ローン担保証券(CLO)に巨額の投資を行っている農林中央金庫の理事長が、CLOは減損までは相当遠いと述べたという記事。
「奥理事長は「(計算上は)米国の投資先企業の半分程度が倒産しなければ、当金庫保有分の価値は毀損しない」と述べた。価値毀損の条件として、投資先企業の倒産後の担保回収率想定が現在の70%から25%程度へと大幅に下がるケースも加え、慎重に管理しているとしている。
3月末のCLOの投資残高は7兆7000億円と、昨年末から3000億円減った。満期を迎えた証券の償還が新規投資分を上回った。全てのCLOを満期保有しており、直接的な価格変動の影響を受けない。ただ、時価が取得時の半分以下になった際などには減損損失を計上する必要がある。奥理事長は「新規投資は抑制的に対応する」と語った。」
「低金利下でも相対的に利回りが高いCLOは投資マネーを集めてきた。元金償還の順位に応じて区分けされ、農林中金は最も安全性の高い「AAA格」にのみ投資してきた。」
会計基準上は、満期保有であれば、(償却)原価で計上ということになっていて、減損の可能性も低いのであれば、問題はなさそうです。しかし、もととなるローンにはそれなりのリスクがあって、そこから作られた金融商品のうち、農林中金がリスクの低いものに投資しているということは、その分、リスクが濃縮された金融商品(新型コロナの影響で時価が下がっている?)を、だれかがもっているということなのでしょう。日本の企業や金融機関でなければいいのですが...。
日経記事で少し不十分なのは、「価格変動の影響は受けない」と書いている一方で、それでは、現時点の価格(時価)はどれだけになっているのかについては、まったくふれていない点です。CLOのBS計上額はいくらで、その時価はいくらかということを、きちんと書いてあれば安心です。
2020年3月期 決算概況について(農林中央金庫)
2019年度決算概要説明資料(農林中央金庫)
国内金融機関保有のCLO、リスクへの懸念くすぶる-金融庁関係者(ブルームバーグ)
「当局による金融機関のCLO保有への懸念は強まっている。日本銀行は昨年10月に公表した金融システムリポートで、リーマンショック時にはAAA格のうち相応の額がAA格に格下げされており、「AAA格でも1割程度の価格下落が発生するほか、AA・A格に格下げされた場合には、2割から3割の価格下落が発生する」と分析している。
格下げされれば銀行にとってリスクが高まるため、資本コストの上昇につながる可能性がある。
開示情報によると、主要5行が保有するCLOの総額は3月31日時点で約13兆6000億円。保有額が最大の農林中央金庫の1-3月のCLOの評価損は4000億円超に上った。これを受け農林中金は今週、新規のCLO投資には引き続き抑制的な姿勢で取り組む方針を示した。
一方、2019年度末に約1219億円の含み損を計上したゆうちょ銀行は、リスク管理など適切なコントロールをしながら、今後もCLO保有を増やしていくとしている。」
(補足)
日銀レビュー「本邦金融機関の海外クレジット投融資の動向」の公表について(金融庁)
「大手行の保有する CLO を格付別にみると、99%以上が AAA 格トランシェに集中している点で特徴的である。これは、米銀の 77%、英銀の 50%強と比べても際立って高い水準である(図表 7)。」
信用力低く経済混乱で危うい商品 邦銀「ローン担保証券」保有増に警戒(SankeiBiz)
「それでも市場が混乱した場合、CLOは最初にデフォルトしかねない危うい商品であることには変わりはない。日銀も4月21日公表の金融システムレポートで、「(邦銀が保有する証券化商品は)全体として質の高いポートフォリオとなっている。もっとも、債券の約40%は投資適格級の中で最も質の低いトリプルB格となっているほか、基本的に非投資適格級(ダブルB格以下)のローンを裏付けとするバンクローン・ファンドも一部で保有されている。ポートフォリオのそうした部分については、海外の景気悪化や格下げ、クレジット市場の調整の影響を受けやすいと考えられる」と警鐘を鳴らす。」
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