眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

さよならの残像

2019-02-06 06:59:30 | 自分探しの迷子

 クリスマスの折句を求めてトナカイたちが検索の窓を叩いている。12月の付き人のように、みんなその時ばかりは熱っぽいのだけど。サンタが煙突をすぎて真っ黒に焦げたチキンをナイフで切り刻んだ後には、もう何もなかったみたいになる。元の静寂が帰ってきて、微かに積もった雪もすぐに溶けて、道の上には無数の手袋が捨てられている。誰かの指先にまで深くはまっていたのは、どれくらい……。冷え切った夜にだけ、頼りにされて。バイトA。私は使い捨ての手袋みたいだった。12月のある一日だけ頼りにされた。それまでの時間を問うものは誰もいません。地の底に沈んでいても、月の裏側に隠れていても、どうでもよくて、ただその時ばかりは私を頼りにするのです。私は白い風のマスクなのでした。そして、来るべき時に備えて、俺はスイングを欠かさない。
 俺は代打の切り札なのだ。切り札だからと自分に言い聞かせる。暗示にかけることも俺の切り札なのだ。俺は切り札として、日々の素振りを欠かさない。出番がいつになるか俺は知らない。来ないのかもしれない。切り札とはそういうものだ。俺は暗示にかかっている。それが俺の切り札だ。俺はいつだってその時に備えている。その時に呼ばれたら、期待に応えられるように。俺の準備はいつだって整っている。俺は陰の努力を惜しまない。俺は切り札の暗示を怠らない。陰は俺の切り札だ。陰こそが俺の友達だ。まるであの闇の中に落ちた手袋のように。さよならの途中で時が止まったように。
 その手はいつも道の上に残っている。さようなら。じゃあ、またね。君は右手。僕の左手。また、明日。また、会いましょう。12月の熱狂はすぐに醒めてしまう。冬の頼りはすぐに溶けてしまう。みんなすぐに投げ出してしまう。そこにもあそこにも。僕の足下にも置き去りになった手の跡がある。誰がそれをすくいとるの。誰がそれを拾い上げるの。僕はもう忘れている。自分が繰り返してきた過ちを。いくつかあったさよならを。そこにある。ここにある。向こうにある。今もある。君の足下にも。

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