投錨備忘録 - 暇つぶしに借りた本のメモを残すブログ

宮本常一 ちくま日本文学全集



宮本 常一 「宮本常一 ちくま日本文学全集」 筑摩書房

1993年5月20日第1刷発行

著者は1907年山口県大島生まれ。1981年没。働きながら師範学校を卒業。小学校の教師になる。上京して渋沢敬三の主宰するアケック・ミューゼアム(日本常民文化研究会の前身)に入る。独自の方法による宮本民俗学を生み出す。

宮本常一

筑摩書房

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歌垣がまだ日本に残っていた時代の話。そんなに古いことではない。つい最近の逞しくそしてちょっと切ない日本の近代の話。

この本に編集されているものは

 忘れられた日本人より
  対馬にて
  子供をさがす
  女の世間
  土佐源氏
  根田富五郎翁

 いそしむ人々より
  高野豆腐小屋 
  子に生きる

 海をひらいた人々より
  船の家
  すばらしい食べ方
  私のふるさと
  御一新のあとさき抄

 愛情は子供とともにより
  子供の世界
  萩の花


萩の花は著者の生まれてわずかで死んだ実子の話。泣ける。

蕎麦・里芋などの単食の話が面白い。単食とは一品だけの食事。例えばハマチだけを食べるとか、里芋だけを食べるとか、蕎麦だけを食べるとかそんな食事のこと。鯛茶漬けも同じ。食材が今ほど豊富でなく限られているばあいそうならざるをえない。それでもそれなりに贅沢で美味いものをいっぱい食べれるということは豊かで贅沢なんだ。私の経験では牡蠣を一斗缶に一杯買ってきて家族・親戚で食べたことがある。蝦蛄を一斗缶に一杯買ってきて塩茹でにして食べたこともある。豪快で美味くて大勢で食べると美味いし記憶にも鮮明に残る。贅沢な食べ方だったと思う。この本に載っている単食も仲間や客人が一同に会してのその土地の名物を使っての食事の風景だ。

近代日本の(山口県あたりに限られてはいるが)女性の生活習慣も面白い。

以下メモより

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単食のサンプル
 ソバ
 サトイモ
 鯛茶づけ
 田楽

杣人(そまびと)の食事 p226
 そまびと:山仕事をする人
 石焼き(味噌汁、米、アママス)

たくましく そして せつない 日本の近代の話

p329 侍の株を売るという行為もあった
   養子にして名義をゆずる
   本人は財産をもらい百姓・町人になる

p333 侍になれば楽ができるかといえばそうでもない
   何もない時代なら平々凡々
   浦賀のペリー騒動の時は出動を命ぜられたりもした
   村人からは普段は「タゴ担侍」とよばれている
   何しろ刀が使えないどころか字も読めない

p325-p342
   地侍について 面白い

p419 萩の花
   著者の生まれて50日で逝った第二子の話 泣ける

p33  歌垣
   対馬
   明治の終わりのころまで歌垣が残っていた
   
p46  世間を知らない娘は嫁のもらい手が無い
   娘は旅をした

p49  幼い子を遍路に預ける
   食べさせることができないほど貧しい

p53  若い娘はよく家から逃げ出した
   母親と示し合わせる事が多かった(p46参照)

p67 柿木問答
   著者の郷里

p208 味噌ブタ
   鹿児島県喜界島

p212 鯛の刺身
   対馬
   丼に刺身をいっぱいに盛り
   ゴマをすりつぶしたものをいれ
   醤油をたっぷりかける
   この刺身を熱い飯の上にのせ
   熱いお茶をかけ蓋をし
   わずかな時間をおいたのち食べる
   鯛茶漬け

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コメント一覧

k-74(投錨備忘録)
歌垣
司馬遼太郎が書けば遠い昔の日本の優雅な風俗になりますが、近代日本のそれはもっと俗っぽくなります。若い男女が歌謡を掛け合いで歌うのですが勝負事なんですね。勝った負けたが続いて興が乗ってくると最後は体を賭けあう。歌が上手いと良い思いをお互いにしたそうです。夜這いの習慣があった頃の話ですから、その辺はおおらかです。



今でも歌垣が残る中国南部では夜の闇の中で歌の掛け合いをするのですが、暗くて見えないことをいいことに、歌の上手い他人の歌をカセットテープに吹き込んで聞かせる輩がいるそうです。これは別の本に載っていたことですが・・・。
あら座
歌垣?
検索で見て初めて知りました。

いや、そのような歌の集まりがあったことは本で読んだ記憶がかすかにありますが。

これが日本文化は南アジア系である証拠とも言われているものですね。
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