会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

企業会計審議会総会議事録(平成22年8月3日)(その2)

企業会計審議会総会議事録(平成22年8月3日)(再掲)

8月3日の企業会計審議会では、単体財務諸表の会計基準の議論のほかに、それとは直接関係のない、現在特例として容認されている米国会計基準による連結財務諸表について金融庁の担当官から説明がなされています。

「・・・昨年12月に連結財務諸表規則の改正を公布させていただきました。国際会計基準を日本企業に任意適用するに当たって必要となる規則でございます。この中に、現在、まずこれから米国基準を使って日本の当局にファイリングできるかという点については、今年の3月末をもって最後となるということで、4月以降は米国基準による新たなファイリングはできなくなるということに加えまして、現在、日本企業が米国基準を使ってSECに財務諸表を提出している場合には、その連結部分でございますけれども、その米国式の財務諸表を日本の当局に提出し開示することができると、このような特例の制度がございますが、これを2016年3月期までに限定されたということでございます。」

特例を延長しない理由として、概ね以下のことが挙げられています。

・国際会計基準と日本基準と米国基準の3つのうち、少なくとも3つ並列するということは避けなければならない。会計の国際戦略ないし会計外交上、国際会計基準と日本基準という組み合わせを選ぶほかない。

・米国基準は、持合い株式も含めて、すべて当期純利益、当期純損益に評価損益を計上するという完全な時価会計であり、時価会計あるいはフェアバリュー・アカウンティングの行き過ぎという論点がある。他方、確定したIFRS9号では、その他OCI区分に計上する区分というものが設けられ、純利益に計上せず、その他包括利益に入れることになっている。

・また、負債の自己の信用リスクの悪化に伴う評価益の計上という問題でも、米国基準では、これは純利益に計上するというものだが、国際会計基準については、日本を含めた伝統的な考え方を持っている国々からのインプットによって、純利益に計上することをやめて、その他包括利益に置いておくというような会計処理に変更している。

・このように、米国基準はかなり日本の会計の考え方なり実務から遠いところにあるのに対して、国際会計基準は、日本的な考え方、大陸、ヨーロッパ的な考え方も含めて国際的にいろんな意見が出されてでき上がっていくというプロセスを反映している。

・米国のFASBは、ナショナル・スタンダード・セッターであって、米国の諸状況だけ考慮すればよい。米国会計基準の設定プロセスに日本人は参加しておらず、また、日本のガバナンスも及んでいない。他方、国際会計基準につきましては、日本のボードメンバーがいたり、あるいは日本からもインプットする機会がある。モニタリングボードという形で、日本の当局もそのガバナンス構造に参加している。

この理由づけには、正しいかどうかは別として、米国基準とIFRSに対する金融庁の見方がよく出ていると思います。

特例を延長してほしいという意見もあったようですが、米国基準適用会社には、金融庁の「会計外交」のために犠牲になってもらったということでしょうか。

米国会計基準適用会社は、これまで、新会計基準を導入する際のモルモット的存在として、日本の会計に貢献している面もあるわけですから、特例の延長ぐらいは認めてもいいような気もします。

もっとも、2016年までには「国際会計基準戦争」も決着がついて、あまり影響がないのかもしれません。
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