英語と書評 de 海馬之玄関

KABU家のブログです
*コメントレスは当分ブログ友以外
原則免除にさせてください。

英語ができるとどんなことができる? gabaの広告を読んで考えてみよう

2005年09月30日 18時25分31秒 | 英語教育の話題


広い意味の「英語教育屋」である私は、語学スクールや海外の大学院が日本で運営しているプログラムの広告宣伝にはひごろから興味を持っています。今のお気に入りはgabaマンツーマン英会話の宣伝コピー。個別指導形態の英会話研修に特化しておられるgabaの広告にはいつも考えさせられています。

最近の「歯医者さんや美容院にはグループ治療とか集団ケアとかないのに、英会話スクールではいまだにグループレッスンが盛んなのはなぜでしょうか」という挑発的なコピーには笑ってしまいました。確かに、一人一人の実力も目的も到達目標も納期も違うのだから、このコピーを素直に読めば英会話のレッスンも(顧客側の予算とスクール側の投資リスク管理が折り合う限り)歯医者さんや美容院のようなマンツーマンの指導がベストだよな、と思わないではない。

このコピーには、しかし、落とし穴があると思います。簡単な話です。24時間×4週間の缶詰研修などのよほど特殊なケースを除いて、英会話スクールの受講生にとって、スクールに通っている時間は英会話や英語を学ぶ時間のごく一部でしかないということです。逆に言えば(仕事で長らく英語を使ってきた方や、すでにTOEICで860点を超える実力の方を除けば)、それがマンツーマン指導であるにせよスクールで受けるレッスン時間の少なくとも5~6倍の時間を学習とトレーニングに投下しない限り短期間での英会話力の大幅な向上は望めないだろうということです。

そうであれば、英会話スクールの意義と効果は、単に、どれくらい多く英語を聞いたり話したりできるかということだけで定まるものではなく、スクール以外の学習とトレーニングにいかに良いフィードバックがあるかによっても決まってくるのではないでしょうか。そして、このポイントが先程のgabaの広告ではスッポリと抜け落ちている。

基本的な語彙や文法知識の基礎、あるいは、初歩的なリスニング能力の獲得という研修の工程を(しかも、最早、日本語の母語話者:日本語脳になっている)アダルトの受講生が英語のネーティブスピーカーとのマンツーマンのレッスンで行うことは、コストパフォーマンスも学習のパフォーマンスも悪いと思います。考えてもみてください。英語の初級者が日本語でも知らない概念や日本語と異質な語の配列のルールを、英語で説明を受ける非効率さを! 

英語圏で24時間英語にどっぷり浸かり英語のシャワーを浴びるというケースでは(その場合でも、私はアダルトの初級者に「英語は英語で学ぼう」というダイレクトメソッドだけの研修は薦めませんけれど)、研修者の性格や目的・目標によってはひょっとすれば「量が質に転化」することもありえましょう。しかし、たかだか週に90分×10コマ以下のレッスンを日本で受講する想定では、「英語のネーティブスピーカーとのマンツーマンのレッスン」がすべての英会話研修志望者に対して万能薬ではないことは明らかだと私は思います。

加えて、先程も述べましたように英会話スクールには、英語を話し聞く経験値を積み重ねることの他に、スクール以外での学習とトレーニングへの良いフィードバックの効用も求められています;要は、学習の方法論の体得と学習を持続するモティベーションの提供も英会話スクールのコストと研修双方のパフォーマンスを決定する上で大きな要素でしょう。ならば、自分と同じ程度か少しレヴェルの低い他の受講生の下手な英語に対するインストラクターの指摘を第三者として見聞きすることの効用は一概に否定されることではない。これ「他人の振り見て我が振り直せ」の理屈です。

インストラクター1人生徒4人のグループレッスンでは、マンツーマンでのレッスンに比べれば、インストラクターと直接話せる時間は確かに4分の一になる。しかし、グループレッスンではその分コストが比較的廉価ですむだけでなく、「他人の振り見て我が振り直せ」による自分の不十分さを客観的に観察できる<気づきの契機>や自分に合った学習法を他人をモルモットにして自分でつかみ取る<獲得の契機>もあり(もちろん、これらの契機=チャンスをものにできること自体が研修者の資質と能力ではありますが)、少なくともグループレッスンがマンツーマンレッスンに比べて必ず劣るわけではないと思います。

換言します。率直に言えば、短期間で大幅な成果を出さなければならない方にとっては、英語圏での留学研修や特殊な4週~8週間の缶詰研修などを受講するしか他に道はないのかもしれません(尚、現在ある程度の実力をお持ちの方(例えば、長らく仕事で英語を使っておられる方やすでにTOEICで860点以上のスコアをお持ちの方)にコストと効果の両面でお薦めするのは、毎日、30分から1時間の電話での英会話です。退屈でシンドイですけれども、これ講師とスクールを選べば悪くないです)。この場合、グループレッスンと同様にマンツーマンレッスンでも研修が足りず、マンツーマンレッスンは皮肉なことにその高いコストとゆえに(くどいですが、成果がでないことでは同じなのだから)、グループレッスンよりもコストパフォーマンスが悪いことになります!

マンツーマンの英会話には、コスト面でも効果の面でも上で述べたような「落とし穴」がある。けれども、この記事は、別にgabaさんの商いを妨害するつもりで書いているのではない(笑)。よって、大急ぎで補足させていただきますが;現在の英語力・目的・目標・納期・コストからみて、英語のネーティブスピーカーから日本でマンツーマン指導を受けることが合理的な方も少なくない。ポイントは、その研修スタイルとボリュームがご自分の現在の英語力・目的・目標・納期・コストからみて合理的で合目的的かどうかです。

そして、この点ではgabaマンツーマン英会話は、文字通り、英語のネーティブスピーカーの英会話の個人指導だけでなく、個々の受講生に合った最適なレッスンプランを提案する<カウンセリング>にも力を入れておられるということですから、gabaのコンセプトとシステムは一応、合理的で良心的だと言えると思います。もちろん、どんなスクールと受講生の間にも<相性>というものがある。では、マンツーマンスタイルにどんな方が向くのでしょうか。私見を述べさせていただければ、それは、

①英語の基礎はできている方(TOEICで600点以上か、600点~470点だが英語を話すのが苦にならない方)で、

②英語のネーティブスピーカーとの交渉が英語で可能な英会話力(投資家から投資を募る英会話力:売り手に必要な英会話力)までは求めないが、ビジネスを英語でディールできる程度の英会話力(投資先を吟味する投資家に必要な英会話力:買い手に必要な英会話力)を

③2~3年以内には身につけたいという向きには(コストとの相談になりますが)マンツーマン英会話スクールは合理的な選択でしょう。


現在の英語力・目的・目標・納期・コストを踏まえなければ最適な英語研修のスタイルは確定できない。この観点から、gaba英会話スクールのもう一つの広告を取り上げたいと思います。これ力作です。「英語が話せたらやりたいこと」:”If I could speak English, I would like to do・・・.” について、実に「75人の声」を拾って作った全面これ文字のあの広告です。確かに、英語が話せたら(今はできない)こんなこともできるかもしれないな、こんなことできたら素敵だろうな楽しいかなと、思わず微笑がこぼれる楽しい広告。

一言居士のKABUは、しかし、この広告を通勤の小田急線の中で見かけたときに、これらの”If I could speak English, I would like to do・・・.”のそれぞれの声の主にあることを問いかけたくなりました。

それは、これらはすべて英語が話せればやりたいことであることは間違いないでしょうけれれど、(1)これらの「夢」を実現するために必要な英語力のレヴェルには物凄い差がありますよね、(2)これらの「夢」の中には、それを実現するためには英語以外の能力や知識、それに<運>の方が決定的に重要なものとそうでもないものとが混在していますよね、そして、(3)これらを実現するために英語力が必要になるものと、実現するための前提として(つまりその道でチャレンジしたりトライする「有資格者」になるためにすでに)英語力が要求されるものとが、これらの「夢」には混じっていませんか、ということです。

最後者と後者の違いはいささか微妙ですが、例えば、海外で就職するとか海外でビジネスを立ち上げるという場合、ビザ・パスポートの取得や法人登記の問題がクリアされなければチャンス自体が実質与えられない。ならば、最後者ではどんなに英語力があっても元々チャンスがないパターンもでてくる。ならば、後者と最後者、(2)と(3)は最初から分けておいた方が後々便利ですし、後で「詐欺師」呼ばわりされるリスクもヘッジできると思います。

これら(1)~(3)の問いで私は75名の方々に何を言いたいのか? それは、これらの「夢」を実現するために必要な、英語力のレヴェル・英語以外の他の知識や能力のレヴェル・運の度合いを考えるとき(そして、土台、「夢」を実現する可能性がもともとゼロかもしれない可能性を鑑みた場合)、現在手持ちの英語力から到達すべき英語力を獲得するコストとリスクは、その「夢」を実現して得られる利得と比べて果たして合理的でしょうかということです。

ここで語られている「夢」の実現に必要な英語力はどうみても英会話のスキルに限定されるものばかりではないでしょうから(つまり、その獲得にはかなりの時間がかかるケースもでてくるでしょうから)、上のポイントは「夢」を本気で実現したいのならなおさら、夢に向かって走り出す前に真面目に考えるに値することだと思います。

さて、75の各々の声に対して、私は(1)~(3)の3点についてどう思ったか;1行3列の行列で表記すればそれは、(英語力高, 英語力意外の能力の比重大, 有資格者になる時点で英語力必要)のようになり、行列で表記すれば数値化も可能になるでしょうがこれらについては述べません。これを読んでいただいている皆さんに考えていただきたいからです。そして、私自身皆さまのお考えをいつか聞かせていただきたいと思っています(尚、以下ではgabaスクールの著作権というか広告担当者の労力に敬意を表して、75名分のすべての声は採録しませんでした)。では、どうぞお楽しみください。



◆海外・自己開発&趣味
日本の伝統工芸を海外にぜひとも伝える。焼き物や織物(文具メーカー常務)/日本人のどこがダメなのか、世界に問いたい(食品卸問屋経営)/自分の好きな日本人作家を翻訳して世界中の人に読んでもらう(教育機関事務)/会社を数年間休んで国際ボランティアをしてくる(保険会社営業)/JFKの謎に世界一深く迫る私(IT関連会社プログラマー)・・他、6名


◆国内・自己開発&趣味
DVDを字幕無しでモードで見たい(女子高校生)/カラオケ合コンを、洋楽でびしっと決めたい(大学生)/自由自在にネットサーフィンしたい(商社勤務OL)/多国籍合コンを開きたい(ネイリスト)/世界中から届く迷惑メールの中身を知りたい(ウェブデザイナー)/自分のTシャツに書かれた英語の意味を知りたい(中学生)・・他、8名

◆海外・社会生活
ハワイで、犬をたくさん飼って生活をする(花嫁修業中)/アメリカで子育て。一人はアーティストに、一人はプログラマーにする(パティシエ)/朝起きて、そのままプールに飛び込めるような家に住みたい(インターネット会社経営)/リタイヤ後、妻と共にカナダに住む(メーカー役員)/旅行という非日常ではなく、海外の日常生活を味わいたい(グラフィックデザイナー)/西海岸に住みたい。のんびりと創作活動(ミュージシャンの卵)/国境を越えた恋愛と人生!(飲食店フリーター)/相続税の必要ないオーストラリアに引越し(印刷会社オペレーター)/夫に海外勤務をさせて、私もついていく(専業主婦)/外国で日本語教師をやりながら数年暮らしてみたい(女子大生)/外国人のお嫁さんになって、子供はカリフォルニアで育てたい(短大生)・・他、14名

◆国内・社会生活
電車の中ではしゃいでいる外国人に説教したい(自動車販売代表)/自慢気にしゃべる周りの帰国子女を見返す(OL)/外国からの留学生ホームステイの受け入れ先になる(テレビ局業推部)・・3名

◆海外・旅行
世界中のありとあらゆるデザートを食べてやる(女子大生)/本場NYのブロードウェイミュージカルをハシゴしたい(主婦)/旅行地図にはない場所に行く(フラワーショップ販売スタッフ)/ニュースでは伝わってこない、海外スポーツの興奮を直に感じたい(自動車販売営業)/飛行機の機内アナウンスを速記する(大学生)/新婚旅行で、妻にいいとこ、見せてみたい(部品メーカー販売)/海外旅行先で逮捕されたときに現地通訳に翻弄されて生涯懲役を受けたくない(映画配給代表)/ニューオリンズで本場ジャズ&オイスター三昧の休暇(ファッションブランドPR)/卒業旅行でアメリカ横断(大学生)/全ての国に一人ずつ友達を作りたい(高校生)・・他、10名

◆海外・能力開発 
ケロッグのMBA(★)で最先端のマーケティング理論を学ぶ(経営コンサルタント) /家具職人になりたい。英国でしっかりと学んで、東京でオリジナルの家具ショップを(インテリアコーディネーター)/海洋生物学の教授になりたい。カリフォルニア大学で博士号をとる(大学生)/ハリウッドの裏方スタッフとして修行したい(映画監督志望)・・他、5名
★KABU註:
「ケロッグ」とはケロッグのコーンフレークで有名なケロッグ財閥の寄附でできた、米国はイリノイ州シカゴ郊外のエヴァンストンにあるノースウェスタン大学のビジネススクールのこと。世界的なマーケティング理論の権威・フィリップ・コトラー教授を始め錚錚たる陣容を誇りマーケティングの分野では全米のトップMBAという評価を享受しています。



◆海外・ビジネス
ロンドンのアンティックショップに自分で買い付けに行く(ショップ店員)/セレブ専用の指圧マッサージサロンをハリウッドで開業する(指圧師見習い)/週刊の漫画誌を英語圏で創刊する(専門学校生)/研究費の出るアメリカ企業で満足いくまで実験する(製薬会社開発チーム勤務)/ニュージーランドのプロリーグに挑戦したい(某メーカーラクビー部キャプテン)/将来、宇宙ステーションで仲間はずれにならないようにしたい(大学生)/炊きたてのふっくらコシヒカリに辛子明太子の幸せを外国に普及させる(居酒屋店主)/自分の会社のNY支社設立(オフィスデザイン会社代表)/米国における知的所有権の対日本向け管理運営法人を設立する(弁護士)/ブラックバスを全部アメリカに戻す作業(公務員)/トップクラスの通訳になって世界の大統領とお話したい(メーカー商品企画)/国連で働いて(★)、世界中の喧嘩をやめさせる(カフェ店員)/通訳の要らない政治家になりたい(渋谷区議会議員)/海外のマーケティング会社に再就職(玩具メーカー商品企画)/年収を100倍にしたい(銀行員)/グローバル系M&Aをガンガン仕切って、30代で引退(外資系金融戦略担当)・・他、19名
★KABU註:
国連は加盟国が論議するための常設の国際会議場にすぎず、国連自体に「世界中の喧嘩をやめさせる」権限も能力もありません。



◆国内・ビジネス
アロマセラピーを原材料で買って、自分で調合したい(フラワーコーディネーター)/外国人御用達の歯医者さんを作りたい(歯科医師)/従業員を全てアメリカ人にして、雰囲気にこだわったハンバーガー屋を始めたい(カフェ経営)/私の小説を世界中の人々に読んでもらいたい(コラムニスト・作家)/英語のキャッチコピーを書きたい(広告代理店制作局)/海外事業部を希望してプロジェクトリーダーになる(商社キャリアウーマン)/一見、できる人になりたい(家事手伝い)・・他、10名


ブログ・ランキングに参加しています。
応援してくださる方はクリックをお願いします


 ↓  ↓  ↓

にほんブログ村 英会話ブログ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。