«コーポレートガバナンス・コード原案»
~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~
の公表について
金融庁と東証が設置した「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」は、「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方(案)」を、2014年12月17日に公表しました。
この案の中で「「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」であり、今回の案は「実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの」とされています。
(「透明・公正」はわかるのですが、「迅速・果断」(な意思決定)も目的にしているというのは、この案の特徴でしょうか。「攻めのガバナンス」 という言葉も出てきます。)
基本原則として、以下の5つが挙げられており、それぞれについて、さらに詳しい原則や補充原則が示されています。
【株主の権利・平等性の確保】
1. 上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。
また、上場会社は、 株主の実質的な平等性を確保すべきである。
少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生 じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。
【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】
2. 上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、 これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けて リーダーシップを発揮すべきである。
【適切な情報開示と透明性の確保】
3. 上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。
【取締役会等の責務】
4. 上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、
(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと
(2)経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと
をはじめとする役割・ 責務を適切に果たすべきである。
こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。
【株主との対話】
5.上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。
経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、 そう した理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。
話題になっている社外取締役については、【原則4-8. 独立社外取締役の有効な活用】で以下のように規定しています。
「独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。
また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、 上記にかかわらず、 そのための取組み方針を開示すべきである。」
「独立社外取締役の独立性判断基準及び資質」についてもふれています(原則4-9)。
会計に関係しそうなものとして、以下の項目が気になりました。
・「原則1-2.株主総会における権利行使」の補充原則で、招集通知の早期発送や、株主総会関連の日程の適切な設定についてふれている。
・いわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合の、政策保有に関する方針の開示などについてふれている(原則1-4)。
・株主の利益を害する可能性のある資本政策について、適正手続確保や株主への説明を求めている(原則1-6)。
・ 関連当事者間の取引に対する監視(取引の承認を含む)などについてふれている(原則1-7)。
・内部通報に係る適切な体制整備と、その運用状況に対する監督を求めている(原則2-5)。
・「情報開示の充実」として、法令に基づく開示以外に、
1)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
2)本コード(原案)のそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
3)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
4)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
5)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明
の開示・公表を求めている(原則3-1)。
・外部会計監査人及び上場会社に対し、適正な監査の確保に向けて適切な対応を行うことを求めている(原則3-2)。
・「監査役には、財務・会計に関する適切な知見を有している者が1名以上選任されるべき」としている(原則4-11)。
コード全体については、「プリンシプルベース・アプローチ」(原則主義)や「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法の採用を表明しています。
「東京証券取引所において必要な制度整備を行った上で、平成27 年6月1日から」の適用が想定されています。
最近の「金融庁」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事