ロシアによるウクライナへの新たな侵略
2018年12月19日 WEDGEInfinity 岡崎研究所
11月25日、ロシアはクリミア半島近くのケルチ海峡を通過していたウクライナの艦船3隻を攻撃、
1隻に体当たりし、他の船を砲撃した。ウクライナの船は23人の乗組員と共に拿捕された。
この事件に対し、当然、ロシアに対する国際的な批判は高まっている。G7外相は11月30日、
以下の声明を発出した。
我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国のG7外務大臣及びEU上級代表は、
緊張を重大に高めた、ケルチ海峡及びその周辺海域におけるロシアのウクライナに対する行動に関して、
最大限の懸念を表明する。ウクライナの船舶及び海軍要員に対するロシアの軍事力の使用は正当化し得ない。
我々は、自制し、国際法を十分に尊重し,そして更なる緊張の高まりを防ぐことを求める。
我々は、ロシアが拘留された乗員及び艦船を解放し、ケルチ海峡での合法的な航行への阻害を差し控える
ことを要請する。
我々、G7は、ロシアによるクリミア半島の違法な併合を認めておらず、今後も認めないことを再び強調し、
ウクライナの主権及び領土保全に対する確固たる支持を再確認する。
出典:外務省ホームページ「ケルチ海峡周辺における最近の事案に関するG7外相声明」
ウクライナの民主主義、旧ソ連諸国の内政に与える影響
今回のケルチ海峡でのロシアによるウクライナ船舶攻撃は、国際法違反の戦争行為というべき行為である。
攻撃のあと、23名の乗組員と船舶を抑留するとともに、ケルチ海峡にタンカーを持ってきて、ウクライナの
民間船舶のケルチ海峡通過を阻止している。これがいつまで続けられるのかは不明であるが、乗組員の
抑留は長期化の様相を見せている。
アゾフ海はクリミア半島の東にあり、クリミア半島とウクライナ領土とロシア領土に囲まれた大きな
海域であるが、黒海からアゾフ海に入る海峡はケルチ海峡しかない。
ウクライナとロシアが2003年に結んだ協定では、両国の船舶はケルチ海峡の自由航行を保証されている。
今回のロシアの行為は、ロシアが支援するウクライナから分離した地方に近いウクライナ南東部の都市を
封鎖する効果を持つ。このような侵略行為を許しておいていいはずがない。そんなことをしていると、
ますます世界は弱肉強食の無法なジャングルになってしまう。
米欧日は、こういうロシアの行為に対してはそれなりの反応をしていかなければならないだろう。
上記G7外相声明は、その一例である。G20の会場におけるプーチンとの会談をトランプがキャンセル
したのも当然の対応である。実質的な内容のある、もっと強い対応がこれらに続くこと望まれるが、
例えば、EUは対ロ制裁継続の動きを強めている。米国、とりわけ米議会の対ロ強硬姿勢も一層強まると
思われる。
ロシアによるウクライナに対するエスカレーションに対し、ポロシェンコ大統領は戒厳令の発布に
同意するように議会に求めた。11月26日、ウクライナ議会は大統領が要求した60日ではなく30日に
期間を短縮して戒厳令発布に同意した。ウクライナでは大統領選挙キャンペーンが行われているが、
これも一時停止されることになった。ウクライナのジャーナリストMaxim Eristaviは、
‘Martial law in Ukraine could be a death sentence for its democracy’(ウクライナでの戒厳令は
その民主主義にとり死刑宣告になりうる)と題する論説を寄せ、今度の事件がウクライナの民主主義、
さらに旧ソ連諸国の内政に与える影響を心配している。
国際法秩序を侵害し、世界を無法化する上において、プーチンほどならず者のようなことをしている
政治家はいないと言ってよい。
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