会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

オリンパス、預金水増しで損失隠す 1300億円資産計上(日経より)

オリンパス、預金水増しで損失隠す 1300億円資産計上(注:冒頭しか読めません。)

11月11日の日経朝刊が、オリンパスの証券投資損失隠しの手口について書いていました。

「オリンパスが証券投資の損失を隠していた問題で、不正な経理操作の手口が10日、同社の第三者委員会の調査で明らかになった。含み損を抱えた資産を「飛ばし」で切り離し、その一方でオリンパス本体の預金や有価証券を水増し計上する形でつじつまを合わせていた。損失を隠した資産はピークの2005年3月期末には1300億円超に達し、企業買収に絡む支出で穴埋めした。」

「同社は1990年代に財テクに失敗し、多額の含み損を抱えた。01年3月期から導入された時価会計制度で含み損を表面化する必要が生じ、これを逃れるためケイマン諸島に設立したファンドなどに損失を移す「飛ばし」を実施。簿価が同じ金融商品と交換する形で、オリンパス本体の資産を水増しする操作を繰り返した。

具体的には外国銀行預金債券、「ニュー・インベストメント」および「GCニュービジョン・ベンチャーズ」という2つの投資ファンドへの出資金名目で貸借対照表に資産計上。これらは大半が実体を伴わない水増し資産とみられるが、決算書に計上し、有価証券報告書でも開示していた。」

前にも少し書きましたが、「飛ばし」をやるためには、不良資産を飛ばした相手先に何らかの形で資金提供する必要があります。記事によれば、その資金提供が預金、債券、出資金といった貸借対照表の資産項目を通じて行われたことになります。

記事で「簿価が同じ金融商品と交換」というのは、「オリンパスでの簿価と同じ額面の金融商品と交換」したということなのでしょう。例えば、オリンパスでの簿価100億円(時価40億円)の金融資産を、額面100億円(時価40億円)の債券(利率を市場金利より低くする、デリバティブを組み込むなどの方法を使えば額面より大幅に価値の低い債券を作り出すことは可能)と交換し、交換により取得した債券を(時価ではなく)額面で計上するということが考えられます。時価よりも大幅に水増しされているわけですが、債券は存在し、実在性には問題はなく、監査人がチェックしても問題なしということになります。市場価格がない債券だといわれれば、毎期時価評価する必要もなく、利払いがなされている限り、資産価値をチェックされることもないでしょう。

また、「交換」といっても、形式的には現金で決済されているかもしれません。時価40億円の資産を100億円で売却、100億円が入金し、それとほぼ同じタイミングで、同じ相手先(あるいは共謀したグループ内の会社)から、時価40億円の資産を100億円で購入、100億円を支払うという取引であれば、実質的には時価40億円の資産の交換でありながら、表面上取得原価は100億円ですので、100億円で資産計上できてしまいます。監査人も、取引金額100億円の契約があり、その金額で現金決済されていれば、それを認めざるを得ないでしょう。

(現行基準では、金融資産の当初の測定は時価だと決められているので、こうした処理は基準違反です。)

預金まで水増しされていたというのは、にわかには信じられませんが、例えば、預金の残高自体は存在するが、その預金が、銀行から他の会社(オリンパスから不良資産を購入したペーパーカンパニー)への融資の担保になっていたりすれば、見逃してしまう可能性はあるでしょう。

また、銀行までグルであれば、残高証明書の偽造もあり得ます。

このように「預金や有価証券を水増し計上」といっても、単純な手口ではないかもしれません。第三者委員会の報告書で、明らかにされることを期待します。

飛ばし損失700億円付け替え 21年3月期、虚偽記載の疑い(産経)

「21年3月期決算では、買収した企業の株式価値の目減り分(減損)として計762億円の損失を計上し、このうち557億円がベンチャー3社分だった。また、「前期損益修正額」として155億円を計上したが、これは助言会社への報酬の一部を損失として処理したものとみられる。

 計712億円分は、実際には飛ばし損失の穴埋めに流用されており、有価証券評価損を買収企業の「株式減損」と「収益修正」の項目に付け替えて処理したことになり、虚偽記載の疑いがある。

 一方、飛ばしによって含み損を抱えた金融商品をファンドに移し替えると、その分の資産が目減りする。飛ばしの発覚を防ぐため、架空預金のほか、ファンドへの出資金など大半は実体のない資産を計上し、つじつまを合わせていたとみられる。いずれも決算書に計上し有価証券報告書で開示していた。」

このほか、優先株を買い取った際にのれんが約400億円計上されており、これも水増しでしょう。
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