日産ゴーン事件のケリー被告の刑事裁判の記事。日産の元秘書室長への証人尋問のまとめになっています。以前にも取り上げましたが、証人尋問では、元秘書室長が日産の会計監査人(新日本監査法人)をだましていたことが明らかになっています。
「「ゴーンさんの指示を行うことが私の役割」。証人尋問で大沼氏はそう断言した。指示を理解できずに元会長から文書にバツ印を付けられたことを「ショックだった」と振り返り、長年にわたって報酬の管理を任されていたことを「信頼」と語った。上司の評価を何よりも重んじる姿勢は、企業人として決して珍しくないものに思えた。
大沼氏が法廷で初めて感情の一端を見せたのは、自身が文書を改ざんした過去を証言した時だった。2015年春、ゴーン元会長への支払いに関する巨額の予算計上を監査法人に疑問視された際、うその文書を会計士に提出したと明かした。他の行為と異なり、大沼氏が独断で犯した不正だった。「改ざんを今も後悔している」。大沼氏は声を震わせて心情を吐露した。
今回の事件が有罪と認定されるかどうかとは別にして、外部監査に対する虚偽の報告は、それ自体が企業のコンプライアンスに大きく背くものだ。上司に忠実に振る舞うことを自身の存在価値としてきた結果、大沼氏は自ら進んで一線を越えていた。」
トップからの圧力にまけて不正に手を染めたという中間管理職の悲哀みたいなストーリーになっていますが、本当にそうなのでしょうか。ゴーン氏側の言い分によれば、あくまで合法的な支払い方法を検討するように指示されていたわけですから、監査人に何か隠す必要はなく、実態どおりの書類をみせればよかったのではないでしょうか。
具体的にどういう文書を見せていたのかというと、別報道によれば、2015年にそれまでのゴーン氏の未払報酬を費用計上し、それを従業員の報酬であるかのような文書にして監査人に説明していたようです。その後、その費用計上はなぜか取り消されたそうです。
仮に、ゴーン氏に対する未払報酬を監査人にわからないように未払計上し、そこから実際にゴーン氏に支払っていたとすれば、不正支出となるのかもしれません。しかし、不正な支出は会社にとって行うべきでないものであり、行うべきでない支出は行うべき義務もないわけですから、負債に計上する根拠がありません。だとすると、そもそも、費用計上すること自体が間違っていたのかもしれません。その場合は、報酬の開示も不要だった(ゴーン氏やケリー氏は無罪)ということになります。
各年度の、ゴーン氏への報酬に関する法的手続、費用計上(その取消し)、有報における役員報酬開示、実際の支払い(報じられているところによればまったく支払われていない)、の4つを丹念に追っていって、検討しないといけないでしょう。
監査人をだましていたとして、経理部門も同じようにだましていたのかという点も気になります。経理もぐるだったのではないかという疑念がわきます。すくなくとも、費用計上に関する内部統制(経理部門による牽制)に重大な不備があるように思われます。
証言に対してやや懐疑的なことも書いています。
「大沼氏は、ケリー元役員と報酬隠しの検討を始めたという10年当時から、自分たちの行為が「法に反すると思っていた」と繰り返した。ゴーン元会長の指示を絶対としながら、大沼氏が本当に当初からこうした批判的な視点を持っていたのか――。違和感を覚える証言だった。
まじめで指示を忠実に守る人柄がゆえに、司法取引を選んだ大沼氏が、検察の意を過度に酌んだ証言をしていないか。この点は、裁判の大きな判断ポイントとなる。ケリー元役員が有罪か無罪か、結論を見通すことはまだできない。」
裁判の今後の予定は...
「裁判は1月12日に再開する。今度は、志賀俊之・元COO(最高執行責任者)、小枝至・元相談役、大沼氏と同じく検察と司法取引したハリ・ナダ専務執行役員、そして西川(さいかわ)広人前社長ら日産上層部が相次いで証人として登場する。
審理はまだ予定の3分の1あまりしか終わっていない。世界を揺るがした逮捕劇はどのように計画されたのか。今後のやりとりが注目される。」
元秘書室長の証言関連
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