さて、ダンスパーティー当日です。練習とは違い、サークル員はそれぞれに思い思いのパートナーが出来上がっているようでした。サークルに勧誘してくれた先輩と鈴舞さんが会場に入ると、如何やらもうパーティーはお開きになって、皆女性陣は帰る支度をしているようでした。
「あらっ⁉」
と鈴舞さんがお驚いたのも道理、女性陣の半数近くは帰ってしまい、残っている皆もコートなど身に着け、バッグも手に持ちもう帰るだけという出で立ちでした。男子も数人、世話役の係だけが申し訳に残っている感じでした。これは何故かというと、鈴舞さんを引率してきた先輩が時間を間違えていた事が原因でした。
「3時からじゃ無かった?」
「13時からだよ。」
先輩の問い掛ける声に、男子学生の1人が答えました。十を付ければ今は15時でした。予定では丁度2時間ほどのパーティ―であり、程よく卒業生とカップルになった後輩、又は同輩の女子学生はさっさと思うような2次会に出て行ってしまった後なのでした。
引率の先輩が、失態をしたと目に見えてがっくりと気落ちしたのは当前でしたが、好きなダンスを踊れると、うきうきと期待に胸を膨らませてやって来た鈴舞さんも、少なからず意気消沈してしまいました。
そんな鈴舞さんや先輩の、女子学生の落胆を見過ごせなかった男子数人が残って、後からやって来たサークル員の女子2人と気楽に2曲ほど躍ってくれました。鈴舞さんの先輩は、それでもお目当ての先輩が消えてしまったので半ば落胆気味でしたが、踊れればいいわというだけの、まだ新参で一年生の学生だった鈴舞さんには、踊りが2曲だけで終わったという事が残念でした。
実は先輩には、卒業で憧れの先輩と別れる前に、手を取って踊りたかったという淡い思いがありました。そんな先輩の悲しい切なさが無かった点、物足りないダンスパーティーで終わったわ。という不満足感だけが残ったのが、鈴舞さんの方でした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます