失踪宣告、同時死亡の推定
震災から1か月余りが経過しました、被災地の状況はTV、新聞などのマスコミを通じて私たちが知り得て想像をした状況をはるかに越えたものとなっているのではないかと思います。
先日新聞で、労災法、年金関係法が規定している船舶や航空機による事故で生死が3ヶ月間不明の場合、その事故の日に死亡したとものと推定する、という規定を災害によるものを含む旨の改正された記事が載っていました。
今までは、災害による生死不明は民法の規定(30条第2項特別失踪)により災害のときから1年間明らかでないとき利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪の宣告をし、宣告がされると災害等の危難が去ったときに死亡したものとみなされるとなっており、災害の場合は1年間経過しなければ労災法、年金関係法の適用はないことになるのでこれに対応する為の改正ということになります。
相続関係については、災害による生死不明によるときは同様に民法(30条第2項特別失踪)が適用され1年経過後に死亡の宣告によることとなると思われますが、これと同時に民法の同時死亡の推定(民法32条の2)適用の問題が発生する可能性があるのではないかと思います。
民法では、“数人の者が死亡した場合において、そのうちの1人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は同時に死亡したものと推定する。”
となっています、事故や災害で複数の人が死亡した場合、救出後死亡した等の反証が明確でない場合は同時に死亡したものと推定されるということです。
同時に死亡したことが推定されると、相続人が相続の開始以前に死亡したこととなり、その相続人は相続権がないこととなります(民法887条第2項)
航空機事故や自動車事故で考えられるケースが多いのですが、これが適用された場合とそうでない場合では相続関係に影響がでてきます。
例:父(甲)と子(A)、子(B)のケースで(甲)と(A)が危難に遭遇した場合で父甲の財産について
同時死亡と推定された場合:
・ (A)は(甲)の財産を相続せず(B)のみが相続人となる。(ただし、(A)に
子があればその子が(A)の相続分を代襲相続することができます。)
・ (A)の相続は(甲)の相続と関係なく開始される。
同時死亡と推定されない場合:
・ (A)・(B)共に(甲)の相続人となる。
(甲)の相続終了後、(甲)からの相続分を含む(A)についての相続開始となる。