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「ナイス」元会長ら有罪破棄 粉飾決算、審理差し戻し―東京高裁(時事より)

「ナイス」元会長ら有罪破棄 粉飾決算、審理差し戻し―東京高裁

「ナイス」(旧すてきナイスグループ)の虚偽記載事件の裁判の記事。元会長らの控訴審で、有罪とした一審判決が破棄され、地裁に差し戻されました。

「地裁は、架空の取引で売り上げを水増ししたと認定したが、大善裁判長は売買契約が締結され、代金も支払われるなどしたことから「実態はあった」と指摘。その上で、取引結果の計上が会計基準に反していたと言えるかを判断させるため審理を差し戻した。」

たしか、会計基準としては、連結範囲が問題になっていました。

通常の虚偽記載事件は、まず、監視委が摘発し(その前に会社が自主的に訂正する場合も多い)、ひどい事案については、刑事告発するという流れですが、この事件では、最初から検察が主導していたようです。会計基準に照らして、どうなのか、という検討が甘かったのでしょうか。

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その2(課徴金決定時)

金融庁は「不適正な不動産販売による売上の過大計上」と「不採算子会社等の連結範囲からの除外」を指摘していました。

その3(横浜地方検察庁への告発時)

その4(第三者委報告書について)

監視委の「市場へのメッセージ(令和2年8月31日)」では、この事案について、以下のように述べています。

「(1)不適正な不動産販売による売上の過大計上

当社は、平成27年3月期において、当社の連結子会社であるA社等によるB社(注2)に対する複数の販売用不動産の売却について、連結損益計算書上、「売上」として計上しました。しかしながら、これらの売却は、買戻しを前提とした売却、売却後も所有権移転登記を行わずA社が引き続き販売代理をしていた販売用不動産の売却など、いずれも経済的実体のない売却であり、「実現主義の原則」のもとにおける収益認識要件を満たさないことから、これらの売却を「売上」として計上することは認められません。
(注2)B社は、当社と緊密な関係にある者(当社及びA社の代表取締役であった者)が全株式を実質的に保有する会社の100%子会社であり、当社の実質的な子会社に該当します。

(2)不採算子会社等の連結範囲からの除外

会計基準上、親会社は原則としてすべての子会社を連結の範囲に含めるものとされ、重要性の乏しい会社に限り連結の範囲に含めないことが容認されています。この重要性の判断については、企業集団の財政状態等の状況を適正に表示する観点から、量的側面と質的側面の両面で判断すべきであるとされています。

当社は、平成27年3月期、平成29年3月期及び平成30年3月期に係る有価証券報告書において、不採算の子会社を意図的に連結の範囲に含めず、また、当時の当社代表取締役が実質的に所有し支配していた会社についても連結の範囲に含めていませんでした。しかしながら、量的側面と質的側面の両面から判断すれば、これらの会社はすべて重要性が認められ、連結すべきでした。

当社は、これらの会社を連結の範囲から除外することにより、当期純利益等を過大に計上しました。」

ちなみに、ビックカメラの虚偽記載に関連して経営者が株主代表訴訟で訴えられた事案では、経営者の責任が否定されましたが、そこでも連結範囲が問題になっていました。

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