実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等の公表
企業会計基準委員会は、実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」を、2024年3月22日付で公表しました。
「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税及び地方法人税(以下「法人税等」という。)の会計処理及び開示の取扱いを明らかにすることを目的とする」ものです(2項)。
本実務対応報告の概要は以下のとおりです(ASBJ資料より抜粋・要約)。
1.会計処理
- グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等については、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき当該法人税等の合理的な金額を見積り、損益に計上する(6項)。
- 本実務対応報告第 6 項の定めにかかわらず、当面の間、「当四半期会計期間等」並びに「当中間会計期間等」を含む対象会計年度に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を計上しないことができる(7項)。
(「対象会計年度」とは、法人税法第 15 条の 2 に規定する多国籍企業グループ等の最終親会社等の連結等財務諸表(法人税法第 82 条第 1 号)の作成に係る期間をいう(5項))。
2.開示
(1)貸借対照表における表示
- グローバル・ミニマム課税制度に係る未払法人税等のうち、貸借対照表日の翌日から起算して 1 年を超えて支払の期限が到来するものは、法人税等会計基準第 11 項の定めにかかわらず、連結貸借対照表及び個別貸借対照表の固定負債の区分に長期未払法人税等などその内容を示す科目をもって表示する(8項)。
(2)連結損益計算書における表示及び注記
- 連結損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)を示す科目に表示する(9項)。
- ただし、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が重要な場合は、当該金額を注記する(10項)。
(3)個別損益計算書における表示及び注記
- 個別損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)を表示した科目の次にその内容を示す科目をもって区分して表示するか、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示し当該金額を注記する(11項)。
- ただし、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の金額の重要性が乏しい場合、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示することができるとし、この場合は当該金額の注記を要しない(12項)。
(4)四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記
- 当四半期会計期間等及び当中間会計期間等において、本実務対応報告第 7 項を適用するときは、その旨を注記する(13項)。
適用時期は、2024 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からですが、四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記の定めについては、2025 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用です。
これだけでは実務に適用するのが難しいと考えたのか、「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等に関する見積りについて」(PDFファイル)という「補足文書」をあわせて公表しています(全5ページ)。「実務対応報告第 46 号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」...を適用する場合に、実務に資するための情報を提供することを目的としている」とのことです。
補足文書の概要は以下のとおりです(「本補足文書の概要」より)。
「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の見積りについて、適用初年度において従来の財務諸表の作成にあたって入手している以上の情報を入手できない場合に考えられる次の見積りの一例を示している。
(1) 対象範囲の判定を行うに際しては、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手していない国別報告事項に関する情報や恒久的施設等及び特殊な会社等に関する情報を適時に入手することができない場合には、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手している子会社等の情報のみに基づき国別実効税率を算定する等の方法により対象範囲の判定を行う。
(2) 子会社等におけるグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の算定に際して、個別計算所得等の金額及び調整後対象租税額並びに給与適用除外額及び有形資産適用除外額の算定において必要な情報について、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手しておらず対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度の決算時において適時に入手することができない場合には、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手している子会社等の会計数値に基づき当該金額を見積る。
また、適用初年度の翌年度以降は、適用初年度に比べればグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の申告に向けて情報を入手する体制がより強化され、実績値の把握等によって、入手可能となる情報が増加することがあると考えられるが、グローバル・ミニマム課税制度の特徴を踏まえると、対象範囲の判定や個別計算所得等の金額等の算定にあたって必要な情報を適時かつ適切に入手することが困難である場合があると考えられ、このような場合には、上記に示した例を参考とすることが考えられるとしている。」