中居事件をフジテレビは2023年6月に把握し、社長へも同年8月に報告がなされていたことなどが、記者会見で明らかになったという記事。
「質疑応答に先立ち、2023年6月にフジがトラブルを把握した後の対応や情報共有の経緯について上野陽一広報局長が説明。港社長への事案の報告は同年8月だったと明らかにした。
1年半にわたり中居さんの番組が続いたことについて、港社長は「適切な検証を行わず番組出演を継続し、背景にあるタレントとの会食のあり方を検証できていなかった。私自身、人権への認識が不足していた」と陳謝した。」
主な質疑応答。
フジテレビ、新体制は「暫定的なもの」 記者会見一問一答(日経)
業績への影響。
「――70社以上が広告出稿を取りやめているが、どのくらいの影響がでているのか。
清水賢治・フジ・メディアHD専務(次期フジテレビ社長)「広告スポンサーがどの程度の影響になるかは現在精査中だ。重要な開示基準に達するのであれば開示する。TVerなど配信広告にも影響は出始めている。広告差し替えの代金に対する考え方は、営業局で一部考えをスポンサーに示し始めたところだ。4月期の改編のセールスは事実上、止まっている」」
「――フジサンケイグループの日枝久代表(フジ・メディアHD取締役相談役)は責任をとらないのか。なぜ会見に登壇しないのか。
遠藤氏「どのように責任をとるかが重要だと考えている。嘉納会長と港社長が退任した後は、新組織はあくまで暫定的なものだ。第三者委員会の報告が出てくる時期を1つのめどとして、それぞれの役員がそれぞれの責任をとる。常勤役員全員に波及すると思う」
嘉納氏「日枝相談役に必要な事項について報告したり相談したり、お知恵を借りることはある。ただ、日常の業務は私と港社長で決めていた。相談役なので業務執行はしない。業務の範囲内なので、ここに出席しないのはそういうことだ。今回の人事は取締役会で決定したことだ」」
「――女性の人権侵害の疑いがある事案について、なぜ一部の上層部のみで情報共有したのか。コンプライアンス担当部門と情報共有しなかったのか。
港氏「女性の心身の状態を最優先にして、なるべく少人数という本人の希望、女性の心身の状態等をそばで見ている医師や接触している社員が、そういう風に判断した。コンプライアンス推進室はフジテレビにもあり、(通常は)機能している。この案件については特殊な案件としてきたが、違うやり方があったのではないかと反省している」」
医師や社員に責任転嫁しているようです。遅くとも社長が知った時点でコンプラ部門と協議できたはずでしょう。(重要な問題であればあるほど、コンプラ部門には知らせていない?)
フジテレビ会見、10時間超え午前2時終了 港社長ら辞任 記者会見タイムライン(日経)
フジHD社外取締役、経営刷新へ委員会要望 調査や提言(日経)
「フジ・メディア・ホールディングス(HD)の社外取締役を務める文化放送の斎藤清人社長ら7人が27日、ガバナンス(企業統治)の立て直しや信頼回復を求める意見書を提出した。取締役会の下に「経営刷新小委員会」を設け、機動的な調査や提言を行う体制を整えることを提案した。
意見書は社外取締役7人の連名でフジ・メディアHDと子会社のフジテレビジョンに提出した。30日の定例取締役会で議論するよう求めている。」
意見書は、フジ・メディア・ホールディングスのウェブサイトに掲載されています。
ガバナンスの立て直しと信頼回復に向けた緊急の対応に関する提言(PDFファイル)
文春は記事を一部訂正したそうです。
文春、フジ社員関与の内容訂正 会食誘ったのは「中居氏」(日経)
「女性がフジ社員から会食に「誘われた」と報じたが、その後の取材で「中居氏に誘われた」ことが判明したという。
同誌は28日に発表したコメントで、トラブルが起きた2023年6月より前にフジ社員が女性を中居さん宅でのバーベキューに連れて行ったとする取材結果などを根拠に「フジ社員が件(くだん)のトラブルに関与した事実は変わらないと考えています」と主張した。」
「同誌電子版に掲載された訂正文では、女性が会食を「フジ社員がセッティングしている会の"延長"と認識していた」とも説明。同誌1月8日発売号以降の続報では、訂正した内容を踏まえて伝えてきたという。」
誤報だったとしても、事件後の会社の対応がまずかったことにはかわりありません。
「問題の発覚後、多くの批判を通じて浮かび上がったのは、フジ・メディアHDの企業統治(コーポレートガバナンス)の弱さだ。会長と社長の引責辞任だけでは、信頼の回復には遠い。フジ・メディアHDとフジテレビは、取締役会の改革を含む抜本的なガバナンスの見直しを急ぐ必要がある。」
日枝氏(取締役相談役)について。
「港社長らだけでなく、スポンサーや社員などから批判を浴びているのが、大きな影響力を持つとされる日枝久氏だ。1983年にフジテレビの取締役に就任し、社長、会長を歴任した後、2017年からはフジ・メディアHDの取締役相談役を務める。相談役という存在は、かねて外国人投資家などが日本企業の不透明なガバナンスの象徴として批判してきた。」
社外取締役について。
「フジ・メディアHDの経営を外部の目で監督すべき社外取締役も、独立性の面でおおいに疑問符がつく。グループ企業や許認可の権限を持つ総務省などと、深い関わりを持つ人物が含まれているからだ。」
ニューヨーク・タイムズが報じる「中居正広の性加害とフジのグダグダぶり」(Yahoo)(クーリエ配信)
「こうした怒りは、日本で数年前に暴かれたスキャンダルをきっかけに、性加害に対する世間の目が厳しくなっていることの表れだと、専門家たちは指摘する。
日本の大手タレント事務所の創設者であるジャニー喜多川が、数十年にわたって少年らに性的虐待を加えていた事実が白日の下にさらされたのは、2年前のことだ。2019年に死去した喜多川は一度も罪に問われることなく、企業スポンサーはジャニーズ事務所内で横行していた悪事を黙認していたと非難された。
しかし今回、大手企業は、自分たちは変わったのだということを示そうと躍起になっている。
「ジャニーズのスキャンダルは転換点になりました。スポンサー企業は何もしなかったことで加担したと非難されたのです」と、広告やメディア業界に関する著書の多いノンフィクション作家の本間龍は言う。」
ジャニーズ問題も、被害者の人数、犯罪行為が続いていた期間の長さ、未成年者が対象になっていたこと、事業活動を犯罪の隠れ蓑にしていた悪質さなどを考えると、相当ひどかったのですが、テレビ局などだけでなく、スポンサー企業も、見て見ぬふりをしていました。
10時間超の記者会見にもかかわらず、スポンサー企業は納得していないようです。
フジ2月CM、キャンセル相次ぐ キリンHD、日本生命、トヨタなど(時事)
「キリンホールディングス(HD)や日本生命保険、トヨタ自動車などの大手企業が、フジテレビに出稿を予定していた2月分のCMをキャンセルしたことが28日、分かった。」
「キリンHDは、フジが27日開いた記者会見でも人権侵害に関する疑義が解消されなかったと指摘。28日には広告代理店を通じ、フジに対して第三者委員会の調査への全面協力や迅速な情報開示などを要請した。
日本生命もフジの会見について「ガバナンス(企業統治)に係る懸念や、人権の観点での懸念の払拭につながるような説明は十分になされなかった」(広報)と指摘。「一連の問題を総合的に勘案」してキャンセルを決めたという。」
こちらの記事は、元テレビ朝日法務部長の弁護士が書いています。
フジ問題、蚊帳の外だったコンプラ室の悲哀 「社員からの現状批判」に感じた希望も…元テレ朝法務部長が解説(ENCOUNT)
「本来、会社のコンプライアンス部門は独立性をもち、トラブルが起きたら真っ先に通報を受けるべき。組織がしっかりした会社ではそう運用されている。だが、テレビ局は知名度が高い割に社内組織はしっかりしていない場合も多い。フジテレビの従業員数は企業公式サイトによると1169人。数万、数十万という社員を抱えるメーカーや金融機関に比べると規模は小さく、よく言えば「家族的な経営」ができるが、経営者という「一家の主」が強すぎると、組織を無視した経営にもなりやすい。」
「さらにテレビ局が特殊なのは、番組作りや報道の「現場」を希望して入社する社員が多い点だ。その結果、経営者も「青春時代」を番組作りなどの「現場」で過ごした人が多くなる。日枝氏も1980年代には編成局長として辣腕をふるった。
そうした「青春時代」を送った経営者が心から信頼できる相手は、自分が寝食をともにした「現場」で近かった仲間や後輩になりやすい。このためテレビ局のカリスマ経営者の周りには番組制作で活躍した戦友や部下が集まり、会社の全てを決める内輪の集団「インナーサークル」ができあがることがある。...
そのような体制のもとで「インナーサークル」に入れてもらえないと、コンプライアンス部門はさほど大きくないトラブルの相談は受けても、「本当に大きなトラブル」の対応からは外される。そして、気が付くと「トラブル後の社内研修担当」の部署となりかねない。」
(補足)
フジテレビ10時間超会見 どう受け止められたのか?(NHK)
「大手企業の間ではコマーシャルを再開する見通しは立っておらず、今後のフジテレビの対応や第三者委員会の報告などを踏まえて総合的に判断するとしています。
このうち、飲料大手の「キリンホールディングス」は、今回の記者会見を受けて「人権侵害の疑義が生じていて、解消されていない」とした上で、フジテレビに対して▼第三者委員会の調査への全面的な協力と迅速、かつ的確な情報開示を行うことに加え、▼調査の結果やその過程で人権侵害を引き起こした事実などが判明した場合には、被害者への適切な救済と実効性の高い再発防止策を行うことなどを求める申し入れを行ったことを明らかにしました。
そして、フジテレビで放映予定だった来月分のコマーシャルはキャンセルとし、会社が適切な対応を取るまではコマーシャルを出すことを見合わせるということです。
また、日本生命は記者会見を受けて、「会見の内容のすべてを把握できる状況にはありませんが、会見後の報道などを確認するところでは、指摘されていたフジテレビのガバナンスに係る懸念や、人権の観点での懸念の払拭につながるような説明は十分になされなかったものと認識しています」とコメントしています。
さらに、これまでフジテレビにコマーシャルを出していた子ども服大手の「西松屋チェーン」も28日、「諸般の事情を鑑みた上で、当面、フジテレビへのコマーシャルの出稿を見合わせる」と発表しました。」