ゴーン氏の記者会見で言及された東京大の田中亘教授(会社法)に見解を聞いた記事。
「田中教授は日本経済新聞の取材に、元会長の当時の弁護団に「罪の成立は疑わしい」との自身の見解を伝えたことを明らかにした上で、海外逃亡について「決して許されない」と述べた。」
ゴーン氏とは直接会ってはいないが、昨年12月に弁護団と話をしたそうです。
「田中教授は弘中氏らに対し「ゴーン元会長が決める権限があったのは、在職中の報酬にとどまる」と指摘。「退任後の報酬は最終的に株主総会の決議が必要。現時点では受領が確定したとは言えない」として、金商法違反罪が成立するかは疑わしいとの自身の考えを説明したという。
ゴーン元会長は会見で「田中教授が『逮捕は恥ずべきことだ』と言っていた」と主張した。田中教授はその発言を認め「金商法違反容疑での逮捕、その後の長期勾留に疑問があった」と説明した。」
ゴーン事件は、まったくベクトルが逆の問題が混在しているように思われます。
まず、役員報酬問題は、ゴーン氏に正当な権限があってはじめて虚偽記載が成り立ち得ます。権限がなければ、ゴーン氏が自分のほしい金額を1円単位まで文書にしたところで、それは単なる願望であって、会社にとって、費用でも債務でもありません。だから、検察や日産は、ゴーン氏が絶対的な独裁者であり、自由に権限を行使できるかのようにいっているのでしょう。検察や日産のいうとおりだとすると、仮に支出がなされた場合には正当な権限に基づき確定した債務の履行ということになり、支出自体には違法性がない(むしろ支払を拒絶したら法律違反)ということになります。しかし、ゴーン氏がいくら独裁者でも、日本の会社である限り、日本の会社法が当然優先されるはずであり、会社法で定められた手続きを踏んでいなければ、支出は違法となります(会社にとって費用とはならないし、役員報酬にも該当しない)。
(第三者が取引の相手であれば、権限外のものでも、会社の費用・債務になる場合がありますが(例えば、権限外で仕事を発注したり、カネを借りたりする取引)、役員報酬は、会社法で決められた承認手続がなされない限り、無効でしょう。)
他方、中東の会社へのあやしい支出があったという疑惑については、ゴーン氏に与えられた権限を逸脱した違法な支出であると、検察・日産は主張しているのに対し、ゴーン氏側は権限内の正当な支出であると主張しています。虚偽記載問題と、それぞれの主張がまったく逆となっています。
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