共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はリリ・ウオカラニの誕生日〜誰もが知るハワイアンの名曲誕生

2023年09月02日 15時11分51秒 | 音楽
昨日小学校がスタートした…と思ったら、あっという間に週末を迎えてしまいました。何となく予想はしていましたが、やはり何人か個別に夏休みを延長して登校してこなかった子たちもいたので、実質学校が始まるのは週明けからと思っていた方がよさそうです。

ところで、今日9月2日はリリ・ウオカラニの誕生日です。



リリ・ウオカラニ女王(1838〜1917)は、ハワイ王国最後の女王です。

リリ・ウオカラニはカラカウア家のカパアケアとケオホカロレの子として1838年にホノルルに生まれました。この時代のハワイ国王家は短命の者が多く、1873年にカメハメハ5世が死去してカメハメハの直系が断絶し、後を継いだルナリロ王も翌年死去すると、血縁者の中からリリ・ウオカラニの兄カラカウアが選ばれて即位し、リリ・ウオカラニは1877年に女性で初の王位継承者となりました。

1887年、リリ・ウオカラニは英国女王ヴィクトリアの在位50周年祝典への招待を受け、ハワイ王妃と共に国王の名代としてヴィクトリア女王に謁見しました。ところが、この機に砂糖きびプランテーションを経営する白人農家を筆頭とした新興勢力の共和制派がクーデターを起こし、ハワイに残っていた兄のカラカウア王は後に『銃剣憲法』とも揶揄される新憲法への署名を余儀なくされてしまいました。

新憲法はハワイ国王の権限を大幅に制限し、その権限を議会へ委譲するというものでした。しかも議会の議員を選挙で選ぼうにも参政権が一部の富裕層にしか与えられていなかったため、事実上ハワイ人やアジア人の参政権排除と受けとめらるものでした。

1891年、兄カラカウアが渡米先のサンフランシスコで客死するとリリ・ウオカラニは女王として即位し、共和制派との対決姿勢を強めていきました。1892年にハワイ人らの新憲法制定の請願を受けて1893年1月14日、国王権限を強化する憲法草案を閣議に提出しましたが、新憲法下の議会によって否決されました。

1月16日、王政派と共和制派が共に大集会を開くなど騒然とする中で危機感を募らせた共和制派は、アメリカのスティーブンス公使の要請によりアメリカ海兵隊が女王の居城であるイオラニ宮殿を包囲しました。翌17日には共和制派が政庁舎を占拠し、王政廃止と臨時政府樹立を宣言する『ハワイ革命』を断行してしまいました(アメリカ政府は最終的に、この『革命』が不法なものであると認め、スティーブンス公使を更迭しています)。

ハワイ人による反対集会が繰り返される中、1894年7月4日、臨時政府はサンフォード・ドールを大統領としてハワイ共和国の独立宣言を行ないました。翌1895年1月6日に王政派が反乱を起こしましたが、数日の銃撃戦の後に新政府軍に鎮圧されました。

1月16日、リリ・ウオカラニ女王の私邸、あるいはイオラニ宮殿の庭から多数の銃器が見つかったとして女王は反乱の首謀者の容疑で逮捕され、イオラニ宮殿に幽閉されることとなってしまいました。そして1月22日、反乱で捕らえられた約200人の捕虜の命と引き換えにリリ・ウオカラニは女王廃位の署名を強制され、ここにハワイ王国は滅亡しました。

昨今、ロシアがウクライナに侵攻して激しい戦闘が続けられていて、それに対してアメリカは批判を強めていますが、自分たちだってハワイやアラスカに対して同じようなことをしていたことを忘れたとは言わせません。しかも、最終的に自分たちに好都合な憲法をでっち上げて押し付け『法の力』でハワイ王国を消滅させるという陰湿なやり方をしたのですから、より始末に終えません。

さて、そんなリリ・ウオカラニ女王の誕生日にご紹介するのは、ハワイアンの名曲《アロハ・オエ》です。



実はこの曲は、リリ・ウオカラニ女王の作詞作曲によるものです(写真は女王による《アロハ・オエ》の自筆譜)。

カラカウアやリリ・ウオカラニの時代、ポルトガル領のマデイラ島から



4弦の楽器ブラギーニャとその奏者たちが揃ってハワイ島に渡ってきました。この楽器を起源として誕生したのが



ウクレレで、やがてウクレレはハワイアンミュージックと切っても切り離せない存在となっていきます。

そしてリリ・ウオカラニ女王は、1878年に名曲《アロハ・オエ》を作詞作曲しました。女王はこの他にも160曲以上を発表しただけでなく、フラダンスなどハワイ独自の文化の発展を支援していき、兄カラカウア王・ミリアム・イケイケ王女・ウィリアム・ピット・レレイオホク二世といった兄弟姉妹たちとともに『Na Lani 'Eha(ハワイ語で「天国の4人」)と呼ばれて、ハワイアンミュージック殿堂のトップに讃えられています。

女王は自身の著書で、

「音楽を作るということは生来備わっている才能のようで、呼吸をするように自然と曲ができ、生みの苦しみに遭うことも無く、その時の感情の表現がそのまま音楽として生まれてくる」

と述べています。兄カラカウア王とリリ・ウオカラニ女王の下で政治的には消滅せざるを得なかったハワイ王国ですが、それと引き換えに音楽と詩とダンスの王国である今日のハワイを誕生させることとなったのかも知れません。

そんなわけで、今日はリリ・ウオカラニ女王の作詞作曲によるハワイアンの名曲《アロハ・オエ》をお聴きいただきたいと思います。まだまだ残暑厳しき折、この名曲を聴きながら、ちょっと強引ですが南国気分をお楽しみください(笑)。



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