●Chinese Premier Pledges Help for the Rural Poor, Playing Down Growth of Military Spending
BEIJING, Sunday, March 5 - China's new "historic task" is to narrow the politically volatile gap between rich and poor and enliven the economy of the country's vast but still impoverished rural areas, Prime Minister Wen Jiabao said in a national address Sunday morning.
Setting out the government's priorities in China's equivalent of the State of the Union address, Mr. Wen said officials must find a way to ensure that the two-thirds of China's 1.3 billion people who live in rural areas share the prosperity that has flowed mostly to coastal and urban regions. ・・・
The divide between urban and rural incomes, one of the largest such disparities in the world, is viewed by the government as a pivotal factor in rising social unrest that has threatened stability in the one-party state. Critics say that inequality itself does not provoke unrest, and that the government has not done enough to reduce the underlying causes of social discontent, including corruption, land seizures, pollution and labor abuses.・・・
Although it received only passing attention in Mr. Wen's report, China also announced over the weekend that it would increase military spending this year at a higher rate than the increase in rural investment. The official military budget will grow 14.7 percent to $35.3 billion, continuing a long streak of double-digit increases in outlays for its 2.5 million-man armed forces. ・・・
(By JOSEPH KAHN:New York Times, Mar. 5, 2006:224 words)
■Vocabulary&Idiom
premier首相, pledge 誓約する
play down もみけす/軽く扱う, historic 歴史的に重要な
volatile 爆発寸前の, enliven 活気づける
impoverished 貧困に喘ぐ(impoverish「貧乏にする」の過去分詞から)
prime minister 首相, set out 問題等を整理して述べる
equivalent ~と同等のもの, prosperity 経済の繁栄
the State of the Union (address) アメリカ大統領の一般教書(演説)
divide 格差, disparity 不均衡/不当な差異
pivotal 状況の変化に大いに関係のある, unrest 不安定さ
stability 安定性, one-party state 一党独裁国家
critic 評論家/批評家(日本語の「評論家」ではなく当該分野の専門家)
provoke 怒らせる/~(激情)を引き起こす
discontent 不満, corruption 汚職
abuse 濫用/(性的や児童の)虐待
military spending(budget) 国防費(国防予算)
armed forces (陸海空の)軍隊
■Comment
第1パラグラフ、主語+述語動詞の "China's new "historic task" is”を受ける補語は、①to narrow the politically ・・・、②(to)enliven the economy ・・・rural areasの二つです。ポイントは、「gap between rich and poor and enliven the economy」という二つのandが示す文の構造を見失わないこと。TOEIC860点前後の中上級者の方でも、慌てていれば一読しただけでは見落としかねない箇所だと思います。
言うまでもないことですが、前のandは「between A and B」のand、そして、後ろは単純な等位接続詞のandです。そう、あの「A, B, and C」「A, B, C, or D」の等位接続詞が作る並列のパターン。
TOEOCやTOEFLでは、等位接続詞を使って3個以上の要素が羅列される場合には、大抵、最後の要素の前は<カンマ+等位接続詞>になりますが、2個の要素の場合にはカンマがないケースが普通です。
本文テクストを読解する場合、「between A and B」の構文の知識と「enlivenには「~を元気にする/活気づける」という意味の他動詞の機能がある」という語法の知識が重要なことは当然ですが、「between A and B」さえ知っていればenlivenの語法(といいますかcollocationalな知識)がなくとも、”the economy”が「冠詞+名詞」なのだから文の構造は逆算できます。
・”the economy”は「冠詞+名詞」→
・enlivenは述語動詞→
・enlivenの前のandは等位接続詞のandだ!→
・ならば、ここは「A and B」の構文♪
まさか、TOEIC等の本試験中にこんなこと考えていたら時間はいくらあっても足りません。しかし、逆に日々の英語の学習の際には(2~3日に1回、1センテンスづつでもいいですから)徹底的に文法的に英文を分析説明してみることもお勧めします。多読とは違う意味で英文を読む基礎体力がつきますから。
■試訳
●中国の首相、国防費から注意をそらせつつ地方の貧困救済を誓約
北京、3月5日の日曜日-中国が現在直面している「歴史的に重要な課題」は、政治的な不安定要因にまでなっている貧富の差の縮小、そして、広大無比かつ今なお貧困に喘いでいるこの国の地方経済を活気づかせることである。日曜日の午前中、全国民に向けた演説の中で温家宝首相はこう述べた。
中国では(アメリカ合衆国の)一般教書演説に相当する演説の中でも政府施策の優先順位を整理しつつ、温首相はこう語りかけた。13億の中国の人口の三分の二が地方で生活を営んでおり、他方、経済的繁栄の成果はその大部分が沿岸地域や都市部に流入しているではないか。では、どのようにすれば地方に住む中国国民にも経済的繁栄の果実を行き渡らせることができるか、その方法を見出すことが行政を担当する者の責務である、と。・・・
都市部と地方との所得格差。世界的にも稀なほど中国のそれは大きな不均衡なのだけれども、この所得格差はこの一党独裁国家の安定を脅かし、社会秩序の解体に導く端緒にして、かつ、決定的な要因になりかねないと中国の共産党指導者は見ている。この問題の専門家は、しかし、不平等自体が社会不安を引き起こす要因ではないと述べている。むしろ、汚職・土地略奪・公害・労働力の不当な使用を含むこの中国社会に伏在する社会的不満の原因を逓減する施策を中共政府は十分には実施してこなかったことが問題であると専門家は見る。・・・
温首相の報告演説の中ではあまり注目されなかったことではあるけれど、今週末にわたり中国は今年も国防費を増額する旨明らかにした。それは、地方に対する投資の延び幅などよりも高い比率の増額であり、中国の公式の国防予算は(前年度比)14.7%増え353億ドルに達するようになる。これにより、250万人の軍隊をまかなうその支出は長らく二桁の予算規模拡大が続くことになる。・・・
■感想&感慨
本文テクストの内容に関しましては、この姉妹BLOGの私達のエントリー記事も参照していただければ嬉しいと思います。
・中国政府による農村地域の貧困解消策の失敗は必至☆海外報道紹介
ところで、本文テクストが取り上げている「中国の全国人民代表大会」や東シナ海の海底油田開発を巡る日中交渉もからめてか、最近、中国のプレゼンスを強調して「アジアでの日本の孤立」を説く言論が喧しいと思います。
これは日本の新聞・TVだけではなく米国や英国のメディアでもそうです。確かに、中国は昨年、2005年には日本を抜いて世界最大の外貨準備高を誇る国になりました(8,379億ドル。香港を含む。尚、日本は8,340億ドル)。この背景には人民元レート維持のために中国当局が必至にドル買いの市場介入を行った結果があるにせよ、それは逆に言えば、そうでもしなければアメリカというか世界から人民元レートの大幅な切り上げを迫られるほど輸出が好調ということですからね。正に、今は<中国の時代>なのかもしれない。
しかし、貿易好調なこともあり国際収支の改善のために外資導入をセーブしているとはいえ、10億余の人口を持つ国が、
(1)70年代の日本のように貿易依存のマクロ経済政策を取っていること
(2)中国当局の発表を誰も信用しないほど多額の不良債権を中国の金融機関が既に抱えていることは何を意味するでしょうか?
簡単です。これを世間では<バブル経済>と呼ぶのではないですか(笑)。しかも、中国は高付加価値商品分野での国際競争力をいまだに持っておらず、また、中国の富の8割は人口の2割が住む沿海エリアで産まれ使われているらしい。すなわち、中国は、現在、日本のバブル期にもなかった経済の歪さを抱えている。
私は中国が失敗すればいい。「ざまーみろ!」などとは思いません。
それは地政学的にも、中国が不安定になることは日本にとってそう愉快な話しではないと思うからです。そして、私が尊敬してやまない小平先生が引いた道筋は、多少の紆余曲折があるにせよ、数十年先には(現在の上げ底された造花ではなく)美しい華を咲かすだろうとも思っています。もちろん、その頃は、中国は「二つの中国」どころか中国4千年の歴史の中で何度かめの南北朝や三国志の時代に入っているかもしれませんけれども。
しかし、一つはっきりしていることは、中国が以下の7個の相互に連関した課題に早晩取り組まなければ世界経済の中での中国の居場所はなくなるだろうということです。
①人民元の切り上げ
②貿易依存体質から内需依存型経済への移行
③効率の劣る産業のリストラクチャリング
④金融機関の不良債権の処理
⑤業種や産業間での労働力のミスマッチ解消と富の再配分
⑥地域の所得不均衡の是正
⑦自然環境破壊の低減
そして、これら一連の改革には凄まじいインフレとデフレの同時進行が伴うに違いないでしょうが、いずれにせよこれらの経済・産業面での改革は、イデオロギーの改革を伴うでしょうし、結局、政治の改革も避けては通れない。そう素人考えながら私は思っています。本文テクストでも述べられている、汚職の廃絶などはこれらの経済改革を実行する上でも避けては通れない「政治」と「イデオロギー」の課題になるのではないでしょうか。
簡単な話しです。中国経済は(よって、中国の政治と社会は)これから、何度かの大波乱を経験するに違いないということ。最初に確実に訪れる波乱は(価格弾力性を加味しても)国際競争力のない商品輸出が限界に達する5年以内のことかもしれません。その場合、経済規模の面で小国たる韓国はその投資と貿易の多くを中国に振り向けているためもあり(★)中国の最初の大波乱と同時に水没してそれからむこう1ディケードから1ジェネレーションの間は再起不可能になると思います。
★中韓の貿易と投資
2003年の日中の貿易総額は約2000億ドル、直接投資は約30億ドル。これに対して同年度の中韓の貿易総額は632億ドルで韓国の対中投資は38億ドル。さて、2003年のGDPを見れば日本が4兆2941億ドルに対して韓国は6053億ドル(つまり、対中貿易比率は日本が4.6%なのに対して韓国は10.4%)。しかも、韓国は海外直接投資の半分以上を中国に投資している。
私は中国は大国であるがゆえにその波乱を結局は数十年かけて吸収し乗り越えると信じていますが、他方、中国がこれからも一本道で天に登りつめることもないだろう(=世界最大のGDPと一人当たりGDP、外貨準備高と貿易外収支額、ならびに「経済成長率-インフレ率」の同時達成はありえない)と予想します。
私は何が言いたいのか? 中国や韓国にケチをつけたいのか? いいえ違います。この記事でいいたいことはシンプル。それは、
中国経済はけして薔薇色ではないし、まして、その国内政治の動向は極めて不透明である。よって、中国は北朝鮮とは別の意味で東アジアの不安定要因ということ。そして、この認識を前提にした場合、韓国と中国ならびにテロ国家である北朝鮮という特定アジアの国々と軋轢があることをもって「日本が孤立している」とか「昇龍・中国に逆らう日本の前途は暗い」などと結論を出すのは誤りだろうということです。
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