![]() | 大モンゴルの世界―陸と海の巨大帝国 (角川選書) |
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角川書店 |
平成4年6月30日 初版発行
著者は1952年、静岡県沼津市に生まれる。1974年京都大学文学部卒業。1979年同大学院文学研究科博士課程単位取得退学、京都大学人文科学研究所助手となる。1988年京都女子大学文学部専任講師、1989年助教授を経て、1992年から京都大学文学部助教授、1995年から教授、のちに京都大学大学院文学研究科教授。主要研究テーマはモンゴル時代史、中央ユーラシア史。日本におけるモンゴル史研究の第一人者である。
面白く読んだ本。
日本はその成り立ちから大きく大陸の影響を受けてきた。そう教えられるし形而上、形而下共にその痕跡だらけである。システムとしての水稲、漢字、漢音・呉音、呉服、仏教・・・。特に隋・唐には積極的に人を送り込み文物を享受した。その影響は大きく、それもありことさら中国の歴史を過大視する。
しかし中国の歴代の国々がやってきたことは中原とよばれる黄河中下流域にある平原の奪い合いに過ぎない。そこに興る国々の文化文明は世界とはいわなくてもユーラシア大陸の国々に大きな影響を与えたかというとそれは無かったと断言できるのではないか。まともにその影響を受けたのは日本だけだったといっても良いかもしれない。少なくとも世界史から見ればその影響は東アジア限定的だといえよう。逆に中国の歴代王朝は西からの文化文明の影響を大きく受けてきた。
例えば小麦、水車、車輪、宗教。現代文明の基礎となる文物を西方からユーラシア大陸の東の果ての地に伝えたのは誰なのか。それは大興安嶺山脈とアルタイ山脈にはさまれた広大なエリアに興る遊牧民国家群。それらはオアシス国家を取り込みながら匈奴、突厥、契丹とよばれる国家を造りペルシャまで領土を広げ後のモンゴル帝国に繋がる。東アジアの歴史を語る時、どうしても中国の文字資料に頼る為、それを残した中国の歴代王朝を過大評価しがちだし、その偏った内容に従いがちだが同時代にそれらの王朝と互角に対峙し、東ヨーロッパやロシアの成り立ちに大きな影響を与えた遊牧民国家の存在はもっと注目されても良いと思う。
ちなみに現在のトルコ共和国は突厥(Türk(テュルク))の建国を以って「トルコの建国」としているそうだ。
(2017年6月 西図書館)