業利用できるかどうかは、採算がとれる掘削技術を開発できるかどうかにかかって
おり、今後、本州の近海を拠点にそうした技術の研究開発にも、これまで以上に取り組める可能性がある」としていま
す。