無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

野火

2015-07-31 | 2015以前の映画評


「野火」 塚本晋也監督 PG12 △ !(タバコネタ多い) ☆

 大岡昇平原作の小説を戦後70年のこの時に映画化しました。
 8万4千人もの戦死者を出したフィリピンのレイテ島。そこはわずか3%の生還率という過酷な状況下にありました。田村(塚本晋也)は結核を病み、所属する分隊からは「野戦病院へいけ」と追い出され、病院からは「もう完治した」と追い出されてしまいます。そして行き場もなく原野を彷徨っていくのでした。食料もなく敵の攻撃が熾烈になる中何人かの戦友と行動を共にします。そんな中で、思いがけず現地の住民を殺してしまったり、味方同士が食料を取り合ったりとまさに地獄以上の体験をするのでした。
 リアルな肉塊や脳みそが飛び散ったり、クビや腕が飛んで行ったり、こういう表現が許されるかわかりませんが模造造形技術が素晴らしかった作品です。血しぶきが得意の監督はいますが、ここまでやれるのは塚本監督が長い間温めていた作品だからでしょう。覚悟が感じられます。大変つらい内容ですが、ひとりでも多くの人に観てほしい、特に国会にいる皆さんにはこれを観て、過去の事実に向き合ってほしいものです。


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ゆずり葉の頃

2015-07-31 | 2015以前の映画評


「ゆずり葉の頃」 中みね子監督 ◯ ☆

 八千草薫の雰囲気にピッタリの作品です。ユズリハとは若い葉が育つと元の葉が緑のうちから落ちてしまい、若葉にゆずることから命名された植物です。
 息子が6歳の時に夫を亡くし和服の仕立てをして生計を立てていた市子(八千草薫)は老いを感じ、仕事を引退し家を処分し、終の棲家に移ろうと考えていました。その前にどうしても見たい絵画がありその展示会へ向かいます。軽井沢で開かれた会場には市子の見たい絵はありませんでした。実は市子は戦時中軽井沢付近に疎開をしていてその絵を描いたのは幼なじみの少年だったのです。展示場の近くの珈琲店のオーナー(岸部一徳)は何度か通ううちに地元の宿やレストランなどを紹介してくれるようになります。そして、ついには絵画を描いた画伯本人(仲代達矢)と対面することができるのでした。一方、市子の一人息子進(風間トオル)は赴任先の海外から休暇で急遽帰国し、母の市子を探しに軽井沢へ向かうのでした。
 穏やかで上品な雰囲気が全編を覆っています。軽井沢の自然と紹介されたお店がそれぞれ個性的で洗練されていて心が豊かになる作品です。
 タバコは、なし。無煙です。


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チャップリンからの贈りもの

2015-07-31 | 2015以前の映画評


「チャップリンからの贈りもの」 グザヴィエ ボーヴォワ監督 仏 ☓☓☓

 1977年、喜劇王チャップリンが亡くなった直後に起きた誘拐事件の顛末を人情喜劇として映画にしました。
 スイスの湖のほとりの街に住むオスマンは妻が入院中で経済的にも苦しい中、親友のエディが出所してくるのを迎えに行きます。なんと服役していた間エディの荷物を管理し住むところまで用意してくれていました。しかし、妻の入院費はかさみ支払えないと治療を続けてもらえないのです。なんとかしようとお調子者のエディが考えたのは、埋葬されたばかりのチャップリンの棺を誘拐するという呆れた計画でした。計画ははじめのうちは段取り通りに行きましたが、チャップリンの秘書の方が一枚上手で身代金を手に入れることができません。そうこうするうちにエディには仕事がみつかりそれはチャップリンのような道化役でした。さて、この誘拐事件はどのように解決し二人の運命はいかに・・・。
 オスマンの8歳の娘が、子どもながらに父親とエディのすることを心配する姿が健気でした。ベルギー人のエディとアルジェリア人のオスマンが出会ったところがスイスという設定で77年にはすでにヨーロッパは多民族社会になっていたのですね。映画を見ると社会の勉強になります。
 タバコは、77年という時代からか男二人が子どもの前でも食事中でも喫煙していました。(☓☓☓)入院費が払えないのになんでタバコが買えるのか、タバコを吸っているから貧しくなるのか、謎です。 


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雪の轍

2015-07-31 | 2015以前の映画評


「雪の轍」 ヌリ ビルゲ ジェイラン監督 トルコ仏独 ☓

 67回カンヌ映画祭パルムドール大賞受賞作です。トルコのカッパドキアを舞台に哲学的な会話を通して観客に人生を問いかける作品です。緊張した会話劇は3時間を超えますが、上映時間の長さを感じさせません。
 主人公のアイドゥン(ハルク ビルギネル)は元舞台俳優で親からの資産を継いでカッパドキアで「オセロ」というホテルを経営しています。若い妻と出戻った妹と暮らしています。新聞にコラムを書いたりしていますが、本当は「トルコ演劇史」を執筆することがアイドゥンの夢でした。妹は彼の書くものを辛辣に批判するし、妻は妻で彼の資産を慈善事業に寄付することに忙しく、彼を理解するのは一人の友人だけでした。ある時、彼の借家に住む一家が家賃を滞納し弁護士が法的手段を取ったことから、この一家との間に小さな事件が発生し、そのさざなみがいつしか大きなうねりとなってアイドゥンたちを襲ってくるのでした。
 登場人物は少ないながらも様々な組み合わせの会話劇で構成されていて、「良心とは」「倫理とは」といった哲学的テーマをつきつけられます。何幕もの演劇をみているような独特な作品となりました。(☆)
 タバコは、アイドゥンとその使用人が喫煙しました。(☓)


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バケモノの子

2015-07-28 | 2015以前の映画評


「バケモノの子」 細田守監督 ◯ ☆

 夏のアニメといえば細田監督という流れができていますが、今年の夏はバケモノです。
 父は失踪、母親は急死、一人になった9歳の蓮少年は親戚の保護から逃れ渋谷の町を彷徨っていました。そこで弟子を募集中のバケモノに拾われ人間界とは別にあるバケモノの世界で育ちます。蓮は家事万端をこなし、武芸の鍛錬もし、その姿にがさつな師匠も弟子に育てられていきます。17歳になった時人間界に出て、初めて学ぶことの楽しさを高校生の楓から教えられます。9歳の時から学校に行っていなかったものの旺盛な好奇心と集中力、そして的確な楓の指導で大検を目指すほどになります。しかし、バケモノの世界ではもうひとり人間の子が育っていました。人間のみが持つ心の闇を通し、蓮は戦わざるを得ないことになってしまうのでした。
 バケモノの世界は理想的で人々は手仕事に励み、己の利益のために戦うようなこともなく穏やかに暮らしています。人間の方こそが「闇」という不気味なものを抱えたバケモノです。未成年者が大事件を起こすたびに「心の闇」ということばがメディアに氾濫しますが、「心の闇」は犯罪者だけが抱えているものではなく誰もが抱えているけれどそれをいかにして乗り越えていったらいいのかというヒントがこの作品に込められています。夏休みの父と子に是非みてほしい作品です。(☆)
 タバコはなし。無煙です。アニメで鮮やかに渋谷の町並みを再現していますがその中には「歩きタバコ禁止」の横断幕もありました。


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HERO

2015-07-28 | 2015以前の映画評


「HERO」 鈴木雅之監督 ☓☓

 2001年にテレビドラマとして登場し、その後も劇場版などシリーズ化している、ちょっと変わった検事物です。
 ジーンズに革ジャンがトレードマークの検事久利生公平(木村拓哉)が担当した交通事故が実は暴力団と外交官との薬物取引を聞いてしまった女性が「口封じ」に殺されたのでした。犯人を追って行き着いた先が「大使館」でした。治外法権と外交官特権という壁を久利生は打破できるのでしょうか。
 いつものように、東京地裁城西支部の個性ある面々が登場、大阪の検事となっていた久利生の前の事務官雨宮(松たか子)は大阪での薬物取引の関係で上京久利生らとともに真相を突き止めようとするのですが・・・。
 地味ながらもそれぞれ個性派の芸達者な俳優さんが脇を固め、木村と事務官役の北川景子を演技の上でもしっかりと補佐し、笑いながらも社会の勉強にもなる作品となりました。天井カメラで撮影する独特の映像や静止カメラに向かってそれぞれがアップで笑わせる一言を言う場面など撮影方法も個性的です。猛暑の日に映画館でゆっくり避暑をするには家族で安心して見られる作品です。
 タバコは、危惧したとおり木村拓哉が3回ほど喫煙しました。特に田中要次がマスターのレストランで誰もタバコを吸っていないのに彼一人だけが断りもなく喫煙する場面があり、「その1本でレストラン中が受動喫煙」という典型的な「こまったちゃん」でした。(☓☓)木村の唇の色が紫色に変色しているのは喫煙が原因でしょうか。ちなみに暴力団も警察も喫煙はしませんでした。


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リアル鬼ごっこ

2015-07-17 | 2015以前の映画評


「リアル鬼ごっこ」 R15 園子温監督 ☓

 JK(女子高生)ばかりがわけもわからず次々殺されていく現実なのかゲームの世界なのかそれともパラレルワールドなのか、結局ラストになってもわけがわからない「シュールな」と言ってしまえばそれだけの作品です。
 修学旅行中なのかバスで移動している女子高生ですが、いきなり「何か」の力でバスは上下に切り裂かれ女子高生たちも体が切り離されてしまいます。奇跡的に生き残ったミツコ(トリンドル玲奈)は「何か」に追われているという恐怖から必死になって走って逃げます。すると全く別の女子校の生徒となっていて、親友が現れみんなで授業をサボることにします。そして戻ると今度は教師が女子高生たちを全員銃殺していくのでした。またまたその場から逃げるミツコでしたが気が付くと顔と名前が変わっていたのです。しかし、異常な殺戮は続くのでした。はたしてミツコは逃げることができるのでしょうか。
 映像としては今回のテーマは「紅白」だったのか真っ白の羽毛が何回も登場し、一方では園監督が得意とする血しぶきの赤が印象的に使われていました。登場するのは多くのエキストラを含め99%が女性でいっその事男を出さずに仕上げればそれはそれで試みとして面白かったかと思いますが、とにかくこの作品の「意図」が理解できなかったので、的はずれな感想に過ぎないのですが。走りに走った出演者の皆さんはこの作品を理解しているのでしょうか。
 タバコは、1%の出演者の怪しい男たちが喫煙していました。(☓)


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アリスのままで

2015-07-16 | 2015以前の映画評


「アリスのままで」 リチャード グラッツァー&ウォッシュ ウエストモアランド監督 米 ◯ !

 名門大学の有能な言語学者が若年性アルツハイマー病になってしまい、最も大切にしていた言語を失っていく悲しみとそれを支える家族の姿を描きました。
 50歳になったばかりのコロンビア大学の教授アリス(ジュリアン ムーア)は言語学者としても、また医学博士の夫、弁護士となった長女、医学生の長男など家族にも恵まれ、充実した日々を送っていました。唯一の気がかりは俳優志望で大学にも進学しない次女のことでした。そんなある日、アリスはキャンパス内でジュギングをしていて迷子になってしまいます。また、講義中言葉が出てこないなどの体験をきっかけに神経科を受診し、「若年性アルツハイマー病」それも遺伝性であることが判明します。そこからアリスが壊れていく自分自身をどうするのか、家族はその現実をどう受け止めるかが物語れていきます。
 日本の難病物はとかく「泣かせる」作品になりがちですが、この作品では家族の知的レベルが高いせいか感情的にあまりならず、遺伝性であるという(その上、遺伝子検査で陽陰性がすぐにわかってしまう)厳しい現実があるにも関わらず、長女は念願だった妊娠出産をし、夫は仕事を尊重して単身赴任してしまうなど、病気にふりまわされない人間関係を淡々と描いています。それにしても、アリスを演じたジュリアン ムーアが、少しずつ自分を失っていく表情の変化を見事に演じています。
 タバコは、なし。無煙です。長女の妊娠がわかった時家族から「タバコはだめ」と言われ、「吸ってないわよ。(当たり前でしょ)」というセリフがありました。


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きみはいい子

2015-07-16 | 2015以前の映画評


「きみはいい子」 呉美保監督 △

 坪田譲治文学賞受賞作の中脇初枝原作の短編小説を映画化しました。
 優柔不断な新人教師、戦争のキズを心に持つ一人暮らしの高齢女性、我が子に虐待をしてしまう母親などの姿を断片的に描きました。
 教師の(高良健吾)はクラスにそれぞれの事情で手のかかる子どもや親がいてちょっと疲れ気味、恋人は仕事に忙しくてかまってくれず、やる気もなく過ごしています。マンションに住む母子は母親(尾野真千子)が虐待されて育った過去があり自分も娘に手を上げてしまいます。高齢女性がスーパーで万引きをし、咎めた店員(富田靖子)も実は自閉症の息子を一人で育てていました。あれやこれやの問題を抱える登場人物たちですが、新人教師が自分の幼い甥に「大丈夫だよ」と抱きしめてもらうことで心の安定を得るのでした。そして、混乱しているクラスの子供達に「誰かに抱きしめてもらうこと」という宿題を出します。また、虐待をしてしまう母親も同じ立場のママ友(池脇千鶴)から抱きしめてもらい心に落ち着きを取り戻すのでした。店員と高齢女性も息子を通して心を通わせ、めでたしめでたし。
 現代社会が抱える社会問題をいくつも取り上げ一応はそれぞれがつながっていそうなのですが、教師と虐待する母親とのつながり、小学校の特別支援クラスの担当者(高橋和也)と池脇(夫という推測はできますが)夫婦であるという場面をはっきり示してくれるとすべてのエピソードが有機的につながったのではないかと思います。芸達者な出演者がいい演技をしていただけにあと一歩でずっと良くなったのではないかと思うとちょっと惜しい作品です。いずれにせよ今は女性ばかりが大変なようでした。
 タバコは、高良が2回タバコを吸おうとしますが、2回とも火を点けず。子どもをネグレクトしている内縁の夫がアパートの外で喫煙しました。どうしようもないような男役なのでイメージとしてはかなりマイナスでした。また、尾野と池脇が同じように虐待を受けていた証として「火のついたタバコを押し付けられたやけどの痕」で、これもかなりのマイナスイメージです。呉監督は前作「そこのみにて光輝く」がモクモク作品でしたが、今作ではほとんど煙害がなくその点では社会の変化がきちんと捉えることができていて大変素晴らしいと思いました。これからも俳優やスタッフを本当に大切にする監督でいてほしいものです。


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ターミネーター ジェネシス

2015-07-15 | 2015以前の映画評


「ターミネーター ジェネシス」 アラン テイラー監督 米 ◯

 主役のシュワちゃんことシュワルツェネガーが俳優に戻るのを待っていたかのように制作された新シリーズ(?)の始まりです。(たぶん)
 機械が人間に変わって地球を支配し、核ミサイルによって汚染された地球はすでに人類の住む環境ではありませんでした。過去を変えるために未来から送り込まれたターミネーター800型(シュワちゃん)ですが、機械側もより進化したロボット1000型を送り込んでいました。なんと別の人間に変化してしまうのです。ジョン コナーの母親になるサラ(エミリア クラーク)とシュワちゃん、そしてもう一人未来からサラを守るために、もう一つの役割を持ってカイル(ジェイ コートニー)がやって来ました。ところがジョン コナーになりすましたロボットが立ちはだかります。果たして人類の未来はいかに。
 金属と人間の肉体とが傷付けられるたびに特殊撮影で混ざり合う場面はこの作品の見せ場でしょうか。その上に人間になりたくなってきた機械の微妙な表情をシュワちゃんが絶妙に演じています。似たようなバトルシーンが多すぎるのがちょっとしつこいのですが、初めて見る観客にも一応前説があって楽しめるのではないでしょうか。ラストはあのメインテーマ「ダダダッダダン!」で終わってほしかった。
 エンドロールが始まって直ぐに席を立ってしまった人はこの作品が「続く」であることを見落としてしまいます。明るくなるまで席を立たないこと。
 タバコは、1984年の場面でトラックの運転手が葉巻をくわえていました。しかし煙はなし。なのでおまけの◯です。



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