無能な民主党政権は日本国民の不幸というだけではなく世界の脅威になりつつある。このことが、安全保障を巡る普天間基地移設問題と並んで口蹄疫問題で端的に明らかになった。と、そう私は考えています。而して、この民主党政権認識は私がコアな自民党支持者だからというのではなく、世界の常識になりつつあるの、鴨。このことの証左というべき記事を見かけました。口蹄疫問題を扱った支那国営通信社・新華社の報道。以下、紹介します。
食の安全に関して支那の通信社にだけは言われたくない/言われる筋合いはない。そう感じる向きもあるかもしれません。けれど、逆に言えば、
①20年以内には「世界最大の人口を擁する国」の地位を印度に奪われることがほぼ確実にせよ、13億の人口を抱える支那にとって「食糧安保」は軍事的な安全保障に優るとも劣らない重要な問題であること
②現在、その食の安全が内外から厳しい批判にさらされているがゆえに、ある意味、家畜の伝染病は日本にとってよりも支那においての方が切実な問題であること
この2点を鑑みれば、新華社が日本の民主党政権の無為無策無能ぶりに高い関心と強い危機感を覚えるのは(余計なお世話などではなく)当然なの、鴨。ここにご紹介する記事を読んで私はそう感じました。
いずれにせよ、「政治主導」なるものは、所得の再配分や産業構造の変換という政策部面では意味があるのかもしれませんが、危機管理や外交の部面ではそれは政権を動かす(少なくとも)第一順位の原則ではないのではないか。米英には 「政争は水際まで:Politics should end at the water's edge.」 (野党が与党を攻撃するのは当然であるが、国と国との境の海岸線から先の事柄、つまり、外交・安全保障・食料安保・エネルギー安保等々の分野は与野党を超えて協働してことに当たらなければならない)という箴言がありますが、民主党政権は、謂わば「水際から向こう側の事柄をも「政治主導=与党の国会議員の主導」で解決できる」とする誤謬を犯しているのではないか。蓋し、この私の予想が満更間違いではないとすれば、その誤謬の基底には権力の万能感や憲法の万能感とも言うべき憲法無効論なみの傲岸不遜と無知蒙昧が横たわっているのだろう。と、そう私は考えています。
以下、民主党政権の政治主導と口蹄疫対策の不備の関連を記した産経新聞の社説。続いて新華社の記事を紹介いたします。出典は「Sluggish Gov't response fuels spread of foot-and-mouth disease in Japan:日本政府の無為無策が加速させる口蹄疫拡大」 (2010年5月24日)です。尚、民主党政権の本性・政治主導なるものの本性については下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。
◎口蹄疫特措法 被害を広げた「政治主導」
口蹄疫の感染拡大を防ぐための予防的殺処分を強制的に行える特別措置法が28日にも成立・施行される見通しだ。防疫の強化だけでなく、殺処分に伴う農家の損害を国が全額補償することなども盛り込まれている。
いまも被害が収まらないこの問題で、民主、自民、公明の与野党が一致して取り組んだ点は評価できる。法を駆使して、速やかに感染拡大を食い止めてほしい。・・・
それにしても今回の口蹄疫禍は、鳩山政権の抱える欠陥が被害を拡大させてしまったという面が少なくない。まず、感染は赤松広隆農林水産相の外遊中に急激に広がった。防疫の指揮をとるべきトップが留守だと、行政全体は危機感に欠けてしまう。それが現場に悪影響を及ぼし、防疫の初動も遅れた。構造的欠陥そのものである。
口蹄疫の発生を知りながら外遊に出発し、ここまで被害を拡大させてしまったのは、赤松氏の失態である。鳩山由紀夫首相も何かにつけ「政治主導」を打ち出していたのだから、赤松氏の外遊をやめさせるべきだった。中途半端な政治主導で指揮系統に大きな乱れを生み、対策も後手後手に回った。農水相と副大臣、事務方との見解の食い違いなども少なくない。
自民党は28日、この問題で赤松氏の不信任決議案を提出する。赤松氏は、「結果責任」をどう取るというのか。
(産経新聞・2010年5月28日)
・民主党政権の誕生は<明治維新>か<建武新政>か
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/ada30326dfc1c4d15b3658955bbbd627
・政治主導の意味と限界
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/667c6ba4a092a16e5f746fec1ad1cdd7
・「事業仕分け」は善で「天下り」と「箱物」は悪か
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/44d9945d8782c40071e473ca1ef0cf81
Japan's cattle industry is currently on tenterhooks as its globally renowned breeding region in Miyazaki Prefecture, on the eastern coast of the island of Kyushu in southern Japan, is essentially on lock-down following a ferociously infectious outbreak of foot-and-mouth disease (FMD), the likes of which have not been seen in developed nations since the 2001 epidemic in the UK.
The Food and Agriculture Organization of the United Nations, which is still awaiting an official request from the Japanese government for advice and support despite readying their experts to be deployed to Japan to assist, have slammed the Japanese government's inability to respond swiftly enough to effectively identify and take the necessary measures to counter the rampant disease.
In fact, Japanese Prime Minister Yukio Hatoyama admitted that local officials could have identified and prevented the epidemic far earlier had they not overlooked the highly contagious infection during an on-site inspection on a farm in Miyazaki Prefecture in March.
This monumental oversight may well have led to the number of cattle to be slaughtered ultimately reaching above 205,000 animals in the area, in a bid to prevent the further spreading of the highly contagious disease in the region and beyond, and although Hatoyama has pledged more than a billion U.S. dollars to help compensate local farmers, the actual price Miyazaki Prefecture will pay for this crisis will, undoubtedly, be far higher.
Miyazaki Prefecture is known for breeding stock solely to produce "Wagyu" beef. The beef, known for its tenderness and fatty, marbled texture, has a rich history in Japan, but over the past few years has attracted growing numbers of Wagyu lovers the world over and is enjoyed in top-notch restaurants from Paris and London, to Shanghai and Seoul.・・・
日本における牛の畜産業は現在非常事態の渦中にある。南日本にある九州の東海岸沿い、牛の繁殖地として世界的に有名な宮崎県が、激烈な伝染力を持つ口蹄疫(FMD)の爆発的流行にともない原則的に他の地との交流を遮断され封鎖されているからだ。先進国での口蹄疫の大流行は2001年の英国以来のことである(the likes of which=the likes of outbreaks of this disease)。
国連食糧農業機関は、現在、助言と支援を求める日本政府からの公式の要請に備えて、同機関の専門家を日本に派遣する態勢を整えてすでに準備万端。而して、国連食糧農業機関は、猛威を振るうこの病気の原因を可及的速やかに、かつ、的確に究明できなかったこと、および、これまた可及的速やかに必要な対抗措置を取れなかった日本政府の無能さに苦言を呈している。
実際、日本の鳩山由紀夫首相も、もし、宮崎県の担当者が3月にある畜産農家の農場における現地検診でこの極めて感染力の強い伝染病の発症を見落としていなければ、県の担当者自身によって伝染病の病因はもっと早い段階で特定することができ、而して、病気の蔓延も防ぐことができていたかもしれないと認めている。
この重大な見落としによって、宮崎県では多くの牛が殺処分されることになり、その数は豚等と合わせて最終的には205,000頭を超える見込みだ。この殺処分は、極めて伝染性の高いこの病気が宮崎県の内外でこれ以上拡大することを防ぐための措置であり、他方、鳩山氏は農家の補償と救済に10億ドル支払うことをすでに誓約しているものの、宮崎県が今回の危機によって実際に蒙る損害は間違いなくそれを遥かに上回ると見られている。
【3月に県の担当者が口蹄疫の発症例を見落としたというのは事実かもしれない。また、それが事実とすればそのヒューマンエラーと現下の口蹄疫蔓延の間には確かに因果関係はある。けれども、「そこで見落としがなければ」というのは結果論であり、見落とした獣医師や県の担当者に重大な過失がない限りは法的責任もない。畢竟、行政はそのようなヒューマンエラーがそれなりの確率で生じる前提で行なわれるしかなく、問題は事実が明確に確認され国に報告された2010年4月20日以降に取られた行政の対応が適切であったかどうかである。蓋し、鳩山民主党政権の今般の口蹄疫への対応は「下劣拙劣」「無為無策」以外の何ものでもない。と、そう私は考えている。けれども、上記の第3段と第4段の訳については原文テクストに従った】
宮崎県は「和牛」の肉を生産専用の繁殖用牛で有名。その柔らかさと大理石のような肌理をもたらす脂肪分で広く知られるこの牛肉は、日本での長年に亘る創意工夫の積み重ねを経て生産されるものなのだけれども、ここ数年は世界中に多くの和牛ファンを獲得するに至っている。而して、現在ではパリやロンドンから上海やソウルに及ぶ世界中の一流レストランで和牛の牛肉はファンを魅了している。(中略)
With the outbreak of FMD and the subsequent evacuation of the region's and the country's six most prized stud bulls -- the only remaining breeding animals for the highly sought-after Wagyu beef - - in a bid to ensure breeding could continue once the disease had been eradicated, local farmers believed that although the highly contagious virus has brought a halt to all Japanese beef and pork exports for the past month and crippled the premium beef industry in Miyazaki, the future at least, had been safeguarded.
Not so. One of the six top seed bulls named Tadafuji was euthanized Saturday after testing positive for foot-and-mouth disease and the prefectural government has decided to observe the other bulls for at least ten days and conduct several genetic tests on them because they too are suspected to have contracted the disease, in which case they too will have to be culled meaning the Wagyu beef trade will be devastated.
Usually, all bulls and pigs kept with infected animals are culled, but officials have decided to keep the five remaining seed bulls under observation and have assigned them individual care managers to monitor their health and are being housed in separate stalls in a bid to prevent them contracting the disease, despite them all having been exposed to the highly contagious virus.・・・
口蹄疫の大流行にともない、宮崎県の誇る、否、日本の宝とも言うべき最上の評価を享受している6頭の種牛が避難させられた。畢竟、この6頭だけがどこでも引く手数多の和牛の肉を生産することができる種牛なのであり、その6頭の避難は、口蹄疫の流行が治まった際に牛の繁殖と畜産を継続するための措置であった。而して、この措置によって、確かに、恐ろしい感染力を持つこの伝染病ウィルスにより先月は日本からの牛と豚の輸出は完全に止まってしまい、また、上質の牛肉を生産してきた宮崎県の畜産業は停滞を余儀なくされたにせよ、宮崎の畜産業の未来は安泰であろう。と、そう口蹄疫が猛威を振っているこの地域の農家は信じていた。
しかし、そうではなかったのだ(the future had not been safeguarded.)。避難したエース級の種牛6頭の中の1頭、忠富士という名前の種牛が口蹄疫に感染していることが確認され、土曜日【5月22日】には安楽死処分されたのだから。宮崎県庁は最低10日間は残りの5頭を観察することと、それらに対して何種類かの遺伝学的検査を実施することを決めた。というのも、残りの5頭も口蹄疫の感染が疑われているからであり、もし、感染が確かめられれば(in which case)彼等も殺処分されることになり、而して、そのような事態になれば、和牛の牛肉を扱うビジネスは崩壊する(meaning that the Wagyu beef・・・)ことになろう。
通常は、感染した個体と同じ場所にいた牛や豚は殺処分されることになっている。しかし、宮崎県の担当者は、残り5頭の種牛を殺処分しないことにして監視下に置き、かつ、それらの健康状態を常時把握すべく5頭各々に専属の担当者を配置した。また、口蹄疫の感染を防ぐために5頭は別々の牛舎で飼育されることになった。もちろん、これら一連の手当てをしたところで5頭の種牛はすべてすでにこの極めて感染力の強いウィルスに触れてしまっている事実は否定しようもないのだけれども。(中略)
<続く>
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