「エフオーアイ」の粉飾決算を巡り、株主が損害賠償を求めてみずほ証券を訴えていた裁判の最高裁判決で、みずほ証券の調査が不十分だったとして、同社の賠償責任が認められたという記事。
「みずほ証券はエフ社の粉飾決算を指摘する投書を2回受け取っていたが、信ぴょう性がないと判断して上場関連手続きを進めた。エフ社は2009年11月の東証マザーズ上場後に粉飾が発覚。売上高の97%が架空で、10年6月に上場廃止となった。
第3小法廷は判決理由で、金商法の規定について「証券会社が専門知識に基づいて審査することで、開示情報の信頼性を担保させるのが趣旨」と指摘。財務内容については監査法人のチェックを信頼するのが前提だが、その信頼性に重大な疑義を生じさせる情報を得た場合は調査確認が必要で、それがなければ免責規定は適用されないとの判断を示した。
その上で「2回の投書は粉飾の手法や内容を具体的、詳細に指摘しており、みずほ証券は必要な調査をすることが期待されていたが、十分な調査確認をしたとはいえない」と判断、免責を認めた二審・東京高裁判決を破棄した。」
そもそも、会計監査が会社にだまされてしまったのが問題なわけですが...。
判決文はこちら。
↓
事件番号 平成30(受)1961
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 令和2年12月22日
法廷名 最高裁判所第三小法廷(裁判所ウェブサイト)
原審で確定した事実関係の部分より、監査に関する部分。
「本件会社の平成14年3月期以降の計算書類及び財務諸表についての監査を実施した公認会計士ら(以下「本件会計士」という。)は,売掛金の実在性について,売掛先に対して残高確認書を送付し,その返送を受けて確認していたところ,本件役員らは,上記粉飾決算を行うようになってからは,本件偽装取引先に協力者を確保し,本件会計士から送付された残高確認書を当該協力者から回収した上,当該残高確認書に偽造印を押捺して本件会計士に返送するなどしていた。また,本件役員らは,本件会計士が平成18年3月期の監査において富士通,平成20年3月期の監査において台湾の企業1社につき本件会社の売掛先として訪問調査を実施するに際しても,協力者に応対させ,実際には半導体製造装置の納入の事実はないにもかかわらず,これがあるかのような虚偽の事実を述べさせるなどした。
本件会計士は,本件会社の平成20年3月期及び平成21年3月期(以下,併せて「本件各事業年度」という。)の監査において,ほぼ全ての売上げに関する証ひょう類と総勘定元帳との突合等を実施したが,当該証ひょう類につき,本件役員らから写しの提示を受けた場合であっても原本の提示を求めなかったため,当該証ひょう類の中に偽造されたものが含まれていることに気付かなかった。」
内部通報の中身についても詳しくふれています。
内部通報に対するみずほ証券(被上告人)の対応については...
「被上告人は,第1投書が本件役員らの主導により粉飾決算が行われている旨を指摘するものであったにもかかわらず,その内容を把握した後,本件役員らに対して直ちに上記内容を伝え,第1投書は本件会社の従業員等が業務妨害の意図で送付したものと思われる旨の説明を受けてその作成者の処分を求めるなど不適切な対応をしている。加えて,被上告人は,第1投書の作成者と思われる者が内部監査室長を務めていた者であったにもかかわらず,第2投書を受け取ってもなおその者から事情を聴取するなどの調査確認を行っていないのであって,そもそも本件各投書の信ぴょう性の評価を大きく誤ったものというほかない。」
このように、通報の中身を会社に伝えて、しかも通報者(内部監査室長)を処分するよう要求するという非常識なことをやっていたと認定されています。
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