無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

「痛くない死に方」 高橋伴明監督 ✗

2021-03-26 | 2021映画評


「痛くない死に方」 高橋伴明監督 ✗

 原作は長尾和宏の「痛くない死に方」と「痛い在宅医」です。
 在宅医の河田(柄本佑)は末期の肺ガン患者井上を担当しますが、延命治療はせず、痛くない治療を娘の智美(坂井真紀)に依頼されます。しかし、結局井上は苦しみながら最後を迎えます。智美は自分の判断が間違っていたのではないかと苦しみます。河田は先輩の医師長野(奥田瑛二)に苦しい胸の内を相談します。しばらくして担当したのは末期肝ガンの本多(宇崎竜童)でした。介護する妻(大谷直子)と二人三脚で最後の日々を安らかに過ごせるよう助言するのでした。
 
 最後の時をどう迎えるか、という大きな命題に対するひとつの提案が描かれています。患者にとっては望まれる対応かもしれませんが、介護をする「娘」「妻」にとっては1ヶ月くらいならなんとかなっても長期になると結構負担になるのではないかと思います。ジェンダーの問題としても「男性」が「女性」の介護を受けるというありきたりの流れで現代性が感じられなかったことは大変残念です。

 タバコでは、大きな問題発言がありました。それは宇崎演ずる本多と河田が花火を見ていた晩に「一杯やりたいなあ」とお酒を欲し「いいですよ」と一緒に飲む場面の次に「(タバコを)一服するのはやっぱり無理だよな」と遠慮がちに喫煙を希望します。そこでビックリ発言「いいですよ」と吸わせてしまいます。
 死ぬことがわかっている患者の喫煙に対して看護界でも色々意見はあるようですが、筆者が思うに「人は最後まで人としての矜持を保つことこそが人の尊厳なのではないか。」と思います。簡単に言えば「死ぬ瞬間まで生きる努力をしよう」ということです。だからタバコなんてとんでもない。
そこでちょっと脚本を訂正してみました。

 <脚本の提案>
本多「先生タバコを吸いたいんだけど・・・。」
河田「1本吸えばそれだけ寿命は縮まります。私は本多さんに一分一秒長く生きてほしいからタバコは許可できません。代わりになるものもありますよ。」
本多「そうか、そうだな。生きるってそういうことか。代わりはいいや。やっと禁煙できたんだ、ずっとできなかったけど、やっとできた。自分をほめなくちゃな。」
妻「よくがんばったよね。」
花火の音と映像。

脚本も高橋監督ですが、映画の中の河田が成長していくように高橋監督にも次回作を期待したいと思います。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする