東京電力が、2012年3月期に計上する特別損失額について「現時点で見積もれるのは1260億円」と明らかにしたという記事。
「2011年3月期の災害損失引当金増額分380億円と、事故収束までの期間に避難住民や屋内退避者の被る精神的苦痛の損害見積額880億円を特別損失に計上する予定。」
意味不明の記事だったので、東電のプレスリリースを見てみると、重要な後発事象の発生(2011年3月期決算短信の修正)のことをいっているようです。
(修正)重要な後発事象の発生に伴う「平成23年3月期決算短信[日本基準](連結)」の一部修正に関するお知らせ(PDFファイル)
以下、その抜粋です。
「6月20日の審査会(注:原子力損害賠償紛争審査会)で決定した 「東京電力㈱福島第一、 第二原子力事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針追補」 では、 避難等対象者の精神的損害の損害額の算定方法が具体的に定められました。 これによる、 避難等対象者の精神的苦痛に対する事故収束見込み期間までの損害額の現時点での見積額は880億円となります。」
「平成23年6月17日に当社ホームページを通じて公表した 「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」 における当面の取組みのロードマップに掲げた目標であるステップ1 (放射線量が着実に減少傾向となっている) 及びステップ2 (放射性物質の放出が管理され、 放射線量が大幅に抑えられている) に係る個々の対策内容について、 至近での取り組みを反映した結果、 平成23年5月17日に公表した5つの分野(「冷却」、 「抑制」、 「除染・モニタリング」、 「余震対策等」、 「環境改善」) と8つの課題(「原子炉」、 「燃料プール」、 「滞留水」、 「大気・土壌」、 「測定・低減・公表」、 「地下水」、 「津波・補強・他」、 「生活・職場環境」)から、 1つの課題(「放射線管理・医療」)を追加し、 5つの分野と9つの課題に再整理したうえで、 課題に係る対策数を76対策から81対策へ変更しております。
この状況変化に伴い、 原子炉等の冷却や放射性物質の飛散防止等の安全性の確保等に要する費用または損失に係る費用の見積りを行った結果、 災害損失引当金 (8,317億円) は、 380億円増加する見込みとなります。」
これらは、本来であれば、修正後発事象として引当金に計上すべき金額ですが、会社法決算から金商法決算までの時期の後発事象ということで、単なる開示で済ませているのでしょう。
また、毎日新聞で報道された遮蔽壁の費用については無視しているようです。監査人にはきちんと説明しているのでしょうか。また、監査人は、後発事象に関する手続を十分行ったのでしょうか。
避難の精神的損害、880億円 東電が見積もり(朝日)
「これまで東電は、住民の避難費用や農漁業者らへの賠償の仮払いとして、約508億円を支出。しかし、いずれも仮払いのため、「最終的に支払う額が確定していない」として、確定までは決算計上しない方針だ。」
「確定」していなくても「合理的な見積り」ができれば計上すべきです。この508億円が将来、支払先である被災者との間で精算した結果、全額戻ってくるというのなら、費用計上ゼロでもいいのでしょうが、そんなことは考えられません。
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