今、私たちはどのような時代を生きているのか
今、私たちはどのような社会に生きているのか。グレアム・アリソン、ハーバード大学教授が『米中戦争前夜』という本を書きました。この本が日本の政治家や安倍政権に大きな影響を与えています。政治家だけでなく、マスコミ、知識人に大きな影響を与えています。新聞やテレビにも大きな影響を与えています。その結果、日本は国防のためアメリカから防衛装備品を爆買いしています。中国の脅威を煽る一方で中国恐れるに足らずという言論が流布しています。中国防衛費の増大を主張する一方で中国経済の減速を宣伝しています。アメリカが中国を打ち負かす。日本は安全だという宣伝です。しかしこの宣伝は本当でしょうか。
今から43年前の、1985年西ドイツの首都ボンでワイツゼッカー西ドイツ大統領は議会演説をしました。その中で「歴史に目を閉ざす者は、現在にも盲目になる」と発言しました。この演説は世界的に有名になりました。
アリソン先生もまた歴史を紐解いています。古代ギリシア世界の覇権を争ったペロポネソス戦争について述べています。東の大国ぺルシア帝国をギリシアポリス連合軍が打ち破ったことによってアテネの勢力が拡大するとギリシアポリス世界の覇者、スパルタは覇権が失われるのではないかという不安がペロポネソス戦争を引き起こした。このことをアリソン先生は「ツキジデスの罠」と命名しました。ツキジデスとは『戦史』という著作の中でペロポネソス戦争を書いた人です。結論を言うと30年間スパルタとアテネは戦い、ギリシア世界は北方の民、アレキサンダー大王によって滅ぼされてしまいます。「ツキジデスの罠」に嵌るとアメリカも中国も滅び、世界核戦争によって人類が滅びるのかもしれません。
アリソン先生は今から二千年以上前から説き起こしていますが私は歴史上初めての国際体制が成立したと言われているウィーン体制について考えてみたい。ウィーン体制とはナポレオン戦争後成立した国際体制でした。この国際体制を成立させたものは何かというとそれはヨーロッパ諸国に広がる自由主義、国民主義でした。ヨーロッパ諸国民衆が求める自由主義、国民主義を抑圧し、封建的な貴族の支配体制を維持するためにヨーロッパ諸国の支配者たちが力を合わせてヨーロッパ諸国国民を抑圧する国際体制がウィーン体制でした。しかしこのウィーン体制はドイツにおける1848年革命によって打倒されてしまいました。歴史の大きな流れを押し止めることはできないのです。
現代世界を考えてみたいと思います。20世紀は世界戦争と革命の世紀でした。第一次世界大戦とロシア革命、第二次世界大戦と中国革命、1960年はアフリカの年、植民地独立戦争勝利の年でした。第三次世界大戦とも言うべき米ソ冷戦の時代でした。この20世紀の歴史を顧みて言えることは何かというと、それは全世界国民、人民が声をあげて歌っている。「do not let me down」20世紀最大の世界的歌手ビートルズは全世界民衆、人民を代表して歌っている。私を殺さないで、私を落ち込ませないで、私をがっかりさせないで、私をいつまでもと。ジョン・レノンは全世界民衆の声を代表して歌っている。
ここに驚くべき事実がある。IMFの報告だ。2014年PPP購買力平価、GDP1位中国、2位EU、3位アメリカ、4位インド 5位日本
G7アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、日本のGDP総額よりE7中国、インド、ロシア、インドネシア、南アフリカ、トルコ、ブラジルのGDP総額の方が大きい。1950年、アメリカのGDPは世界の50%だった。2018年アメリカのGDPはおよそ世界の30%。このように進藤栄一筑波大名誉教授は発言している。2014年以来、アメリカと中国の実質的なGDPは広がるばかり、2024年には名目GDPにおいても中国がアメリカを追い抜くと予想されている。あと1、2年で中国の名目GDPはアメリカを追い抜くと予想する学者もいるようだ。
世界の趨勢はアメリカ、EU、日本の衰退が世界史の流れのようだ。それに対して中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカらのブリックスとインドネシア、トルコの台頭は押し止めることはできない。これが世界史の流れのようだ。
米中全面戦争はない。理性的なアメリカ軍部が負ける戦争をするはずがない。ただ同盟国を用いて米中代理戦争を仕掛ける危険性がある。避けてほしいことは、日本がアメリカの代理として韓国または北朝鮮と戦争することだ。