金融庁の公認会計士・監査審査会は、清和監査法人を検査した結果、同監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、2014年6月13日付で、同監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告しました。
あまり例がないことだと思われますが、指摘の冒頭で、「理事長をはじめとする当該監査法人の社員は、監査法人の運営に当たり、監査法人が実施する監査の公益性及び社会的責任の大きさを強く認識する必要がある」とわざわざ書いています。
具体的な指摘事項の最初の項目では、理事長の姿勢や法人の風土を問題視しています。
「当該監査法人の理事長は、公認会計士・監査審査会・・・及び日本公認会計士協会・・・から重大な指摘を繰り返し受けているにもかかわらず、法人の品質管理に重要な問題があることを自覚せず、審査会等の指摘に対して形式的な対応を品質管理担当責任者及び監査実施者に指示するのみで、具体的な対応を担当者任せにし、 改善活動を十分に実施していないなど、理事長として行うべき行動をとっておらず、その職責を果たしていない。
また、理事長は、法人の業務運営に際し、品質管理を軽視しており、その姿勢が法人全体に浸透している。他の代表社員と社員は、自身の責任を自覚することなく、監査法人の社員として求められる職責を果たしていない。
さらに、理事長は、主導して業務の拡大を目指しており、一般的に監査リスクが高い被監査会社であっても、反社会的勢力とのかかわりがなく、存続できると判断できさえすれば、受嘱するという方針を採っている。 このほか、監査業務の品質や職業倫理の遵守状況について社員の評価に反映させていない一方、営業面での成果を社員の評価と報酬に反映させるなど、社員に対して営業を奨励している。これらの結果、社員全体が営業を重視する傾向にあるとともに、品質管理を軽視している。
加えて、当該監査法人においては、被監査会社の主張を批判的な検討を行うことなく受け入れる風土が醸成されている。」
(「反社会的勢力とのかかわりがなく」という点を監査受嘱の条件にしているのは、まともだと思われますが・・・)
その他、「新規受嘱に際してのリスク評価の態勢」「監査実施者の経験・能力等に見合った教育・訓練」「監査調書の査閲を通じた適切な監査手続の指示、監督及び指導」「実効性のある定期的な検証」「会計上の見積りや継続企業の前提など職業的専門家としての判断を伴う重要な項目における深度ある監査手続の実施」「関連当事者取引における取引の実態を踏まえた検討」「内部統制監査における不備の適切な評価」「審査の態勢」「品質管理レビュー等の指摘への改善に向けた取組み状況」などについて、不備を指摘されています。
顧客の主張うのみ、監査法人に行政処分勧告(読売)
「同監査法人は2月末時点で上場企業27社を含む計84社の監査を請け負っている。監査先の中には、有価証券報告書の虚偽記載で課徴金の支払いを命じられた企業もあった。
同審査会は2009年にも検査しており、行政処分の勧告には至らなかったものの、業務の管理体制の不備などを指摘していた。日本公認会計士協会も同様に問題点を指摘したが、十分に改善されていなかったという。」
清和監査法人の行政処分勧告 公認会計士・監査審査会(日経)
「・・・顧客のなかには有価証券報告書の虚偽記載で金融庁から課徴金納付命令を受けた企業が複数あるという。
監査には通常の企業以上に注意が必要だったにもかかわらず、形式的な確認しかしなかったことから行政処分勧告に踏み切った。審査会では利益を優先する体質が原因とみている。」
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