醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  191号   聖海(白井一道)

2016-01-26 14:53:04 | 随筆・小説
 
   憲法とは何--たまには政治の話でも--(4)

侘輔 今日は自・公政権による憲法改正の手法について考えてみようと思うんだ。どうかな。
呑助 諦めましたよ。付き合いますよ。短くお願いします。
侘助 自民党副総裁の麻生太郎氏は「わーわー騒がないで。喧噪のなかで決めてほしくない」と言っている。
呑助 静かに自民党憲法草案を可決したいということなんですね。
侘助 そうなんだろうな。憲法改正反対の騒々しい喧噪の中で強行採決などという手法は採りたくないということなんじゃないかな。
呑助 「民主主義ってなんだ」と若者たちの声がとどいてくるような場所で自民党の憲法改正案を可決したくないということですね。。
侘助 保守系政治家が良く口にする言葉は粛々と可決したいという事だと思うね。粛々と可決されそうもないからそう言うんだろうね。
呑助 そんな粛々と可決する手法なんてあるんですかね。
侘助 麻生太郎氏はその秘策があると仲間内で話したようなんだ。
呑助 麻生さんって、なかなか利口なんですね。ずる賢い人なんですね。
侘助 「ワイマール憲法はある日気づいたら、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」と麻生氏は発言したようなんだ。
呑助 ワイマール憲法というのは何なんですか。
侘助 第一次世界大戦はどのような終わり方をしたのか、ノミちゃん、知っているかい。
呑助 ドイツに革命が起こったんでしたっけ。
侘助 そうなんだ。敗戦国ドイツはワイマールで憲法制定議会を開き、そこで作られた憲法をワイマール憲法というんだ。
呑助 思い出しましたよ。その憲法には社会権などが規定されていたんでしたよね。
侘助 そうなんだ。当時、最も民主的な憲法だと言われた憲法をナチス・ヒトラーは一夜にして無効にすることに成功したんだ。大きな騒ぎにはなったがね。
呑助 ヒトラーは何をしたんですか。
侘助 国会議事堂に放火したんだ。放火犯は共産党だと言ってね。非常事態を宣言した。
呑助 このドイツの手口に学んだらどうかと麻生氏は言ったんですね。
侘助 ヒトラーは共産党議員を逮捕し、刑務所に収監した。
呑助 本当に共産党議員が国会議事堂に放火したんですか。
侘助 裁判の結果は共産党議員による放火ではないということが判明した。
呑助 これは謀略だったんですね。
侘助 そうだね。非常事態を宣言し、全権委任法という法律を可決し、首相であったヒトラーは独裁権を得て、実質的にワイマール憲法を無効にしてしまったんだ。確かに「わーわー騒ぐ、喧噪の中で」憲法改正のようなことを一切しないで、実質的な憲法改正を実現したんだ。
呑助 非常事態宣言とは、凄いことができるんですね。
侘助 恐ろしいね。大災害やテロが起きたら、非常事態宣言ができる。もっともらしいからね。これが自・公の狙いかもしれない。国家緊急権を発動し、実質的な現憲法を無視する。この手口を使おうとしている。片山さつき自民党議員は国家緊急権の必要性を参議院で自民党を代表して総理に質問していたからね。さらに石破議員はテレビで国家緊急権の必要性を説いていたよ。