「サッカー文化フォーラム」夢追い人のブログ

1993年のJリーグ誕生で芽生えた日本の「サッカー文化」。映像・活字等で記録されている歴史を100年先まで繋ぎ伝えます。

ハリルジャパンの世代交代、果たして図られるのか・・・。(3)

2016年09月11日 11時42分42秒 | サッカー日本代表
ロシアW杯アジア最終予選、2試合を終えて1勝1敗、ここにきてナンバー誌が臨時増刊の形で「日本代表に世代交代を!」と訴える提言を出しました。

果たしてハリルホジッチ監督は世代交代を図るのか、残念なことに、もはや残された時間がありません。打つ手が当たれば出場権獲得、打つ手を間違えば出場権喪失、そういう二者択一の段階に来ています。

「ハリルジャパンの世代交代、果たして図られるのか・・・。」と題して、ハリルホジッチ監督の選択を読み解くシリーズの3回目です。今回のテーマは現在のレギュラー陣にとってかわるべきと期待される「プラチナ世代」についてです。

私は8月14日の書き込み「昨夜のフジテレビ『栄光なき天才たち』はいい番組でしたね。」の中で、1976年生まれの中田英寿氏を筆頭に、宮本恒靖氏、故・松田直樹氏、戸田和幸氏の世代のこと、そして、1979年組の小野伸二選手、稲本潤一選手、高原直泰選手、遠藤保仁選手、中田浩二氏、小笠原満男選手、本山雅志氏の世代のことを書きました。

この2つの世代、実は中田英寿選手の世代には財前宣之選手、小野伸二選手の世代には、まさに小野選手という「飛びぬけた天才」がいたことによって、周りが引っ張られるようにレベルをあげていき、その後の日本代表の中核をなす人材が揃ったという特別な世代のことです。

今回のナンバー誌もそうですが、財前選手や小野伸二選手のような「ある世代やあるチームの中心的選手」のことをイタリア語の「バンディエラ」(旗頭)と呼ぶようです。

「プラチナ世代」のバンディエラが宇佐美貴史選手だということです。彼らが今後、フル代表の中核に何人も名を連ねれば、日本サッカー史には、前の2つの世代に加え、傑出した選手のもと花開いた3つの世代として記録され記憶されることでしょう。

「プラチナ世代」のバンディエラ、宇佐美貴史選手、8月14日の書き込みでの私の表現は「飛びぬけた天才」ですが、宇佐美選手についてもそう思います。

彼のゴール前左45度あたりからのシュートは決してパワフルには見えないのですが、極めて誤差の少ない、それでいてムチをしならせるようなシュートで、彼の天才性を垣間見ることができます。

そこに磨きをかければ、まさに釜本邦茂の再来、狙ったら必ず仕留める決定力を持った選手になれそうな気がします。私はぜひそうなって欲しいと痛切に願っています。宇佐美選手については、2015年1月24日の書き込みで「宇佐美貴史選手が本田圭祐選手のように心の強いスーパーな選手に」というタイトルで願望と期待を寄せています。

しかし、宇佐美選手をはじめ、彼らのほとんどは指揮官に「ぜひ使ってみたい」と思わせる強烈なインパクトを残せておらず、スタメンに定着している選手がいない現状です。

そういう彼らに対して南アW杯組は「ギラギラしたものが表に出ないタイプが多い」と、もどかしくしているようです。

このまま彼らは、単なる「早熟世代」で終ってしまうのか、私は決してそうは思っていません。いずれ彼らが代表の中核に何人も名を連ねる時が来ると思っています。ただ、問題はその時期です。この1年、いやこの半年の中でインパクトを指揮官に与えて欲しいのです。

特に欧州サッカーシーンがウィンターブレークに入るまでの3ケ月半、宇佐美、宮市、武藤、小林祐希、彼らには何としても目にみえる成長を遂げて欲しいものです。

国内組の柴崎岳、昌司源両選手も同様です。少なくとも彼らの中から3人は、年明けからの最終予選再開時に現在のスタメン組にとってかわって欲しいのです。

私は1979年組のいわゆる「ゴールデンエイジ」世代(小野伸二、稲本潤一、高原直泰各選手ら)も、あまりギラギラ感のない育ちのよさを思わせる世代だったと思っています。ところが彼らは1999年ワールドユースで準優勝に輝いた成果をひっさげて、時の監督だったトルシエに一斉に五輪代表にひきあげられたのです。

いわぱ文句のつけようのないインパクトを残して次のステージに進んだわけです。前年のフランスW杯で、すでに小野伸二選手がW杯のピッチに立っていますから、もはや未知数でも何でもない計算できる戦力です。

それに比べて宇佐美貴史選手をはじめとした「プラチナ世代」は、2012年ロンドン五輪メンバーには若すぎて、リオ五輪メンバーにはオーバーエイジとなってしまう巡り合わせの悪さがあります。

それでも、中田英寿選手の世代がアトランタ五輪メンバーで最年少だった中、中田選手と故・松田直樹選手の二人がレギュラークラスだったことを思えば、「プラチナ世代」の選手たちが、五輪の巡り合わせの犠牲者などと言えた義理ではなく、ただ単に伸び悩んでいることは否めません。

もう一つ、小野伸二選手の世代も中田英寿選手の世代も「注目の世代」と言われ始めたのがU-17世界選手権出場あたりからで「プラチナ世代」のようにU-13やU-15世代からもてはやされたのではないということも考えなければなりません。

もしかすると評価があまりにも早すぎたのではないかということです。もし彼らのうち多くが埋没してしまうとすれば、それは早すぎた評価、いいかえれば「買いかぶりすぎた」ということになります。

あるいは、彼らは来年には間に合わないかも知れないけれど、2019年アジアカップあたりがキャリアのピークになることから、そのあたりで一斉に花開くのかも知れません。

だからといって、南アW杯レギュラー組の下の世代である清武弘嗣選手、山口蛍選手、酒井宏樹選手、酒井高徳選手、原口元気選手、さらには今回呼ばれていない齊藤学選手、大迫勇也選手を加えても足りません。「プラチナ世代」をすっ飛ばして遠藤航選手、大島僚太選手、植田直道選手、浅野琢磨選手に頼るようではあまりにも寂しいとしかいいようがありません。

「プラチナ世代」には、ハリル監督にアピールして、ごく自然にスタメンで使いたいと思わせて欲しいと願うばかりです。ロシアW杯出場権の帰趨は、ひとえに彼らの今後3ケ月半にかかっていると言っても過言ではありません。繰り返しますが、もはや残された時間がありません。

ところで、最後に補足ですが、さきほど、1998年フランスW杯に「ゴールデンエイジ」のバンディエラ(旗頭)である小野伸二選手が出場したことを書きました。

それについて私は、さる8月20日の「通訳・ダバディ氏のトルシエジャパンにまつわる発言から」の書き込みで、「小野伸二選手がメンバー入りしたのは、岡田監督が日本人だからで、将来を見据えて選考しています。トルシエ監督のような外国人監督には『将来を見据えて』などということは期待できません」と書きました。

ところが今回ナンバー誌で、「岡田武史・私は何故、本田を抜擢したのか」という二宮寿朗氏のレポートを読みましたら「小野伸二選手をメンバーに入れたのは、次世代の中心になるであろう小野に大舞台を経験させたいという思いはあったのですか?」との質問に対して、

「経験も実績もない41歳の監督に、そんな余裕なんてないよ。(中略)もしヒデ(中田英寿)がケガをしてしまったらこのチームは攻撃ができなくなる。その場合、伸二の天才性に賭けるしかなかった。将来がどうとかじゃなくて・・・・」と答えています。

まさか岡田監督の小野伸二選出が「一発賭けるなら伸二しかいない」という結論によるものだったとは思いませんでした。私はもちろんですが、多くのサッカージャーナリストもこれを読んで「将来を見据えて」論の修正を迫られたことと思います。









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ハリルジャパンの世代交代、果たして図られるのか・・・。(2)

2016年09月11日 09時15分22秒 | サッカー日本代表
昨日の続きを書きます。タイトルも昨日と同じにして(1)(2)とさせていただきました。

昨日は、ナンバー誌の本田選手「特別ロングインタビュー」から一部をご紹介したところまで書きました。この本田選手の話から、彼のサッカーに対するメンタリティの変化が読み取れます。そして、それは中田英寿選手との比較で、興味深い違いを浮き彫りにしてくれます。

ことサッカー観に関しては、本田選手も中田英寿選手と同じだということがわかります。中田選手は若い頃、テレビでのインタビューで「ボクは別にサッカーだけが人生のすべてだと思っているわけじゃないから・・・」と話していました。

このフレーズは、結構インパクトのあった部分なので中田選手の「人となり」を語る時に、たびたび使われたように思います。

そして本田選手「人間・本田圭佑がたまたまサッカーをしていたに過ぎない」と言っています。さらに「これまで何度も言っている」と、最近になってそう思うようになったのではないことも話しています。

同じサッカー観を持つ本田選手と中田選手、では二人のサッカー人生で違うのは何か、それは中田選手がドイツW杯を最後に、スパッと引退してしまったこと、本田選手は「引退は確実に見えてきているけど、ロシアW杯まで。それが最後」と現役を続けていることです。

かねがね「サッカーがすべてではなく、いつ、他のことに関心が向いてもおかしくない」と考えている人間の心の中で、相対的に他のことへの関心が高まってしまう、あるいは急速にサッカーに対する情熱を失っていまうという、メンタリティの変化が生じた時、

中田英寿選手は自分の中でメンタリティに変化が生じた時、サッカーを続けるという選択肢がなかったのでしょう。それは一時的に日本サッカー界にとって大きな損失だったのですが、巧まずして世代交代につながりました。

注目すべきは「ビジネスマン・本田圭佑」の肩書を持ちながらサッカーを続けている本田選手の、明らかなメンタリティの変化が、アジア最終予選の中でどう作用するかです。現在の本田選手の中では、もはやサッカーが全てではありません。彼自身が言うように「サッカー以外の部分の熱量が上昇しているから・・・・」

本田選手は、自らの心の中でサッカー以外の部分に関心が高まっていて、以前と比べ明らかにサッカーに対する熱量が低くなっていることを、プレーの中でどうカバーしていくのでしょうか。

実は本田選手に関しては2015年01月23日に「本田圭祐選手のキャリアがピークから下降局面に入った日として記憶されるでしょう」と書き込みました。

今回第1戦で日本を破ったUAEに、PK戦の末敗れたアジアカップ準々決勝の試合があった日について書いたものです。まさにその後の彼は、キャリアの下降曲面をゆっくりと下っていると思ったほうがいいようです。

なのに、私たちがまだ、2010年の南アフリカW杯から2013年のブラジルW杯アジア最終予選・豪州戦、修羅場のPKの場面までの本田選手の幻影をいまだに追い続けているのかも知れません。彼はもはやプレー面でも意識面でも、その頃の彼ではないとみるべきでしょう。

では、もう一人のキーマン、香川真司選手についてはどうでしょう。

今回のナンバー誌臨時増刊号の中で「知将が語る世代交代の真実」というサブタイトルで「岡田武史・私は何故、本田を抜擢したのか」という4ページ建ての記事があります。二宮寿朗氏のレポートです。

その中に香川選手の持っているメンタリティを理解するくだりがあります。南アW杯の指揮をとった岡田監督は、最終メンバーから香川選手を外しています。その理由として「あのときの代表チームのレベルでは、チームへの犠牲心を全員が持って、チームのために尽くして一つにならなければならなかった。真司については最後の最後まで悩んだ上で外した。

もちろんアイツだってチームに尽くしてくれているのは分かっていた。正直、監督に言われたとおりのことをやるだけの選手じゃ面白くないし、真司はそこが魅力でもある。ただ、自分の力をW杯で試したいという気持ちが強すぎると感じた。・・・・」

これは、もう6年以上も前の香川選手について語っていることなのですが、現在の香川選手の、代表での好不調の激しいプレーぶりと決して無縁ではないように思います。

特に彼はいま背番号「10」を背負ってプレーしています。それが一層、好不調の落差を生んでいるように思います。

現在の香川選手は、自分が背負っている役割について、果たして、試合の中で自分がうまく機能しない時に「黒子に徹する」「他の調子のいい選手の力を引き出してやる」という意識になっているでしょうか?

私たちも良くないことに、背番号「10」の彼がチャンスに絡んでいなければ「香川選手が画面に出てこない」と見てしまいます。

しかし、それは観戦者の判断であって香川選手の判断である必要はないのですが、もしかしたら彼自身も「自分は思うようにチャンスに絡めていない」という気持に陥ってしまって、「黒子に徹する」「他の調子のいい選手の力を引き出してやる」という切り替えができないまま試合を終えているのではないかと思うわけです。

ここ2試合について特に言われているのは、香川選手が中央にいて本田選手が右にいる布陣、本田選手がしだいに中、中と寄りすぎて、香川選手が窮屈になっているという指摘です。

サッカーにすべてを集中しきれていない本田選手と、他の選手の力を引き出してやるという気持ちになりきれていない香川選手が、バイタルエリア中央で右往左往しているのかも知れません。

問題はハリルホジッチ監督がどう判断するかです。ハリル監督が、こうした二人のメンタリティに、きちんとアプローチした上で結論を出すのかどうかです。少なくともこれまでのところ監督は、二人の能力、経験値に信頼をおいてきたわけです。

それを今後も続けるのかどうか、続けるも選択、続けないも選択なのですが、前回も書きましたように、残念なことに、もはや残された時間がありません。打つ手が当たれば出場権獲得、打つ手を間違えば出場権喪失、そういう二者択一の段階に来ています。

ではハリル監督なら、その選択を誤らないと信じられるかどうかです。私は就任当初はW杯本大会の修羅場を知り、数多くの選手を見てきたハリル監督に大きな期待をしてきました。けれども最近心配になのは、その年齢からくる判断の迷い、判断の狂いです。

ハリル監督は全盛期の冴えを徐々に失ってはいないか、それが気になって仕方がありません。それを見極めるのは協会関係者の責任です。残された時間が少ないが故に、もし就任を要請した頃と、最近の様子に変化を感じたら、対応を躊躇すれば命取りになります。

ハリル監督にとって悩ましいのは、本田、香川にとってかわるべき人材の明確な手ごたえがないことです。それはわかります。しかし、この2試合で、選手交代の見立てに自信を深めたのも事実です。

これについてナンバー誌では、アギーレ前監督の言葉を借りて「プランBを準備しておくことが大事になる。本田を中心としたやり方だけで進んでいくのはあまりにもリスクが大きい」と書いています。(元指揮官の提言・豊福晋氏レポート)

「プランB」準備の必要性については、打つ手の内容は違うものの、元サッカーマガジン編集長の北條聡氏も提言していました。

前線の布陣や攻撃オプションについて、私があれこれと並べるのは控えますが、ハリル監督が「プランB」といった柔軟な策を駆使して今後を乗り切ってくれることを願います。

このあと、「ハリルジャパンの世代交代、果たして図られるのか・・・。(3)」ということで、プラチナ世代について書きたいと思います。









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