「駄目だよお父さん。万引きは立派な犯罪だよ」
「ああ知ってるよ。わざとやねん」
「まだあるんじゃない。あるなら全部出して」
「あるで。ポケットに酒もあんねん」
「自慢じゃないんだから。あったらよくないんだからね」
「わかってるで。わかった上でやってんねんから」
「駄目だよ。やったら駄目だからお父さん」
「そうや。駄目や。知ってんねん俺」
「わかってるならやめないと。そうでしょ」
「そうやで。それをあえてやってんねん」
「何なの? 開き直ってんの。初めてじゃないね」
「そうや。いつものことやで。ライフワークや」
「いつもやってるの?」
「いつもやってる」
「駄目だよ。いい歳なんだから」
「朝のルーティーンやねん」
「ルーティーンってそういうのじゃないでしょ」
「それをあえてやってんねん」
「あえてつけても駄目なものは駄目だよ」
「そうや。駄目やで」
「お父さん。全く反省の色がないね」
「そうや。あえてせーへんねん」
「じゃあもう警察呼ぶよ。だいぶ悪質だからね」
「警察か。呼べ呼べ!」
「本当に呼ぶからね」
「おー呼べ! そのためにやってんねん」
「どういうこと? 噛み合わないね」
「どういうことやねん」
「初めてだよ。こういうのは」
「いつもやってんねん」
「すぐ来るからね。その態度まずいよ」
「来たらええねん」
「反省しないと駄目だから」
「あえて駄目やねん」
「はい。もう来たよ」
「おー、そうか」
「この人、常習みたいで……」
「来たか、お前たち」
「課長。お疲れさまです」
「課長?」
「店長。おつかれさん。見事な取り調べやで」
「では、これは……」
「おとり捜査やねん」
「はあ?」
「ご協力感謝します!」
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