昭和館で学ぶ『この世界の片隅に』
2018年7月21日〜9月9日
昭和館 3階特別企画展会場
こうの史代さんの漫画『この世界の片隅に』。
作者が登場人物の戦中・戦後の暮らしを描くにあたっての調査先の一つが昭和館。
東京メトロ九段下駅近くにあるその昭和館にて、『この世界の片隅に』との連携企画が開催されている。
本企画は、原作漫画のシーンと、そのシーンに描かれている当時の日用品などの実物や写真を並べて展示、見比べながら当時の暮らしを追体験する、というものである。
本企画の構成
プロローグ
1 家庭の暮らし
1)着る
2)食べる
3)住まう
4)楽しむ
2 銃後を支えた人々
1)地域と戦争
・学校
・婦人会と女子挺身隊
・隣組
・防諜
2)空襲への備え
・防空壕
・防空と避難
3 戦争がもたらしたもの
1)出征と帰還
・千人針
・出征の様子
・帰還
2)空襲のなかで
・本土への空襲
・空襲の被害
・伝単
4 戦争が終わって
1)終戦
2)食糧難
3)戦災孤児
エピローグ
本企画は入場無料(常設展示室6〜7階は有料)。
写真撮影不可。
出品目録と8ページのカラーパンフレットがもらえる。
漫画について初めて知ったこと
漫画の連載(漫画アクション・双葉社刊)は、昭和19年1月のエピソードが平成19年1月に連載というように、昭和と平成をシンクロさせながら、平成21年2月まで続けられたという。連載当時リアルタイムで読んでいたら、一層の臨場感があっただろうなあ。
愛国イロハカルタ
昭和18年に、日本少国民文化協会が政府などの後援を受けて制定。句は、26万を超える一般からの応募を含めて決められた。
こうの氏は、第23回(20年正月)にて、愛国イロハカルタの絵札を、作中の登場人物などにアレンジして描いている。
電化製品
漫画が描く時代、電気は全国的に普及していたらしいが、家庭にある電化製品は電灯とラジオくらいであったという。
漫画でも、灯火統制のシーンや、ラジオの前で聞く玉音放送のシーンが描かれている。
炊飯器や掃除機、洗濯機や冷蔵庫が出てくるのは約10年後、昭和30年頃以降のこと。漫画では、それらのなかった時代の、加えてモノ不足の時代の、炊事・洗濯・掃除・風呂焚きなど家事の様子が丁寧に描かれている。
筆写した教科書
実物展示。教科書が入手できないため、友だちから借りて、次に勉強する2、3ページ先までを親戚に筆写してもらい、紙ばさみで授業を受ける。すべて書き終わってから1冊の本として製本。すべて手描きで挿絵やページまでも写す。
美しい文字、美しい挿絵、そのレベルの高さに驚愕。どちらが本物の教科書で、どちらが筆写した教科書か区別できないくらい。
いろいろな実物や写真展示を見て、解説を読んで、原作漫画の場面を見て、作者の調査内容の漫画への反映力に感心するばかり。
『この世界の片隅に』は、2016年秋公開のアニメ映画がヒット。2018年夏のTBSの連続ドラマの放送。
そして2018年冬には 、2016年の映画に新作場面を30分追加した長尺版『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開予定である。