『マンガみたいにすらすら読める哲学入門』蔭山 克秀
高校時代の倫理の教科書は、眠たいだけのものだったが、塾講師をしてから、塾講師の書く参考書を何冊も読んだ。その中に倫理社会の参考書もあって、さすがに面白く紹介しているのに驚いた。そこで、中学生や高校生の親御さんが喜ぶような部分を抜粋して紹介したりしていた。朝から勉強して夜まで勉強する中学生には、楽しくなくては勉強は続かない。塾講師は、楽しくて、ためになる(学力アップする)授業に力をいれる。同じように、「哲学」というなんとも硬そうな学問を面白く紹介するのは、やはり「塾講師」だからこそ可能なのだろう。
この本では、基本的に大学入試での倫理受験を含むため、高校生向きマンガ本の登場人物やストーリーがたくさんでてくる。若者には、大いに受けるだろうと想像する。各哲学(者)の紹介には、時代背景と時代が要請した哲学の出自がたいへんわかりやすく解説してある。たいへんためになる部分である。特に面白いのは、キルケゴール。脱線気味に著者自身の話とシンクロする部分が、私自身の大学卒業後のあり方とよく似ているのでちょっと感動、あるいは、苦笑いであった。「サラリーマンなんかなってやるか」と粋がってもサラリーマンになる実力もない自分。そしていろいろあって同じく塾講師の道へ。
【僕(著者)やキルケゴールは「現実的に稼がなきゃ」の意識が甘いため、「みんなもなるからいいか」なんかイヤだと駄々をこねる。つまり、ちゃんと稼ぐ気概もない半人前のくせに、平均化された人生を送ることには覚悟が決まっておらず、そこに恐怖すら覚えるのだ。甘えてんね〜。結果、キルケゴールはダメニートに、僕は留年アルバイター雀士になってしまった。】
笑えない。
そして、私は、世界の放浪者となり、他の日本人の放浪者のつまらなさにげんなりし、仕事を見つけ、仕事にのめり込み、自分の居場所を見つけた。キルケゴールと著者、そして自分.......。
とても面白く最後まで飽きさせない「哲学入門」である。少し残念なのは、最後が「精神分析」のフロイトとユングで終わっている点だろうか。せめて、マルクスを登場させてほしかった。できれば、ヴィトゲンシュタインやフッサール、レビィストロースなども解説してくれたら嬉しかった。
<主夫の作る夕食>
コストコでみつけた「ハニーグレイスチキン」とワインで夕食。白菜の柚子浅漬け。変な取り合わせになってしまった。でも、美味しかった。
<思い出の一枚>
バリのケチャ