城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

24年振り返り・本 24.12.28

2024-12-28 19:12:38 | 面白い本はないか
◯新書
 今年も新書をたくさん読んできた。比較的一般向けにわかりやすく書いてあるし、200~300ページくらいなので一日か二日で読むことができる。出版不況にもかかわらず新書を出す出版社が増えてきている。

 今年読んだ新書の数を数えてみた。全部で109冊。出版社毎、読んだ本の数(5冊以上)で並べてみた。
  ちくま新書19冊、中公新書16冊、岩波新書16冊、講談社現代新書13冊、朝日新書10冊、新潮新書5冊、PHP新書5冊

 新書は最近出版されたものを読むことが多い。岩波や中公、講談社等は毎月かなりの数の新書を出すので助かる。ちなみに揖斐川図書館は全ての岩波新書が一箇所に蔵書されているので、過去に出版された本の現物を見ることができる。

◯小説
 昨年あたりから小説をすこしづつ読み始めた。2022年リービ英雄、村上春樹、23年葉室麟、藤沢周平、吉村昭、そして今年は葉室麟(8冊)、藤沢周平、浅田次郎、諸田玲子(8冊)などの時代小説を読んだ。かわったところでは、カズオ・イシグロの「日の名残り」「夜想曲集」「わたしを離さないで」、シャン・サ「碁を打つ女」。そして医者である夏川草介の「神様のカルテ」「スピノザの診察室」を楽しく読んだ。
 ※「碁を打つ女」は日中戦争の時代の話で以下の「戦場のカント」と関連がある

 昨日藤沢周平の「よろずや平四郎活人劇(上・下)」を読んだ。いつもながらの江戸の町の描写が細かく、特に橋がやたらと出てくる。夫婦げんか、もめ事などの仲裁を生業とする旗本の四男坊、剣は著者の他の作品同様にやたらと強いが無闇に殺めはしない。喧嘩両成敗のように最後はもめ事をお金で決着させる。そしてかつての許嫁と最後に結ばれる大団円がある。



◯「戦場のカント」と「<悪の凡庸さ>を問い直す」

 ここから、少し硬めの本のお話となる。揖斐川図書館で今月新刊の石川求「戦場のカント 加害の自覚と永遠平和」を見つけ(ときたま硬めの本がある)、早速読んだ。カントの思想には詳しくないが、ここで述べられていることのおよそは理解出来た。


 日中戦争(アジア太平洋戦争)が終わり、敗戦国となり、最初はシベリアに抑留され、後に中国の憮順戦犯管理所に送られた1000人の元兵士たち(ソ連と中国での抑留は11年間)の証言の記録がこの本の一つのテーマとなっている。この中に和辻哲郎のもとでカントについて学んだ兵士がいた。彼は部下に命じて捕虜を処刑した。彼以外にも多くの兵士が三光作戦(焼き尽くし、殺し尽くし、奪い尽くす)を戦場の最前線で実行した。彼らは供述書を書くように管理所の職員から言われ、提出するが書き直すよう求められる。職員から言われたことは、加害者側から見た供述ではなく被害者側からみた供述を書くよう言われる。すなわち相手の立場に立って(殺された者、その家族の立場)供述するよう示唆される。人間として備わるべき良心を管理所での生活の中で取り戻し、反省する。中には罪を認めて処刑を望む者も出てくるが、彼らは収容が終わると誰一人戦犯としての罪に問われることなしに日本に返される。しかし、彼らは中国(共産党)に洗脳されていると非難する。

※日本に帰還した抑留者たちは、1957年に「中国帰還者連絡会」略称「中帰連」を結成。会員資格は「中国を侵略して、中国の寛大政策により帰国した者」とした。731部隊・南京事件・強制連行について積極的に証言した。89年8月15日にNHKで放送された「戦犯たちの告白ー憮順・太原戦犯管理所1062人の手記で知名度を得た。中帰連は2002年に解散(会員が全員死亡したため)。

 日本人はすぐに謝るが、残念ながらそれは被害者の心に届かない。

 偶然であるが、この本の前に田野大輔他「<悪の凡庸さ>を問い直す」を読んだ。これは哲学者のハンナ・アーレントがナチのアイヒマンの裁判を見て書いた「エルサレムのアイヒマン 悪の凡庸さについての報告」にある「悪の凡庸さ」という言葉が一般に間違って解釈されているのではないかというのである。アイヒマンは、上からの命令を忠実に実行しただけだと主張する。これをアーレントは凡庸と表現したと。ところが、アイヒマンはユダヤ人を収容所に送る手段について自ら積極的に行動し、アルゼンチンでの逃亡生活でも自分が中心となって虐殺に関わったと同じナチの逃亡者に主張している。アーレントも彼は他人の立場に立って物事を考えることができないと述べている。本では誤解されないために凡庸ではなく浅薄と言い換えた方が良いとの意見もある。

 ドイツでは国は日本よりある意味上手に謝罪した。その意味はナチに関与した者は戦後も裁かれることなく残り、また国民(ナチ政権を歓迎した)の個々は謝罪していない。日本ばかりでなくどこの国でも加害の事実を認めることはとても勇気のいることだし、場合によってはそれを認めない国民(これの方が多数かもしれない)からバッシングされる。

 整理が出来ないまま、まとまりがないことを書いてしまった。






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