東京でカラヴァッジョ 日記

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絵巻マニア列伝 (サントリー美術館)

2017年04月02日 | 展覧会(日本美術)

絵巻マニア列伝
2017年3月29日~5月14日
サントリー美術館

 

    本展は、「パトロン」を切り口とする絵巻の展覧会。


   「物語」を切り口とする2012年の「お伽草子-この国は物語にあふれている」展とは、異なる味わいとなっている。

 

   前後期合わせ67点の出品。絵巻のほか、パトロンを語る文書資料の出品も多い。

 

   構成(パトロン)は、次のとおり。


序章   後白河院
(1127~92)

第1章   花園院
(1297〜1348)

第2章 後崇光院・後花園院 父子
(1372~1456、1419〜70)

第3章 三条西実隆
(1455〜1537)

第4章 足利将軍家
・第六代将軍足利義教
(1394〜1441)
・第九代将軍足利義尚
(1465〜89)
・第十二代将軍足利義晴
(1511〜50)

終章   松平定信
(1758〜1829)

 


   印象に残った作品。

 

《病草紙断簡》
平安時代(12世紀)

   《病草紙断簡》は、1巻の巻物であった16段と、これとは別に伝来した断簡5段の計21段分が残り、現在は各段ごとに分断され、各地に分蔵。

   本展には6点出品。私の訪問時は3点の展示。


重文《病草紙断簡 不眠の女》
サントリー美術館
通期出品

   

   女性4人部屋。他の女性たちが眠っている中で一人上半身を起こしてなすすべもない。

 

重文《病草紙断簡 頭のあがらない乞食法師》
九州国立博物館
4/10まで

   脊が曲がって前屈した姿勢の僧侶が錫杖を手に歩く。通行人らが眺めている。

 

《病草紙断簡 居眠りの男》
個人蔵
4/24まで

   執務中に眠り込んでいる男。当時から、気の問題、ではなく病と認識されていたということか。

 


重文《後三年合戦絵巻 巻中》
貞和3年(1347)
東京国立博物館
4/24まで

   戦闘での殺戮場面が公開。作品が劣化していなければ、正視に耐えない凄惨な場面。

 

【e国宝ウェブページより】
   後三年合戦とは、陸奥守源義家(八幡太郎)が、出羽の豪族清原氏一族内の争いに乗じこれを滅ぼした戦い。前九年の役に続き永保3年(1083)より起こり、寛治元年(1087)、義家が清原家衡らの拠点・金沢柵を陥落し、奥州を平定した。
   本作は貞和3年(1347)の基準作で、後三年合戦に取材した現存最古の絵巻。現在3巻が残るが、当初は全6巻で完結していたと考えられており、合戦前半の場面は失われている。この失われた詞書は比叡山の学僧玄慧(げんえ)『奥州後三年記』などによって補うことができる。
   詞書は忠実に絵画化されており、反復する同一構図で戦闘や殺戮は凄惨さを増し、金沢柵が次第に陥落していく様子が伝えられる。

 

伴大納言絵巻 巻上 〔複製〕
平安時代(12世紀)
出光美術館

   伴大納言絵巻全3巻は、昨年、所蔵者である出光美術館で展覧会が開催されたところ。

   本展では、複製の出品。前後期で場面替あり。

 


《福富物語》2巻
室町時代(15世紀)
京都・春浦院

   福富物語絵巻は、幾つかのバージョンを見たことがある。本作は、2012年の展覧会にも出品されたバージョン。

   放屁芸で裕福になる者。満ち足りた夫婦の様子が印象的。
   一方、その成功を羨んだ妻にそそのかされ、その教えを乞うた男。嘘を教えられたとは知らず、勇んで芸を披露しに向かうが・・・。

   後期に場面替。

 

《法師物語絵巻》
室町時代(15世紀)
個人蔵

   本作は、2012年の展覧会にも出品。

   法師と小僧を中心とする短編説話を集めた絵巻。訪問時は4話の公開。後期に場面替。


1)卵を手にする和尚。小僧にこれは白茄子だ言いくるめる。→早朝、鶏が鳴くと、小僧は、白茄子の親が鳴いている、と和尚を叩き起こす。


2)尼にもてなされた和尚。→帰って小僧に「僧膳はなかった」と嘘をつくが、小僧から口元に米粒がついていることを指摘される。(米粒の白さ!)


3)炊く米の量を細かく指で指示する和尚。ある日指示の際に転び、両手両足の指を開いてしまう。→大量に炊かれる米。(米の量!その白さ!)


4)道に落ちているものは拾うな、踏みつけろ、と馬に乗る和尚から言われたお付きの小僧。→言われたとおり、小僧は、落馬した和尚を踏みつける。

 


《地蔵堂草紙絵巻》
室町時代(15世紀)
個人蔵

   本作は、2012年の展覧会にも出品。

   地蔵堂で写経を行う僧のところに、美女が経を聴聞しに訪れる。→僧は次第に恋慕の情が募り告白する。女は如法経の功を終えればそれを受け入れると約束する。満願の日を迎える。→僧は女に従い、海底に向かう。→海底の宮殿で夢心地の月日を過ごす。ある日、女の裾から蛇の尾のようなものが見え、ここが龍宮であることを悟る。→故郷に帰りたいと女に告げる。女は僧に地蔵堂での写経を見せる。早く修行を終えて女と寝たい、と書かれていた。女は僧に戻ったのち再び写経を行うよう諭す。→僧は女の従者に付き添われて帰還する。

までの公開。後期に場面替。

 

《蒙古襲来絵詞 後巻》
鎌倉時代 13世紀
宮内庁三の丸尚蔵館
4/17まで

(戦闘場面ではなく、)志賀島に向けて出陣する、大軍の騎馬武者が長く描かれた場面が公開。

 


   後期も訪問したい。4/26以降か。



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