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MS、「Sender ID」のライセンスをオープンソース向けに修正

2004年09月05日 17時24分07秒 | IT情報
Microsoftはスパム対策技術「Sender ID」のライセンスを変更したことで、「オープンソースユーザーによる採用を妨げる要素は何もないはずだ」と主張しているが……

米Microsoftはスパム対策技術「Sender ID」の新しいライセンス契約について、わずかながらも情報を提供し始めている。Sender IDは同社が今年2月に提案したスパム対策技術「Caller ID for E-Mail」のアップデート版だ。

新しいライセンス条件がオープンソースコミュニティーにも受け入れられるほど十分にオープンなものかどうかは、まだ不明だ。

このライセンスは、現在多くのスパム業者が利用しているメールのスプーフィング(偽装)を減らすために開発されたメール認証規格に関するもの。

現在、Sender IDはInternet Engineering Task Force(IETF)のMTA Authorization Records in DNS(MARID)作業部会において、インターネット標準候補として検討されている(8月5日の記事参照)。同作業部会の決まりによれば、同規格は今月末までに標準案として提出される見通しだ。

Sender IDは今年6月、Caller ID for E-Mailとメン・ウェン・ウォン氏が開発した「Sender Policy Framework(SPF)」技術が統合され誕生した新規格だ(5月26日の記事参照)。

だが、この組み合わせは幾つかの新しい問題を生んだ。SPFはSendmailやPostfix、Qmail、EximといったオープンソースMTA(メッセージ転送エージェント)で人気の規格で、これらは各種のオープンソースライセンスのもとで同ソフトをライセンスしている。だが、もう一方のCaller ID for E-Mailは特許使用料は無料だが、ライセンスに幾つかの条件が含まれるため、この2つの技術が統合されて以来、その点が問題となっている。

Microsoft Exchange担当のプログラムマネジャー、ハリー・カッツ氏は最近、MARIDのietf-mxcompディスカッションリストに新しいライセンス契約に関する情報を投稿した。そのコメントには、「われわれはこの数週間、当社のロイヤリティフリーのCaller IDの特許ライセンスについて多くの人たちと意見を交わしてきた。そうした話合いの結果、またSPFとCaller IDの要素を統合してSender IDを作った経緯から、当社はこの特許ライセンスに多くのアップデートを施した」と記されている。

さらにこのコメントには、新しいライセンス契約の条項に関するFAQシートも含まれていた。新条項には、オープンソースコミュニティーに譲歩するための、小さいが重要な改訂が幾つか含まれている。

例えば、Caller ID for E-Mailの当初のライセンス契約の第2.5項では、ソフト開発者がこのライセンスをダウンロードして署名し、この技術を使ってアプリケーションを開発して、それをほかのベンダーのアプリケーションとバンドルしたり、配布したりする場合、そのベンダーはまずライセンス元の許可を得て、さらにはCaller ID for E-Mailのライセンス契約に署名しなければならないことになっている。

オープンソースグループはこうした条項に難色を示していた。彼らにとって、オープンソースコードとは自由に交換、修正できるものだからだ。Sender IDのライセンス契約では、この条項が排除されているほか、エンドユーザーに関する別の条項にも次のように改訂が加えられている。

「ここで明言しておくが、本契約はライセンシーによるライセンス実装のソースコード実装を受け取る者が本契約または当社のそのほかのライセンス契約を受け入れることを義務付けるものではない。ライセンシーのエンドユーザーは、本契約の第2.2項(ソースコードの配布)または第2.1項(特許ライセンス)でライセンスされた実装を、本契約に署名せずに、ライセンシーから直接または間接に受け取り、使用できる。本契約はすべての関係者に平等に提供される」

だが、依然として問題は残っている。1つは、新しいライセンスにも、ソースコードの配布に関して「譲渡できない」場合や「2次ライセンスを認めない」場合などの条項が残っている点だ。もう1つは、Microsoftがこのライセンスを郵便かFAXで送信するよう求めている点だ。

そのため、最も一般的なオープンソースライセンスであるGeneral Public License(GPL)の下では、Sender IDの利用が妨げられる可能性がある。新しいライセンス契約に関するFAQシートにおいて、Microsoft幹部が「オープンソースユーザーによるSender IDの採用を妨げる要素は何もないはずだ」と述べており、オープンソースに関する懸念はこのFAQシートにより一部は解消されている。このFAQによれば、SendmailやPostfix、QMailなどで使われているライセンスと(Sender IDと)の間に「具体的な相反点」は何もないという。ただしこの中では、GPLライセンスを採用しているEximについては言及されていない。

MARIDにとっては、Sender ID標準案を広く普及させることが重要となる。同技術の成功は、どれだけ多くのメールサーバに採用されるかにかかっているからだ。ディスカッションリストで活発に発言しているメンバーらによれば、現状のライセンス条件のままでは、同技術の採用は妨げられ、オープンソースコミュニティーは別の認証規格を採用せざるを得なくなりそうだ。

この新しいライセンス条件に関するMicrosoft幹部のコメントは、本稿の掲載に間に合わなかった。同社は9月半ば以降にこの新しい契約を自社のWebサイトに正式に掲載する予定という。

さらにMicrosoftは、Sender ID技術の特許権を請求しているとされている。IETFによれば、同社は米特許商標局(USPTO)に特許を出願中という。今月のIETF MARIDの会合で、同グループはMicrosoftが出願中の特許について説明する期限を8月23日に定めている。

カッツ氏はディスカッションリストに、知的財産権(IPR)情報の最新版をポストし、この説明を提出したと説明している。Microsoftによれば、E-Mail Messages規格で併用するSender IDとPurported Responsible Address(PRA)が特許出願中という。

多くのオープンソース支持者は、自社が出願中の特許についてMicrosoftがなぜこれほど話したがらないのか、そしてなぜIETF RFCに選ばれる可能性のある技術に特許が必要なのかという点を訝っている。

今のところ、MicrosoftはFAQシートで次のように説明している。

「小規模企業であれ大企業であれ、研究開発に相当の資金を投じている大半の企業と同様、Microsoftも日常的に研究開発の成果を特許申請している。オリジナルのCaller ID for E-Mail技術の特許申請は、Caller ID仕様をIETFに提出しようと決めるはるか以前に提出したものだ。特許申請は非常に長い時間がかかる手続きで、どの申請が認められるか、あるいはそうした特許の適用範囲がはっきりするまでには、まだ何年も時間がかかるだろう」

カッツ氏はディスカッションリストに投稿したコメントで、問い合わせはすべて同社の法務部門に送るよう要請している。

SETI Instituteの上級UNIXシステム管理者マーク・ラングストン氏は、ietf-mxcompディスカッションリストに投稿し、根本的な問題は採用だと指摘している。

「この実装の採用、不採用を迷っている人たちは、特許請求の問題やライセンス条件の問題を理由に採用を避けようとしている」と同氏。

「私もソフトを書いている。ライセンス条件やMicrosoftの特許請求の影響についてはとても懸念しているし、混乱もしており、とてもSender IDを安心して実装できる状態ではない。Sender IDを採用した場合の自らの責任義務について理解するためだけに、弁護士を雇うわけにもいかない」とさらに同氏は続けている。
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