、日本公認会計士協会は、「上場会社のコーポレート・ガバナンスとディスクロージャー制度のあり方に関する提言 -上場会社の財務情報の信頼性向上のために-」という意見書を、2009年5月21日に公表しました。
意見書の題名の通り、「上場会社のコーポレート・ガバナンスのあり方に関する提言」と「上場会社のディスクロージャー制度のあり方に関する提言」の2部構成となっています。
後者のディスクロージャー制度のあり方に関する提言では、以下の4つの提言を行っています。(「提言」というにしてはやや専門的すぎて小粒な感じもしますが、大風呂敷を広げすぎるよりいいかもしれません。)
【提言3-1】有価証券報告書の財務諸表と計算書類の実質的一元化
○ 株主・投資家の受け取る財務情報の質・量、比較可能性、有用性等の観点から、上場会社については、金融商品取引法と会社法における財務情報の実質的な一元化を検討すべきであると考える。
○ 財務情報の実質的な一元化の方法として、上場会社は有価証券報告書の財務諸表の作成により、会社法の計算書類の作成がなされたものとみなす(つまり、株主・投資家向けに開示される財務情報として有価証券報告書の財務諸表のみを作成する。)といった方法が考えられる。
【提言3-2】有価証券報告書の提出時期の見直し
○ 金融商品取引法上、有価証券報告書の提出は定時株主総会後とされている。適時開示の観点から、有価証券報告書の内容について、特に個別財務諸表及び非財務情報を中心に簡素化することも含め、有用性の観点から検討し、財務諸表が確定し、招集通知が発送された後、早期に有価証券報告書を提出できるようにすべきであると考える。
○ 早期提出が可能になれば、有価証券報告書と併せて内部統制報告書もEDINETで開示されることになり、議決権行使のために有用な情報が株主に対して間接的に提供されることになる効果があると考えられる。
【提言3-3】個別財務諸表の開示の検討
○ 上場会社の有価証券報告書において、個別財務諸表は連結ベースの分析を補完する財務情報として利用されていることなどから引き続き開示が必要であるものの、現在よりも簡素化を図る方向も含め、その開示項目や様式について情報の有用性や諸外国の状況も十分踏まえた上で、検討する必要があると考える。
○ その結果、連結財務諸表と個別財務諸表の主従関係がより明確となり、上場会社のディスクロージャーは連結中心であることが明瞭になると考えられる。
【提言4】金融商品取引法と会社法に基づく監査制度の一元化
○ 上場会社については、財務情報の実質的な一元化と合わせて、金融商品取引法と会社法に基づく監査制度の一元化を検討すべきであると考える。
○ 監査制度の一元化の方法として、金融商品取引法に基づく財務諸表の監査により、会社法に基づく計算書類の監査がなされたものとみなすといった方法が考えられる。
○ 監査人による財務諸表に対する監査報告書は1つとなり、招集通知に添付される監査報告書としては、金融商品取引法の財務諸表に対する監査報告書が株主へ送付されることになると考えられる。
○ 金融商品取引法に基づく財務諸表の監査と会社法に基づく計算書類の監査が一元化することにより、金融商品取引法の内部統制報告書に対する監査意見も同時点で確定し、時点が相違することによる問題(監査役監査とのねじれ)は解消される効果があると考えられる。
順序が逆になりましたが、コーポレートガバナンスについての提言のほうは、全体として、監査役制度をあてにしすぎという印象を受けました。
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