自民党主要派閥が菅義偉氏を支援するということで不利になった石破茂氏と岸田文雄氏が、二人とも国民のために政治を行いたいと言いました。菅氏との違いを強調するための言葉であったと思います。恐らく菅氏は、安倍内閣の政治を継続するということで主要派閥の支援をとりつけたと思います。石破氏や岸田氏は、安倍内閣は国民のためになってなっていなかったと思っていたようです。
石破氏や岸田氏が総理になると、国民のために政治を行うかどうかはわかりませんが、安倍内閣が国民のために政治を行ってこなかったことは事実だと思います。安倍内閣の政治はまさに保守でした。産業政策も保守、外交も保守でした。異次元の金融緩和というと革新的な経済政策だったと錯覚する人が多いと思いますが、1990年以降継続された金融緩和策を大きくしただけで産業や会社の新陳代謝を図った訳ではありません。動くお金の量が多くなったので景気がよくなった印象を与えたが、大きく見ると国内産業は元気がなく、労働者の労働対価が上がらなかったので貧困層の拡大が続きました。東京オリンピック、大阪万博などの企画は、産業政策と言うより、一時的景気付けと言った方がいい企画です。
観光産業振興は、経済効果があったのですが、ひたすら外国人観光客を増やすことに注力したので、有名観光地に観光客が集中し、観光地が人の密集地になっただけで観光地の住民は悲鳴を上げました。今はウイルス禍で観光地の人気がなくなり、住民は収益ゼロと悲鳴を上げています。
アメリカとの同盟を基軸として外交を行うとの方針はこれもまったくの保守で、隣国から見れば日本警戒を続けるしかありません。東アジア諸国で地域の平和を考えようという雰囲気は生まれず、今や東アジアは紛争の恐れが大きい危険地域になりました。安倍内閣は、防衛力が大きい「強い国」になれば、日本の安全は改善されると思ったようですが、中国と日本の対立が強まる方向で、防衛費拡大に歯止めがかかりません。中国軍の日本近傍での活動が活発になり、日本も対抗活動強化を強いられています。まさに外交不調で、安倍内閣は、防衛力という名の軍事力強化に走っています。貧困層拡大を放置して軍事力強化に注力した戦前日本に近似してきました。日本人を戦争する国民にするため、憲法第9条(戦争の放棄)を変えることや、靖国神社を日本人の精神的よりどころにすることに努力してきました。
菅氏は、憲法の変更や靖国神社信仰については安倍氏のように積極的ではないようですが、大略、安倍内閣の政治継続の線で行くでしょう。つまり保守です。新産業については、観光産業、カジノのような娯楽産業などの枝葉産業のことを考えることはできるが、国内生産を重んじるような新根幹産業育成を考えることはできないと思います。優柔不断の政治ではないでしょうか。