*『原子力ムラの陰謀』著者:今西憲之
「第4章 科学技術庁が指示したNHKへの「やらせ抗議」」を数回に分け紹介します。14回目の紹介
原子力ムラの暗部を刻銘に記録に遺し、その男は逝った-
1995年12月8日、「夢の原子炉」と言われた
高速増殖炉「もんじゅ」でナトリウム漏れ事故が発生。
事故をめぐる”隠蔽”が次々と発覚する中、
一人の「国策会社」幹部が突如、命を落とした。
死の謎を解く鍵は、遺された膨大な資料のみ。
そこには原子力ムラが行ってきた”裏工作”の歴史が、
あまりにも生々しく記録されていた。
(P3「まえがき」から)
「『もんじゅ事故』で謎の死を遂げた西村成生さんが残した内部資料があるらしい」
2012年冬、はじめにその話を聞いた時は、ここまで深くその資料と付き合うことになるとは想像もしていなかった。
「西村ファイル」と名づけた資料の山を読み進めるうち、取材班は何度も我が目を疑った。国の特殊法人であるはずの動力炉・核燃料開発事業団(動燃=当時) が地域住民や職員の思想・行動を徹底的に調べ上げ、「洗脳」「工作」といった言葉が頻繁に飛び交う。そして、あまりに不自然な西村氏の死-。「原子力ム ラ」の異常な体質が、次々と浮かび上がってきたのである。
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**『原子力ムラの陰謀』著書 「第4章 科学技術庁が指示したNHKへの「やらせ抗議」」の紹介
前回の話:科学技術庁が指示したNHKへの「やらせ抗議」 ※13回目の紹介
文書はさらに、見学の対応について、外部(国会、地方自治体議会)から説明を求められた場合の基準を早急に作成する必要があると訴え、その理由を次のように書いている。
<作成の狙い
・反対派を差別はしていない
・基準により公明正大に対応している(基準の範囲で業務上の都合等を勘案して決定する)>
要は、反対派だからといって一般と違った対応をしていることはない、と強調することが目的だという。これは原子力基本法で想定された「公開の原則」を踏まえたものだが、実際は、こうした表向きの説明を鵜呑みにできない記述も存在した。
<受入れ方法の統一化>
<例 一般見学者は展示館説明、構内一巡(各事業所による徹底) 例 もんじゅ>
ここまでは、公開の範囲の問題はともかく、”わけへだてない”という意味で一定の理解はできる。ところが、そのすぐ下にある記述は、これとまったく矛盾するものだった。
<他の一般見学者の場合で施設を見せる場合の理屈 東海 青森件関係者>
つまり、動燃の事業所がある茨城県東海村や核燃料再処理施設などのある青森県の関係者には施設の中まで見せており、その言い訳のための「理屈」を考えねばならない、ということのようなのだ。
ちなみにこの資料では、原子力基本法で規定された「公開の原則」について追求された場合の”言い訳”まで用意されていた。
<①原子力基本法にいう「公開の原則」は、「成果」の公開を要求するものであるから、原子力の研究、開発及び利用に関する、ある過程におけるすべての情報をそれが形成される都度直ちにそのままの形で公開することを必ずしも要求するものではない>
<②また原子力施設には、企業秘密、ノウハウ等が含まれ、第2条にはこれらを含めた公開を言っているのではないことから施設のすべてを常に公開する必要はない>
<③別の側面で言えば、原子力の平和利用を守るために核物質防護並びに核不拡散上から、公開出来ない施設並びに機密事項もある>
原子力基本法では、第2条で原子力資料を平和目的に限り、民主的な運営の下でその成果を公開していくことが規定されている。これが「公開の原則」だ。
ところが①~③の理屈を読むと、「原則」がもはや完全に骨抜きにされていることがよくわかる。「成果」しか公開しなくてよいのなら、過程についてはいくらでも隠蔽できることになる。「核燃料サイクル」の研究開発機関である動燃の業務など、すべて隠し通せてしまうではないか。
メディアや反対派に対して過剰なまでに敵意を抱いて監視し、都合の悪い話は封じ込めようとしてきた動燃。見学者への対応という一見、小さな問題からも、彼らが「公開の原則」を歪め、「隠蔽」を可能にする理屈を構築していたことがわかってきた。
組織にしみついた「隠蔽」体質は、次章のテーマである「プルトニウム輸送」でも、国際社会の白眼視を無視して、存分に発揮されることになる。
※続き「科学技術庁が指示したNHKへの「やらせ抗議」 」の紹介は、今回で終了です。
※10/14(火)22:00から「第8章 もんじゅ事故「隠蔽」の極秘記録と西村氏「怪死」の真相」の紹介を開始します。(『プロローグ「3・11福島原発」の序曲 それは「もんじゅ」事故から始まった』も一緒に紹介)