東京でカラヴァッジョ 日記

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チューリヒ美術館展(国立新美術館)【その2】

2014年10月26日 | 展覧会(西洋美術)

チューリヒ美術館展
2014年9月25日~12月15日
国立新美術館


 全74点の展示。お気に入り作品が多すぎるので、以下では、特に好みの部屋を追うこととする。


第1室:セガンティーニ

 いきなりセガンティーニの登場。スイス系から攻めてきたか。
 セガンティーニ2点の部屋。
 セガンティーニといえば、アルプスの風景を描いた明朗な作品をイメージするが、本展は象徴主義時代の作品2点で攻めてきた。
 2011年開催のセガンティーニ展で手薄だった象徴主義時代の作品。
 ≪虚栄≫は、2011年の回顧展でも出品。うれしい再会。緑の背景や蛇の描写を熱心に見る。
 ≪淫蕩な女たちへの懲罰≫は、酷寒の氷界での懲罰。代表作≪悪しき母たち≫をイメージさせる作品。
 最初の部屋の2点で既にヘビー級の満足をいただく。


第2室:モネ

 モネ4点。
 いずれも制作年が1885年以降。1860-80年頃を対象としたオルセー美術館展を意識した選定なのかなあ。

≪睡蓮の池、夕暮れ≫1916/22年
 モネ晩年の抽象表現主義的作品については、結構いろんな展覧会で観る機会があり、総じて私のお気に入り作品となっている。その頃モネは眼を悪くしていて、そのように見えていたのだとも言われることもあるが、実際はどうだったのだろう。

 本展出品作は、2m×6mの超大型作品。面積だけなら、オルセー美術館展≪草上の昼食≫に負けない。
 2カンバスに分かれているから移動可能な作品ではあるとはいえ、よくぞ日本に持ってきてくれました。チューリヒ美術館の本作を展示していた壁面は今どうなっているのだろう。

 題名通り、夕日が差し込む睡蓮の池の水面。夕暮れの池がこのように見えるのだろうか、と想像しつつ観る。チケットのスイス人(?)女性と同じような位置から眺めてみたりする。オランジュリー美術館の大作も観たくなってしまう。

≪陽のあたる積み藁≫1891年
 積み藁の連作は、30点描かれたらしい。
 本作は、「若き日のカンディンスキーに抽象絵画への啓示を与えたというエピソードで有名」な作品。


第4室:ホドラー
 
 スイスの国民画家ホドラー6点。

 ホドラーが気になったのは、随分昔、美術に興味を持ちはじめてすぐの頃、ベルン美術館所蔵の≪夜≫、≪昼≫、≪絶望せる魂≫、≪選ばれし者≫を知ったことによる。
 その後、スイスのアルプスを描いた作品を観る機会はあるが、象徴主義作品を見る機会はなく、非常に気になっているけれど、私の好みなのかどうか、はっきりさせることができない状況が続く。

 本展でついに象徴主義作品と対面する。

 象徴主義作品は2点。
≪真実、第二バージョン≫1903年
≪遠方からの歌≫1917年頃

 素晴らしくて、長く眺めることとなる。アルプスを描いた4作品も素敵である。
 この日をもって、ホドラー・ファンを名乗ることとする。


第5室:ナビ派

 ヴァロットン4点。
 三菱一号館美術館のヴァロットン展で、この系統の作品はなかったと思う次の2点に注目する。

≪日没、ヴィレルヴィル≫
 上から、オレンジ色の帯(空)、青い帯(海、夕日が映る)、ピンクの帯と黒の帯(浜辺)。
 何が描いてあるのか戸惑うことはない風景画だが、色の帯を連ねた絵画として楽しむ。 
≪アルプス高地、氷河、冠雪の峰々≫
 スイス・アルプスの氷河。こんな飛行機から見たような山の絵も描いたのですね。


第6室:ムンク

 ムンク4点。

 ≪冬の夜≫(1900年)。一般的にムンクに期待するイメージの作品はこの1点。
 他3点は、アルコール依存症の入院治療のあとの、長い晩年時代の作品。
 ≪ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士の肖像≫1923年は、チューリヒ美術館初代館長を描く。
 チューリヒ美術館は、1922年にムンクの大規模な個展を開催、その縁で、企画者であった館長を描いたらしい。チューリヒ美術館の歴史にとって、ムンクの個展の開催が重要な出来事であったことは理解したが、ムンクの画業にとってチューリヒ美術館での個展の開催は、どのように位置付けられるのだろうか。


第7室:表現主義

 ベックマン3点。

 ベックマンといえば、≪夜≫(1918-19年)。2009年Bunkamura開催の「20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代 ドイツ、ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館所蔵」展で観て、びっくりした作品。

 本展出品で、≪夜≫に制作年が近い作品は、≪マックス・レーガ-の肖像≫1917年。
 当時の有名な作曲家で、ベックマンとは面識はなく、その没後に美術コレクターから注文を受け、写真をもとに描かれたという。

 キルヒナー1点。
 1925/26年制作のスイス・ダボスを描いた作品。私が好む1910年代までの作品がないのは残念。

 バルラハ1点。
 2006年東京藝術大学大学美術館開催のバルラッハ展を思い出す。


第8室:ココシュカ

 ココシュカ5点。

 ココシュカといえば、バーゼル美術館所蔵の≪風の花嫁≫(1913年)。作曲家マーラーの未亡人アルマとの恋愛関係が絶頂期にあったときに描かれた作品である。

 ≪プットーとウサギのいる静物画≫1914年は、二人の先行きに陰りが出ていた頃に描かれた作品。
 筆致は≪風の花嫁≫と似ている感じだが、何が描かれているのかさっぱりわからない。
 解説によると、
 プットー:生まれるはずだった二人の間の子供、面立ちがアルマに似ている
 猫:アルマの顔で描かれている
 ウサギ:ココシュカ

 他4作品も、なんかすごいね。
 ≪モンタナの風景≫。スイス・アルプスの美しい風景が、どうしてこうなっちゃうのか。
 ならば、≪アデル・アスキアの肖像≫も、実際のモデルはたいへん魅力的な人であるに違いない(ロンドンで俳優・歌手・ダンサーとして活躍した人らしい)。


第12室:シャガール

 シャガール6点

≪窓から見えるブレア島≫1924年
 シャガールのキャラが一切出ない。
 題名通り、部屋の窓が開かれ、外の景色が見える、極めて普通の絵。
 それがシャガールの筆致で描かれると、これがまたいいんだなあ。

≪婚礼の光≫1945年。
 この絵については個人的に小さい想い出(絵の主題とは関係ありません)があって、今回観ることができたのはうれしい。


 割愛したゴッホ、セザンヌ、ルソー、クレー、キリコ、ダリ等もよい。
やはり、ドイツ・スイス系の画家の作品が、特に見応えがある。 



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