発掘・植竹邦良
ニッポンの戦後を映す夢想空間
2023年5月20日〜7月9日
府中市美術館
虚無僧、電車、人体の一部、破裂したザクロ…
奇妙なモチーフが増殖し、入り乱れながら交錯する、植竹邦良(1928-2013)の絵画。
その底流には、戦後ニッポンの政治、社会、都市開発といった世相が密かに編み込まれており、モチーフへの執着を感じる徹底した細密描写は、現代のコンピュータグラフィックを見慣れた目に異様な迫力をもって迫ります。
府中で制作を続けた知られざる画家の全貌を初紹介します。
府中ゆかりの画家。
東京出身で、26歳から府中に住む。
2004年に府中市美術館に油彩6点を寄贈。
本展は、その6点を軸として、主に大型の油彩作品計22点、スケッチ20点が展示される。
プラス、接点のあった画家6名11点。
【本展の構成】
1 焼跡からはじまる
2 闘争から深まる幻想
特集展示 1960前後の「前衛」
3 地形と都市のダイナリズム
大画面に、画家独自のモチーフが濃密・細密な描き込みをもって、画家独自の幻想世界が展開される。
《人形の行く夢》
1969年、府中市美術館
《6月の手記》1960年、府中市美術館 は、安保闘争の挫折を主題とする。
本作は、東大学園紛争を主題としているとのこと。
《最終虚無僧》
1974年、府中市美術館
「虚無僧」は、当初は学園紛争で格闘する覆面姿の学生たちを表していたが、繰り返し描くうちにその意味を失い、画家独自のモチーフ化したという。
《構築記》
1997年、府中市美術館
画業後期は、地図や地形模型、あるいは都市や建築物にモチーフを求める。
本作は、溝の口の複合施設ビル建設の観察をもとに制作したのだという。
画家独自のモチーフ、濃密・細密な描き込み、画家独自の世界観、あまりにも濃厚。
私的に気になったのは、《案内記・日章旗篇》1988年。入り乱れる日の丸。
あと、特集展示の桂川寛《それでも彼らは行く》1960年、豊島区寄託。描かれているのは傷痍軍人? 安保闘争を主題としているようだ。
常設展も、本展と関連させ、「戦後のリアルと幻想」と題し、昭和20〜30年代制作を中心とする作品が展示される。昭和18年制作の戦闘中の兵士を描いた作品1点が含まれる。香月泰男も1点ある。