会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

新日鉄と住金:合計で2400億円の特別損失を計上(毎日より)

新日鉄と住金:合計で2400億円の特別損失を計上

10月に合併する新日鉄と住金が2012年4~9月期で製鉄所について多額の減損処理を行うという記事。

「10月に合併する新日本製鉄と住友金属工業は30日、長引く円高と鋼材市場の低迷で収益力が低下していた3製鉄所(新日鉄2カ所、住金1カ所)の事業用資産の減損処理を12年9月中間連結決算で実施し、それぞれ約1200億円、合計で約2400億円の特別損失を計上すると発表した。」

「減損の効果で、13年3月期の減価償却費は合計で約250億円圧縮できるという。」

「両社は合併を前に、それぞれ製鉄所など事業所単位で収益性評価を実施してきた。その結果、新日鉄では広畑製鉄所(兵庫県姫路市)と堺製鉄所(堺市)、住金は和歌山製鉄所(和歌山市)を持つ連結子会社の「住金鋼鉄和歌山」が12年3月期まで3期連続赤字で、今後も収益力の回復は厳しいことから、資産の帳簿価格を切り下げる減損処理の実施に踏み切った。」

企業結合会計により、合併時には被取得側の資産・負債はいずれにしても時価評価しなければならないので、減損処理ということでやっておこうということなのかもしれません(減損基準で使われる回収可能価額と合併時に使われる時価は微妙に異なるはずですが)。減損処理(あるいは時価評価)したからといって、合併時の取得の対価が変わるわけではないので、事業用資産の減額部分はのれんに上乗せされることになります。

また、取得される側だけ減損処理をやると、取得する側の不採算製鉄所は相対的に重い減価償却費になるので、いっしょにやっておこうということにもなります。

しかし、少し気になるのは、対象となっている製鉄所がすでに何期も連続で赤字になっているということです。2012年3月期や今の第1四半期でなぜ減損処理しなかったのかという疑問が出てきます。日経の31日の記事によれば、会社は「会計士と相談していた」そうですから、会計士の判断も問われます。

このほか、新日鉄は住金株の売却も行うようです。

「・・・新日鉄は、同社が保有する住金株約4.5億株を9月25日までに市場で売却し、住金が市場を通じて自己取得し、消却することも合わせて発表した。住金株で新日鉄は約850億円の評価損を抱えており、売却で損失を確定する一方、損金算入で税負担の軽減を図るのが狙い。」

10月になれば一体となる会社同士で、合併後には自己株式となる(あるいは消却される)株式をやりとりしているだけですが、合併前なので、税務的にも損金算入できるのでしょう。

なお、株式の方はすでに評価減を実施済みのようです。
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