Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 166

2020-02-23 14:04:27 | 日記

 「お母さん、大丈夫?。」

縁側で、何かしら熟考中の母に対して、暫く様子見をした儘無言でいた私だったが、頃合いを見てこう声を掛けた。

 …大丈夫なの?。こんな数回目の私の声掛けに、母はえっ、と我に返った。彼女はふいと傍に佇む私を見上げたが、未だ心此処に非ずの態でいた。お前か、と口にした言葉も力無く気の無い返事だった。

 その後も母は自分の世界に没頭していた。あれこれと考え事をしている気配だったが、私の事も彼女の頭の片隅にはある様子で、時折私の顔に目を遣ったりしては途切れ無く床磨きの手を動かしていた。そして到頭

「お前、お母さんと里に帰るかい?。」

等と私に対して訊いて来た。

 『母の里へ?。祭りでも無い、お盆でも無い、そんな時期じゃないかな?。』、私は思った。母の里帰りの時期では無い様な気がした。そこで私は母方の里で何か行事があるのかと彼女に尋ねた。

「特に、今の時期は何も無いけどね…。」

母は考え込みながら、気乗りしなさそうに私に答えていたが、そうね、何かあるだろうかと、母の母である、向こうのお祖母ちゃんに聞いてみるよとのみ答えた。すると突然、母はそうだ!と言うと、急に笑顔になった。

 「そうだよ、電話でお母さんに聞いてみればいいんだ。」

「何がって、こんな時の母という物だ。」母はこう言うと顔色が明るくなり、にこやかに私を見詰め直した。彼女は持ち前の元気を取り戻したのだ。そして床に置いた手を活発に動かし出すと、私に向かい満面の笑みでこう言った。

「お前、いい事言うね。里に用事が有ればいいんだよ。」

「お利口だね、智ちゃんは利口だよ。上手い事言った。」

そう立て続けに言葉を並べる母に、私は彼女から本当に褒められているんだろうか?、反対に彼女の冗談で小馬鹿にされているんだろうかと一瞬迷った。母が私にこう言った理由がさっぱり分からなかったからだ。しかし、目の前の母を見ていて、心底喜んでいるらしい様子から私は母の言葉を真に受けて自分も喜ぶ事にした。にやりと笑顔になった私が、ここでこの日の憂さを晴らし、暫しご満悦になったのは言うまでも無かった。


今日の思い出を振り返って見る

2020-02-23 13:47:25 | 日記
 
親交

 紫苑さんはほうっと溜息をつきました。『揶揄われたのかなぁ?』彼は首を捻って考えてしまいました。 「何時も礼儀正しい若輩者の彼が、あんな事を言い出すとは思わなかった。」......
 

 今日は、天皇誕生日。おめでとうございます。令和になって初めてのお誕生日ですね。

 私は昭和生まれ、昭和も遠くなりました。昭和、平成と時代が過ぎて、3回目の元号に入ると、自分の時代がどんどんと遠ざかって遠くなり、霞の世界にいるような感じです。よく言われていた窓際族のような感じでいる私です。

 現役でいても良いけど、中心には居なくて、脇に追いやられている。バリバリ働けないし、能力的にも体力的にも働き盛りは過ぎてしまった感じだし、実際にもそうだと実感しています。無理は出来ません。何かと忙しい世の中の現状です。私の場合、のんびり適応しながらやって行きたいと思います。

 さて、昨年は、この回から新しい作品を書いていたようですね。

 


うの華 165

2020-02-21 23:07:07 | 日記

 「お前何だか。」

祖母はそんな息子に声を掛けた。彼女は不思議そうな顔付をしていた。

 結婚してから急に勘が良くなったんじゃないかい。昔は頓狂な子だったけどね…。そんな事を言うと、祖母は伯父の顔色をじいっと窺っている様子だ。そんな母に、息子の伯父は正直言うとねと、こう答えた。

 兄さん達みたいに切れる事を言うと、母さん僕にも期待しただろう。兄さん達みたいにね。学問や何やかやでね、母さんにこってり絞られるのは、僕、御免だったんだ。静かで落ち着いた声だった。

「御免だよ。」

謝罪とも取れる息子の最後の言葉に、目の前の母は寂しそうに瞼を閉じた。

 沈んだ感じになった私の祖母は、その後無言で心持ち顔を項垂らせた。彼女は過去を反省していたのだろうか。彼女は再び息子の顔を見上げる事も無く、お前もうお帰りという言葉のみを口にした。

 私は座敷の先へと進み、自分が推理した通りにそこで私の母の姿を認めた。

「お母さん、やっぱりここにいたんだ。」

私は自分の考えが当たっていた事で、今迄のむしゃくしゃした気分から明るい気分になり、朗らかに笑顔で母に声を掛けた。

 母は床に屈みこんで例の如く床磨きの真っ最中だった。しかし、先程の半ば適当でいて散漫と周囲に気を配っていた様子とは違い、彼女は明らかに心此処に非ずという様な状態だった。私の声掛けに全く反応が無かった。私は母がぼんやりと考え事をしているのだろうと思った。しかし彼女はそんな放心状態の体でありながら、緊迫したようなピンとした硬い気配を身に纏っていた。

 母に近付いた私が更によく彼女の様子を見てみると、彼女は手を動かしてはいたが、その目は動く手元では無く床までの宙の一点を見詰めていた。そうして彼女は何かを一心に考え込んでいるのだ。母は縁側で1人自分の考えに集中していたのだ。


うの華 164

2020-02-21 21:54:47 | 日記

 「母さん、悪い癖が出てたよ。」

気を付けなよと伯父が祖母に小声で注意した。

「家の子も近所で言われたって言ってあっただろう。」

そう彼は言うと、弟の子である私に笑顔を向けた。

「お父さんは大丈夫だよ。」

そう言うと、伯父はしげしげと私の顔を見て、如何にも子供のご機嫌を取る様に話し始めた。

 私には私の父の両親である祖父や祖母が付いている、私の父の兄であるもう1人の一郎伯父や自分も付いている、自分達の奥さんの伯母さん達も付いている、だから私は安心していいんだと。それに私の母も私に付いているんだからと、伯父は最後にそう私の母の事も付け足すと、ポンと私の肩を叩いて、最後まで笑顔を絶やさずに励ましてくれた。

 この伯父の励ましでも、酷く落胆していた私は直ぐに笑顔に戻れなかったが、伯父の顔を見詰めている内に、彼の折角の好意に応えないとという考えが頭に浮かんだ。私は少々微笑んだ。

 こうやって私に周囲に気を使う余裕が出たところで、「お母さんは?。」。私は母の不在が改めて心配になり問い掛けた。これは誰に聞くとも無しに尋ねた言葉だった。答えを返してくれるのは祖母でなくてもよかった。

「さぁ?。」

勿論、伯父ではなく祖母の方が答えた。この家に住む一家の家族の事だからだ。「そういえば家のねえさんは何処へ行ったんだろう。」と、祖母はきょろきょろと室内を見渡し始めた。如何やらこの様子では祖母も本当に母の所在を知らない様だ。

 そこで私は2階に行こうとしたが、一寸一寸と、伯父から制された。

「そっちには行っていないよ。」

「君のお母さんはね。」

私が今2階から降りて来たからね。その時にはもうここに君のお母さんは居なかったからね。

 そう伯父が言うと、すかさずこの伯父の言葉に応える合いの手の様に、「こっちにもいませんよ。」「玄関には来ていませんからね。」と、伯父の連れ合いの伯母の声が表側から掛かった。伯母は玄関に回ったようだ。この瞬間、そうかと私は理解した。伯母がこの部屋から消えた理由だ。

 この部屋で先程見た伯母は、部屋を出て玄関へ回ったのだ。伯母が部屋から姿を消した後に、階上から伯父がここ迄降りて来たのだ。伯父夫婦が一ヶ所にいないで別々にいるものだから、私は彼等夫婦を見間違えたと思ったのだ。こう考えて来ると、私は何だか伯父夫婦を責めたい気分になった。

 「夫婦仲良く!。」

一緒にいてね。そんな言葉を如何にも捨て台詞の様にその場に残して、「お母さん、何処にいるの?。」と、私は戸が開いている座敷に飛び込んで行った。

 「誰に言ったんだと思う。」

 伯父の恥ずかしそうな声が祖母に注がれるのが私の背後から聞こえた。祖母は、はは…、ねえさんだろうと半笑いで答えている。すると伯父は、よく言われるのだ、私にじゃないか、と、照れたように、また嬉しそうに話しをしている。

 誰もいない座敷の中に入った私だった。当てが外れて階段を振り返ると、祖母が判然としない表情を浮かべて自分の息子の顔を見上げているのが見えた。すると、こちらに背を向けていた伯父が、八つ当たりかしら、あの子人に八つ当たりするような子なの?、と、自分の母に小声で問いかけている声が聞こえて来た。


今日の思い出を振り返って見る

2020-02-21 21:49:38 | 日記
 
ティー・タイム 5

 今までの続編のような感じで「ティー・タイム 5」に行きます。 祖父の話が出たところで、祖父母の話です。過去帳の整理をしていただけに、我が家のお墓はかなり古く、菩提寺では周囲の......
 

 今日は良いお天気でした。昨日から風邪を引いたようです。微熱が有り喉が少々エヘン虫です。イガイガした感じです。早く良くなるといいなぁ。隣県でも新型コロナの患者が出たそうです。こっちにも、来ていりるんじゃないかと心配です。暫くイベント等、人の集まる所へは行かない様にしたいと思います。