Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 182

2021-07-05 09:48:47 | 日記
 「やっぱりそうだったわね、お姉さん誤解してたわね。」

この母の言葉に、先刻から自分に同意を求める様に目や仕草で合図していた母に、彼女の次女は神妙な顔付きでコクリと頷いた。

 母は上機嫌で次女に話し掛け、上の子の失態を下の子と笑い合おうとしたが、妹の方は何やら慎重な状態で笑顔を見せて来ない。如何したのだろうと彼女は思った。ちらっと上の子に目を遣って彼女は次女に問い掛けた。如何したの?何かあったのかと。

 次女は視線を落としつつ、チラチラと姉の様子を伺っていたが、隙を見て「うん、一寸。」と言うと、間を置いて「後が怖いんや。」等、言葉を発した。姉の方はその間自分の考えに没頭している様子で、自分の母の顔と中空に向けてその視線を泳がせていた。この姉妹の様子に、母である彼女は徐にうんざりとした顔付きに変わると、ハーっと溜息をついた。彼女は舅の話が離縁話では無い事を姉娘に語り出した。

 「よく目を開いて物事を見たり、耳を澄ませて人の話を最後まで聞きなさい。」

よく言って来ただろうと彼女は言った。この娘が祖父の家を出てから可なり経つ事を考えると、この癖が直らないのは元々の性分なんだろうか、そうも考えてみる彼女だった。

「三子の魂百までか…。」

彼女は呟いた。鶏が先か、卵が先か、そんな言葉も彼女は口にしたが、目の前の年嵩の子はさっぱり要領を得ない様子だ。彼女は離れた所で立ち止まってこちらの様子を窺う下の子に、お前の方の事情は分かったよと真面目な目付きをして頷いて見せるのだった。

 「本当に、言わなくても分かる子もいると言うのに、」

お前は言っても分からないと溢すと、彼女は不満気に言った。

「お前よりもっと年下の子でも、言わなくても分かる子は沢山いる。」

お前にはもう何度も、昔から言っているのに未だに分からないなんて。聞かなくても、その場にいなくても、ちゃんと物事判じる子もいると言うのに。

「その子がお前と同じ歳になったなら、お前はその子に抜かれるよ。」

そんな事になったら、お前如何するんだいと、彼女は不機嫌な顔付きで言葉を苛つかせて長女に言ってみるのだった。

「お母さんたら、冗談ばっかりなんだから。」

ハハハ、ここで長女はさも可笑し気に笑った。

うの華3 181

2021-07-05 09:04:42 | 日記
 『ここは長女の私が確りとしなければ。』

彼女は決意した。じっと目の前に立つ母の顔を、母に対抗する様にきつく見詰めてみる。

 母である彼女は目を伏せていたが、自分を見詰めるこの様な長女の視線を痛い程にその顔に感じていた。娘の視線には自分を責める様な敵意がこもっている。彼女は思った。『やっぱりやわ、誤解しているんやわ。』

 先刻、食堂で自分と舅が話をしていた時の事だ。傍に座っていた彼女の娘2人の内、この長女の方は途中から目を閉じると、時には両手で耳を塞いだり離したり、首を振ったりしていたのだ。娘が時折ブツブツ口の中で何やら言葉を呟いていたのは、自分達大人2人の話を聞きたく無かったからなのだろう。

 これまでの経験から、彼女には長女がこの様な行動をする時の心理状態がよく分かっていた。『この子はそうなのだ、自分に都合の悪い話は聞きたく無いのだ。』。今迄の常々の長女の言動から、母である彼女には上の娘のそういった性質が分かっていた。そんな点は義弟の四郎に似ている。こう思うと、環境というのは恐ろしいものだと彼女は思った。

「環境って大事なものやわ。」

我知らずの内に彼女は呟いていた。環境というものは恐ろしいと。

 母を見詰めていた彼女の長女は母の言葉に驚いた。母が何の脈絡も無く環境という言葉を口にしたのだと思ったのだ。彼女は母は何やらおかしいと怪しみだした。彼女に、祖父から父との離縁の話を受けて承諾した気配を感じる。一方、それなのに何だか母が内心浮き浮きと嬉しく感じている様なのだ。離縁話が母には嬉しい事なのだろうか?。道理に合わなくて妙に思われる。そんな自分の方がおかしいのだろうか?。

 「否、私の方が普通、それが常識だわ。」

彼女は、離縁話を受けた嫁はガクリと気落ちしているのが当たり前だと確信すると、幸福そうな母は変だと結論した。事実、今目の前にいる母は、自分を見詰め幸福そうに微笑んでいるではないか。

「お母さん、変よ。」

彼女は満足気に微笑む母に忠告しようと声を掛けた。

「お父さんと離婚したかったの?。」

そうじゃないでしょう。そんな風に幸せそうな顔して笑ってたら、世間の人に誤解されるわよ。と、彼女はしたり顔で母を窘めた。

 子の言葉に、しかし母である彼女は何の顔色も変えず一向に動じなかった。彼女は自分の長女の少し離れた背後に立っていた次女に笑い掛けていた。それは満足気な笑みだった。





 

今日の思い出を振り返ってみる

2021-07-05 05:32:35 | 日記

今日の思い出を振り返ってみる
うの華 8 「あなたでしょう、分かっていますよ。」と住職さんは、さも了解していると言わんばかりに落ち着いて喋り出した。 私の方はぼうっとしながらも、『何の話だろう?。』と畏まった。......

    今日は午前中雨のようです。今週は本格的な梅雨の様相、週間予報が雲と傘のマークばかりでした。
    土砂災害、警報が出ていたので心配です。警報の地図を見てみると、河川や山の側は不安ですね。住み慣れない場所なら尚更です。